ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ガソリン生活」

2013年06月13日 | 書籍関連

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大学生の望月良夫(もちづき よしお)は愛車のデミオ運転中に、偶然遭った女優の荒木翠(あらき みどり)を目的地へ送り届ける事に。だが翌日、翠は事故死する。本当に事故だったのか?

 

良夫と其の弟で大人びた小学5年生の亨(とおる)は、翠を追い駆け回していた芸能記者・玉田憲吾(たまだ けんご)と知り合い、事件に首を突っ込み始める。姉・まどか、そして母・郁子(いくこ)と、望月一家全てが巻き込まれ、謎は広がる許り

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ディズニー作品の1つ「カーズ」。自分は実際に見ていないのだが、「擬人化された車達が主人公の作品。」というのは知っている。今回読了した伊坂幸太郎氏の小説「ガソリン生活」も、擬人化された車達と、そして“彼等”に関係する人々を描いた作品だ。

 

、「擬人化された車達」という共通点は在るものの、(恐らくは)自分の意思で動き回っていた(と思われる)「カーズ」とは異なり、「ガソリン生活」での車達の場合は、自分の意思で動き回れる訳では無い。動かすのは飽く迄も人間で在り、自動車達の意思は全く介在出来ない。又、自動車同士交わす会話は人間達には全く伝わっておらず、同じ「車」という括りでも、自転車の発する言葉を自動車達は全く理解する事が出来ない。

 

そういう“縛られた設定”が在る事により、車から離れてしまった人間の言動を車達は知る事が出来ず、同時に車達の“耳”や“目”を通して人間の言動を確認して来た読者も、“其の間”は当該人物の言動を知る事が出来ない訳で、車達と一緒に「今、何が起こっているんだろう?」と思案するという、不思議な効果を生み出して行く。

 

「車の運転」という行為は、免許取り立ての人間やペーパー・ドライヴァーを除けば、特に意識してしている事では無いだろう。しかし、“動かされる側”の車の視点で描かれると、“運転する側”の人間には特に意識していなかった行為でも、「こういう捉え方も在るんだ。」という新鮮さが感じられたりもした。

 

「全く無関係としか思えなかった事柄が、後になって意外な形でリンクしている。」というのは伊坂作品で良く使われる手法だが、今回の作品でも遺憾無く発揮されている。東北の一都市で起こった自動車事故を「ダイアナ妃の自動車事故」とリンクさせて行くなんていう発想は、伊坂氏ならではの事だろう。

 

此れで終わりかな。」と思った後に、8エピローグが記されていた。10年後の望月家を描いているのだが、人によっては「必要無い。」という意見も在るだろうけれど、個人的には「此の8頁が、良い余韻を残している。」と感じた。

 

総合評価は、星3つ


コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2013-06-13 09:22:31
中身は伊坂作品でしたが、ピクサーズのCGアニメ、カーズのようでもありましたね。 緑デミオがかわいらしいペットみたいで、車はそれぞれの家庭の事情を知っていて、情報交換してて、なぜか列車を尊敬している。 踏切で長く続く列車を見て憧れる、長旅をする列車は情報をたくさん知っているから。 買い替えで家族とのお別れがさびしいとか、事故は悲惨だとか、すれ違うパトカーに事件を伝えるだけで直接人間を助けることができないもどかしさだとか、車が擬人化されて持つ感情が人間に愛を持って向けられてましたね。 とてもユーモア溢れる作品でしたし、これまでと少し違った雰囲気の伊坂作品だったと思いました。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2013-06-13 10:27:44
書き込み有難う御座いました。

車達が列車や飛行機に対して一目置いている理由というのが、「成る程。」と思うと同時に、つい笑ってしまいました。

マヌケ様も触れて居られますが、“自身”や所有者等が危機に陥っても、自ら何かを出来る訳では無い事から、もどかしさを表す車達というのが、面白い発想ですよね。
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