下流老人

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「大原麗子さん　年金の繰り上げ受給申請する程貧窮していた」（９月４日、ＮＥＷＳポストセブン）

 

現在、生活保護受給世帯は急増している。今年３月時点で、過去最多の１６２万世帯に上り、其の内約半数に当たる７９万世帯が高齢者だ。此の１０年で凡そ２倍に膨らんでいる。

 

生活保護費は、例えば東京２３区に住む６０代単身ならば、月に約１３万円、６０代夫婦で約１８万円だ。此の金額が国の定める「人が生きて行く為の最低生活費。」で在る。

 

特に深刻なのが女性の貧困だ。６５才以上の一人暮らし女性の「相対的貧困率」は４４．６％（２０１２年）に達し、一人暮らし男性の約１．５倍になる。相対的貧困率とは、税金や社会保険料を除いた可処分所得が年１２２万円に満たない世帯の割合を示している。詰まり、現預金や不動産を考慮しなければ、一人暮らしをする高齢女性の、実に２人に１人が貧困に喘いでいると言えるのだ。

 

御金の無い生活は、健康面さえも蝕むというデータが在る。２０１２年の研究に因れば、年収２５０万円以上の「上流老人」に比べ、下流老人は女性では２．５倍、男性では３．５倍死亡率が高いとされる。

 

鬱状態にも陥り易い。年収４００万円以上の高所得グループに比べ、１００万円未満の低所得グループは、女性で４．１倍、男性で６．９倍、鬱状態の人が多かった。

 

下流老人への転落は、華やかな芸能人も例外では無い。此の８月初旬、七回忌を迎えた女優の大原麗子さん（享年６２）も、晩年は生活に苦しんでいた。

 

結婚式に当時の芸能界史上最高額と言われた２億数千万円を費やし、世田谷区の大豪邸で暮らしていた大原さんだが、２０代後半で難病のギラン・バレー症候群を患って人生が反転した。乳癌や鬱病の発病も重なった上に、心臓弁膜症とリウマチを併発して車椅子生活だった母親の介護も長年に亘って続けた。

 

年を取るに連れて生活は苦しくなり、所蔵する高価な絵画や骨董品は全て売り払った。晩年には、年金の受給開始年齢になる前に一部を受け取れる「繰り上げ受給」を申請し、更に弁護士と一緒に社会保険事務所を訪れて、「年金額が、何でこんなに少ないんですか。」と抗議した程だった。そして、往年の大女優は、貧窮の中で息を引き取った。

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３年前、ハナ肇とクレージーキャッツの一員だった桜井センリ氏が亡くなられた際、“孤独死”で在った事、そして自宅が非常にみすぼらしかった事にショックを受けた。ハナ肇とクレージーキャッツと言えば一世を風靡した人気グループで在り、其の全盛期を知らない自分でも桜井氏の事は良く存じ上げていたので、「あんなにも人気者だった人が、晩年はこんなに寂しい状況に陥っていたのか・・・。」と考えさせられたからだ。

 

大原さんの急死も、非常にショックだった。贅沢三昧な生活を送っていた時期が在るとはいえ、往年の大女優があんなにも寂しい死を迎えた許りか、困窮した生活を送っていたという事実が、余りにも意外だったので。

 

「近い将来、高齢者の９割が下流老人となる可能性が在る。」なんていう話も在る。現在、裕福な日々を送っている人達、又は若者達の中には、「下流老人なんて、自分には無関係な存在。怠惰な生活を送っている人だけが、下流老人になるのだから。」と考えている人も多いだろうけれど、昔と異なり、“社会のセーフティー・ネット”が著しく機能しなくなって来た現代に在っては、下流老人になる可能性は決して低く無いと思っている。高学歴で高収入な人で在っても、病気や時代の変化により、全てを失ってしまう事は、決して珍しく無くなって来ているのだ。