ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「信長の棺」

2006年08月24日 | 書籍関連

時は1582年、本能寺に在った織田信長は家臣の明智光秀の謀反に遭い、48歳でその生涯を閉じる事となる。世に言う「本能寺の変」で在る。この一件により、天下統一の野望は織田信長からその家臣の豊臣秀吉へと引き継がれ、徳川家康によって成就される事となるのは多くが知る所だろう。

 

話を本能寺の変に戻すが、明智の兵達は焼け落ちた本能寺の跡地から信長の遺骸を必死で捜すも、小姓森蘭丸共々その遺骸は遂に発見出来なかったという。歴史には多くの”謎”が存在しているが、この信長の消えた遺骸もそんな謎の一つだろう。

 

加藤廣氏が著した歴史ミステリー「信長の棺」を読破した。加藤氏は中小企業金融公庫京都支店長や調査部長を歴任し、山一證券に転じて以降は同経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師等を務めた人物で、この作品が作家転向後の処女作で在る。信長の家臣で、その文才を買われて「信長公記」や「安土日記」、「大かうさまくんきのうち」等を著した太田牛一を主人公に据え、「信長遺骸が何故消えたのか?」の謎を解き明かして行くストーリー。

 

加藤氏は、本能寺の変前後に”異常行動”をした6人の主要人物に着目。その6人とは明智光秀、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)、徳川家康、近衛前久里村紹巴清玉上人で、その中から事件当事者の光秀と、関西旅行中だった家康の2人を取り除き、残る4人がこの事件にどう関わったのかを推理している。

 

本能寺に出立する前に、牛一だけを内密に呼び寄せた信長。「そなたに、あれなる物を預け置く。この度の事、決まれば即刻、早馬にて伝える。直ちに持参の上、京へ駆け付けよ。委細は貞勝(京都所司代村井貞勝)に聞くが良い。全ての事、他言無用ぞ。」という言葉と共に、信長が牛一に預けた5つの箱とは?信長は天皇制そのものをどう見ていたのか?史実を基に、加藤氏は歴史の闇に光を当てて行く。

 

信長亡き後、一時は加賀松任に逃れ、蟄居した牛一。その後、秀吉に仕えて「信長公記」等を著す事になるのだが、信長にシンパシーを覚える牛一の記述内容に、秀吉が逐一クレームを付けて書き直しを命じるシーンが登場する。其処には、「信長の残酷さを殊更強調させる事で、自身の残酷なイメージが定着しつつ在った状況を、信長との対比によって改善させたい。」という秀吉の思惑が在った。「歴史とは、勝者の立場から都合良く記されるもの。」という言葉が在るが、それを思わせる内容。

 

又、信長シンパの牛一が、信長に対してずっと持っていた信長像。それは彼にとって信じて疑う余地すら無いものだったが、別の人間から聞かされた話によって、全く違った信長の”顔”を知る事となり、狼狽してしまうシーンも興味深い。人間の物の見方とは、正に十人十色なのだ。

 

地道に調べ上げた史実に、加藤氏自身の想像を巧みに付加しての、練りに練られたストーリー仕立てとなっている。歴史好きのみならず、ミステリー好きの人間も心ゆく迄堪能出来る作品だと思う。総合評価は星4つ


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3 コメント

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面白そうですね。 (アラメイン伯)
2006-08-24 11:09:47
僕もこの本を読んでみたいと思ってました。なかなか面白そうですね。



僕の考えでは本能寺の黒幕は近衛前久。

朝廷が信長に不信感をもっていて、もしかしたら天皇家を簒奪し自ら日本の皇帝になるのではないか?

だから明智を動かした。前久は信長に「近衛!!」と呼び捨てにされたこともあるし。

秀吉が関白になるにあたり近衛の養子になってるから秀吉も全て知ってたうえでのことだったかもしれない。





どうかな?
家紋が、織田家 (帆印)
2006-08-26 12:14:12
これ、面白そうだナァ

作者が東大法学部なのか、これまた以外だった。

家紋が織田家とまったく同じであるが故、(本当は別な家紋)縁起を担いで変えたと祖父から聞いた。

だからなのかどうか分からないが、織田信長には興味あり。しかし、読みたい本を探しに行くと、ほかの本を買ってしまう癖を直さねば…。

アマゾンとかで買うのもいいが、あれもつまらないんだよナァ。

本を探す楽しみは、少年探偵団の本を探す如く…。

あっ!俺、そういえば図書館の本を、人に借りられたくなくて、隠した記憶が……。

私も読みました。 (本のソムリエ)
2010-04-29 17:40:31
私も読みました。

推理小説みたいで、こうした歴史の楽しみ方もあるんだな~と思いました。

学校の勉強だけでは見えてこない世界ですね。

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