おきうとになっとう

博多に暮らす夫婦のブログ

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青いエプロン

2010-01-14 19:46:30 | モカの創作
美里さんが入って来たとき、周りのみんなは、目をそらした。
半分肌着姿のような、胸のこぼれそうなヒラヒラしたものを着ていたからだ。
なぜか私のことを頼って、「お願い」と頼み事をする。
恐る恐る、近づいてみると、美里さんの別の顔が見えた。
暗いのだ。
ふーん、この様子じゃ、この人も裏切られたのか・・・。
みんなの前で、「彼に電話しようかな、朝早いけど、起きてるかな」
などと、明るく振舞っているが、本当に彼がいるのかさえ、わからない。
美里さんと一緒に、おじいさんの席に行った。
青い前掛けエプロンをして、おじいさんは、「娘がまだ来ない」としきりに言う。
美里さんと私は、おじいさんの手を握った。
そして、看護婦さんに「娘さんを待っていますよ」と言いに行った。
看護婦さんは、慣れた様子で、「もう見えました」とだけ、答えた。
しばらく意味がわからなかったが、娘さんって、私たちのことなんだ、とようやくわかった。
おじいさんは、エプロンを掛けたまま、じっと遠くを見ている。
死んだ祖父を思い出して、涙が出た。
座り込んで泣き出した私を、美里さんは、そばで、見ていた。
この人は、わざと悪い子を演じてる。
素の美里さんがわかって、私は、よく一緒に歩いた。
ある日、おじいさんの青いエプロンが、洗って、干してあった。
どうしたんだ。
おじいさんの姿はない。
退院したのか、それとも、この世からいなくなったのか、わからない。
美里さんは、カラオケで、西田佐知子を歌った。
だんだん品が良くなってきたのは、なぜなのか。
「彼、暗いの」
それが黒いの、に聞こえて、そうか彼は黒人なのか、美里さんなら、意外な話じゃないな
と思った。
聞き返さなかったから、本当はどうなのか知らない。
探検に行こうよ。
そう言われていたけど、私はやめとくよ。
あんなところにピアノがあるのは不気味だよ。
音が聞こえたって、話も聞いた。
いろんな人に会ったけれど、
こんなに見た目と落差のある人は珍しい。
おじいさんの娘だったんだよ、私たちは。
それじゃ、姉妹だね。
今度その彼に会わせてよ。
驚かないから、美里さんの彼が見たいだけだよ。
姉妹ならいいでしょ。
私も裏切られたんだよ。
いいのいいの、わかってるって。
ここにずっといられたら、傷口なめあう友達も出来たし。
帰るところはないの、お互い同じようなものだね。
あのエプロン、たたんでいいかな。
良かったら、私持っていたい。
おじいさん、いつも何見てたのかね。
シベリアの空の下かな。
「降りる、降りる」
って言っていたのは、生まれ変わるってことなの。
信じられる。
おじいさん、もしかしたら、救世主だったのかも。
エプロンのこと、看護婦さんに聞いてくるね。
コメント (2)
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