ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「俺たちは神じゃない 麻布中央病院外科」

2023年04月05日 | 書籍関連

古くは森鴎外氏や北杜夫氏、渡辺淳一氏等、そして新しい所では海堂尊氏や夏川草介氏、知念実希人氏等、“医師で在り作家でも在るという人”が存在する。「1980年生まれの現役外科医で、37歳の年に病院長にもなった。」という経歴を持つ中山祐次郎氏も、そんな1人だ。「『泣くな研修医』シリーズ」で知られる彼の、「俺たちは神じゃない 麻布中央病院外科」を読了

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麻布中央病院外科に所属する剣崎啓介(けんざき けいすけ)は、腕利きとして知られる中堅外科医。そんな彼が頼りにするのが、同僚の松島直武(まつしま なおたけ)だ。生真面目な剣崎と陽気な関西人の松島。2人はオペで、絶妙な呼吸を見せる。院長から国会議員切除を依頼された剣崎は、松島を助手に、得意としているロボット支援手術を進める。だが、其の行く手には、或る危機が待ち受けていた。
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現役の外科医だけに、手術シーン等、“医療現場の実態”が生々しく描かれている。手術で用いられる器具の説明や、スタッフの役割、手術の手順等々、医療に詳しくない読者にも判り易い記述は、非常に良い。

自動運転車宅配ロボット空飛ぶ車ドローン宅配便等、自分(giants-55)が子供だった頃には“夢物語”としか思えなかった技術が、今や現実の物となろうとしている。此れ等の技術により、人々の暮らしが快適になるのなら、其れは悪い事で無いのだろうけれど、「機械も完璧な存在では無い以上悪意を持った人間による“干渉”や、機械自体のトラブルによって、大きな災い齎す危険性。」を、自分はどうしても懸念してしまう。(手塚治虫氏の名作「ブラック・ジャック」に、「U-18は知っていた」という作品が在る。コンピューターが自分の“意思”を持ち、“暴走”してしまう話だが、此れなんぞも「機械は、必ずしも完璧では無い。」事を思い知らされた。)剣崎がロボット支援手術を行う場面でも、機械の危うさを感じさせる部分が在り、「機械に頼るのは悪い事では無いけれど、100%依存してしまうのも危ういな。」と再認識させられた。

又、腹腔鏡手術及び開腹手術メリットデメリット大腸癌手術と人工肛門(ストーマ)との関係性等も、そこそこの知識は在ったものの、勉強させられる事が多かった。

特に後者に関しては、「自身が大腸癌を罹患し、“一時的に”人工肛門を造設する等、筆舌に尽くし難い程の苦しい闘病生活を送って来られた(来られている)
“桑マン”桑野信義氏の証言。」で大変さ肛門近くを切除すると、肛門を締める筋肉が弱り、1日に何十回もトイレに駆け込んだり、漏らしてしまう事が在るそうで、「トイレに行って排便し様と踏ん張っても便が出ず、トイレを出た瞬間、無意識の内に便を漏らしてしまった事も在る。」という証言は、非常に衝撃的だった。を知ってはいた。でも、「肛門を敢えて温存するよりも、人工肛門にした方が、“生活の質”を高く保てるケースが在る。」というのは頭で理解出来ても、実際に人工肛門を造設するという話になると、非常に抵抗を感じる人が居るのも又、理解出来る。

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100人を超える外科医と手術をしてきた。夢中で切り続けた15年だった。ある外科医とは強く反目し、またある外科医とは深いで結ばれた。ひとりだけ、心から信頼し合いたい、命を預け合いたい外科医がいた。技術、知識、人間性すべて申し分のないすごい男だった。しかしどうしても出来なかった。タッグを組めばなんでも出来るはずだった。自分の身勝手さか、相手の狭量さか。いまとなってはわからない。あまりに無念だった。同期の外科医同士はうまくいかないものなのだ、と言い聞かせた。そして離れた。 そんな彼と、こんな関係を築けたら。永遠に叶うことのない思いを、剣崎と松島に託した。 ふたりを好きになってくれたとしたら、嬉しいです。
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著者
後書きで書いた文章が、強く印象に残る。剣崎と松島の関係性は、著者が果たせなかった夢の“実現”なのだ。

自殺図ろうとした男性が登場する意味合い(深い意味合いが在るとは、自分には全く感じられなかった。)や、最後の方で記された「明日からは、また新しい外科医人生が始まるのだ。」というのが「“生まれ変わった気持ちで”という意味なのか、其れとも“別の職場で”と言う意味なのか?」が良く理解出来なかったりと、もやもやが残る部分は在る。でも、医療に対して真摯に向き合う医師達(「全てがそうだ。」とは思わないけれど。)の姿には、心打たれる物が在った。

総合評価は、星4つとする。


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