ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「パラドックス13」

2009年10月04日 | 書籍関連
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パラドックス逆説。相互に矛盾する命題が、共に帰結し得る事。

日本時間に於ける3月13日13時13分13秒からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われると言う。「何が起こるか?」は論理数学的に予測不可能で、各国の首脳達は国民に動揺を与えない為に、その事実を極秘にした。

その時間が訪れた瞬間、目前には想像を絶する過酷な世界が出現した。陥没する道路。炎を上げる車両。崩れ落ちるビルディング。破壊されて行く東京に残されたのは僅か13人の者達。「年代も職業もバラバラな彼等だけが、何故此処に居るのか?」、「彼等に何か共通点は在るのか?」、「彼等以外に残った生き物が植物だけなのは、一体何故なのか?」。「彼等を襲った“P-13現象”とは何なのか?」等々、彼等が生き延びて行く為には、この世界の数学的矛盾(パラドックス)を読み解かなければならない。
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刊行された日に購入するも、他にも読みたい作品が数多と在った為、半年近く書棚に飾られたままだった東野圭吾氏の作品「パラドックス13」。「一番好きな物は、最後に食したい。」という故、大好きな東野作品を早く読み終えてしまうのは勿体無く感じてしまうのも、これだけ読むのが遅くなった理由の一つかもしれない。

この作品、“理系作家”の東野氏の面目躍如といった内容。様々な疑問に対する答えが、文系の自分からすると実に論理的だからだ。東京に残された13人の人々が、その現実に戸惑い乍らも過酷な日々を過ごして行く。作風からすると楳図かずお氏の名作「漂流教室」や、貴志祐介氏の作品「クリムゾンの迷宮」(貴志作品の中では、ベスト3に入る面白さと思っている。)と似た感じが在る。

「それ迄生活して来た世界」とは異なる「未知なる世界」では、社会的身分なんぞは何等意味を持ち得ない。警察官だろうがヤクザ者だろうが、重役だろうが部下だろうが、高齢者だろうが女子高生だろうが、皆協力し合わなければ生きていけない現実。

世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になる事も在る。これはそういう御話です。と東野氏は語っているが、どういう事なのかは実際にこの作品を読んで戴ければと思う。又、非常に強固と思われた都会の仕組みが、自然の前では如何に脆弱で在るかも、具体的事例を以てして再認識させられる。

新機軸を打ち出したい!」という作者の強い思いが感じられる意欲作だと思う。非常に面白い内容で、ドンドンとストーリーに引き込まれて行く。「総合評価は星4つ!」という思いで終盤迄読み進んだのだが、最後の数頁でややガッカリさせられた。「最高の料理人が供するフルコース舌鼓を打っていたのに、メイン・ディッシュでインスタント食品が出て来て幻滅させられた。」という感じ。全体の99.99%は凄く良い内容だっただけに、最後の数頁の駄目さ加減が際立ってしまった。

総合評価は星3.5個。くどい様だが、最後の数頁を除けば東野氏の代表作の一つに成り得る作品だったと思う。

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3 コメント

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こんばんはです。^±^ノ (てくっぺ)
2009-10-04 23:18:38
ああ。惜しい作品だったのですね。x±x

そういえば、太宰治の「親友交歓」も。
ぉぃらは最後の「威張るな!」の4文字で、幻滅したりしましたし。

逆に、最初はさほどとも思えない「津軽」の最後の部分で好きになったりすることも。

文学とはむずかしゅうものでござゐます。x±x
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Unknown (マヌケ)
2009-10-07 20:12:05
気になりましたので恩田陸さんの「ユージニア」を読みました。 貫井徳朗さんの、タイトルを忘れてしまいましたが、確か、一家惨殺の世田谷のあの事件を彷彿させるあの作品に似ていました。 と、いいますか作風が同じでした。 「パラドックス13」はかなり話題になっていますね。
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>マヌケ様 (giants-55)
2009-10-07 20:52:13
書き込み有難う御座いました。

貫井徳朗氏のその作品は「愚行録」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/f885a71d7d01dae978e8f11454c064c3)ですね。充足度の高い作品が多い貫井氏ですが、個人的にはこの作品には物足りなさを感じました。

「パラドックス13」はそんなに話題になっているのですね。確かに意欲作だと思うし、最後の数頁を除けばかなり面白い作品だったと思います。それだけに、最後の数頁の不出来さが残念。
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