ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「罪人が祈るとき」

2018年07月05日 | 書籍関連

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少年・時田祥平(ときた しょうへい)が住む町では、3年連続で同じ日に自殺者が出た、「11月6日の呪い」と噂されていた。学校で虐め遭っている祥平は、此の日に相手を殺して自分も死ぬ積りでいた。そんな時に公園で出会ったピエロが、殺害を手伝ってくれると言う。一方、虐めによる自殺で息子・茂明(しげあき)を喪った風見啓介(かざみ けいすけ)は、妻・秋絵(あきえ)にも後追い自殺される。家族を失くした啓介は、茂明を追い詰めた犯人を捜し始めるのだが・・・。

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小説罪人が祈るとき」の梗概著者小林由香さんは2011年に小説「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞し、今回が2作目の上梓。「『復讐法』という法律制定され、私刑が認められている日本を舞台に、被害者の“身内”として私刑の権利を持った人間の心の揺れを描いた。」のが「ジャッジメント」だったが、今回の「罪人が祈るとき」は“虐めの加害者に対する被害者の思い”という物をテーマにしている。

 

考え方は、人其れ其れ在って良い。“性善説”を信じるのも、個人の自由だ。でも、自分は性善説を信じておらず、寧ろ性悪説寄りの立場”だ。悪事を働いた人間でも、悔い改めて真人間になる者“も”居るとは思う。けれど、悔い改める事無く、悪事を働き続ける人間が少なく無いのも事実だと思う。

 

以前の記事「素直に非を認めよ!」でも触れたが、今から29年前に発生した「女子高生コンクリート詰め殺人事件」は、加害者の少年達による常軌を逸し残虐さから、今も忘れられない事件だ。鬼畜としか思えない所業為した彼等には“極刑”を下して欲しかったが、少年法に守られた彼等に極刑が下される事は無かった。そして、其の後、4人の加害者の内2人が、再び犯罪に手を染めている。鬼畜の所業を為したというのに、全く反省していなかった訳だ。

 

愛する身内を虐めによって失ったら、自分は加害者を許す事は出来ない。でも、法治国家に身を置く以上、法律による裁きに彼等を委ね、私刑に走る事は自重すると思う。でも、加害者が罪を全く反省していない許りか、(愛する身内を)死に追い込んだ事を誇る言動をしていたら、自分を抑えられる自信が無い。

 

息子に対して実際に行われていた虐めの酷さを知った時の啓介の気持ちは、凄く判る。法治国家に身を置いていても、“法律の限界”を強く感じるだろうし、呪いもするだろうから。彼に感情移入すればする程、“彼を待ち受ける現実”には遣り切れ無さを強くするが、だからこそ物語の結末には救いを感じる。

 

総合評価は、星4つとさせて貰う。


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2018-07-05 22:02:15
こんばんは。
性悪説の側に立っていますが、死刑制度には反対しています。
俗に「殺してしまいたいほど憎い」といいますし、被害者遺族のその心情がわからないわけではありません。
しかし、冤罪もさることながら死刑にしてしまえばそれで憎しみの対象が消えてしまっても、被害者の憎しみが消えてしまうわけでもないだろうし。
むしろ終身刑で死ぬまで壁の向こうで罪を償わせる方が、犯罪者にとっては残酷な刑罰だろうと思えるのです。
もちろん終身刑に限っては犯罪者の人権などくそくらえ、刑務所での待遇改善などもっての外、という条件下でですが。

ちなみに、懲役刑と禁固刑では、労働を課せられない禁固刑の方が軽いと思っていましたが、実際には何もしないまま収監が続く禁固刑の苦痛よりも、懲役刑を希望する受刑者が多いのだとか。

壁の外に出る希望のないまま収監され続ける苦痛よりも、いっそ死刑にしてくれと思わせるぐらいの刑罰の方が、犯罪の抑止にもなるでしょう。
受刑者の人権を問題にして「死刑廃止」を主張される人たちとは少し違った、死刑廃止論ではありますが。

それでもなお「死刑制度」が必要とされるなら、以前雫石さんのブログでもコメントしたように、被害者遺族に「仇討」させるべきだと思うのです。
これは加害者への「刑罰」ではなく、純粋に「復讐」として行うべきものだと考えます。
いずれにしても、国家権力が個人の「復讐の権利」を取り上げて、国家として個人を殺すという制度には違和感を覚えます。
それは国家権力が戦争において、殺人を正当化するのと同じことだから。
>悠々遊様 (giants-55)
2018-07-06 02:14:41
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

冤罪は絶対に許されないし、避けなければいけない事と思いますが、そういう事態を生まない対策を十二分にした上で(100%避けるのは、現実的では無いのかもしれませんが。)、個人的には死刑制度維持派です。個人による仇討ちでは無く、法に基づいた国家による仇討ちという意味合いにはなりますが。

「何もしない儘収監が続く禁固刑の苦痛よりも、懲役刑を希望する受刑者が多い。」、此れは興味深い話ですね。「何もしない。」というのは、短期間で在れば堪え得るけれど、ずっと続くとなると、精神的にはきついのでしょう。

「犯罪者だけでは無く、他者を精神的に甚振ったり等、“一定の基準の罪”を犯した人達を“天空”に押し込め、其の罪に見合った苦役を科し続ける。彼等は命を絶つ事も出来ず、科された苦役期間をクリアする迄、現世に戻る事が出来ない。人々はそんな彼等の姿を、四六時中見る事が出来る。阿鼻叫喚とも言える光景を見れば、罪を犯そうとする人間は減るだろう。」、そんな“空想”をする事が良く在ります。「地獄絵図や地獄の設定を見聞する事で、罪を犯す事への歯止めとした。」という発想と似てはいますが・・・。

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