ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ひと」

2019年05月20日 | 書籍関連

「“新刊を扱う書店の書店員”の投票により、ノミネート作品及び受賞作が決定される。」というスタイルの文学賞本屋大賞」。選ぶ人達が一般読者の目線に近いという事で、近年では「ノミネート作品の売り上げに与える影響が、芥川賞直木賞其れよりも大きい。」と言われたりもする。

今回読了した小説ひと」(著者小野寺史宜氏)は、今年の本屋大賞(第16回)にノミネートされ、1位の「そして、バトンは渡された」(著者:瀬尾まいこさん)に続き、2位に選ばれた作品。

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母の故郷の鳥取で店を開くも失敗、交通事故死した調理師の父。女手一つ、学食で働き乍ら、一人っ子の僕を東京大学に進ませてくれた母。其の母が、急死した。柏木聖輔(かしわぎ せいすけ)は20歳の秋、たった1人になった。全財産は150万奨学金を返せる自信は無く、大学は中退。仕事を捜さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。

そんな或る日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の総菜屋で、買おうとしていた最後に残った50円コロッケを、見知らぬ御婆さんに譲った。其れが、自分の運命を変えるとも知らずに・・・。
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高校2年の時、調理師の父親は車を運転中、車道に飛び出して来た猫を避け様と急ハンドルを切った事で、電柱に衝突して死亡。以降、女手一つで育ててくれた母親は、大学2年の時に病気で急死。」という、僅か3年間の間に両親を失い、20歳で天涯孤独の身となった柏木聖輔が主人公。

「厳しい運命抗う事無く、淡々誠実に生きている様な柏木聖輔は、一言で言えば「実に良い奴。」。良い奴過ぎて、心配になってしまう程。「他人の事を一番に考え、自分の事は後回しにする。」、そんな感じなのだ。

自分は父親を含め、身近な人間を3年連続で失った経験が在る。だから、小説の中の話とはいえ、僅か3年の間に両親を突然失った聖輔に、どうしても自分を重ね合わせてしまう。一つ間違えば、自分も彼と同じ立場になっていたかも知れない。

「良い奴も居れば、な奴も居る。」、其れが人間社会。「親切そうな感じで近付き、金を騙し取ろうとする奴。」が居る一方、「好い加減な所は在るが、実は良い奴。」等が、「ひと」には登場する。

ハートウォーミングな作品。」という点では、「そして、バトンは渡された」と似たテーストだが、“現実感”という点では「ひと」の方が「在る。」だろう。でも、1人の男性の日々を、淡々と描いているだけ。というのも事実で、そういう部分が人によって評価を分けるだろう。

直面させられる運命に抗う事無く、淡々と受け容れて来た様な聖輔が、(小説の)最後の最後に抗う事になる。「相手のパンチを無防備に受け続けて来たボクサーが、倒れそうになり乍らも反撃のパンチを決める。」という感じ。此れはスッとした。

読後に澄んだ気持ちにはなれるが、「1人の男性の日々を、淡々と描いているだけ。」というのがどうしても在り、全体として起伏感に欠ける

総合評価は、星3つとする。


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