ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「合唱 岬洋介の帰還」

2021年10月15日 | 書籍関連

今年3月、「書き続ける事」という記事を書いた。日本には漫画を対象にした物を除くと、200位の文学賞が存在する。」と、8年前の記事で紹介したが、有名な文学賞を受賞したからといって、売れっ子の小説家になれる訳では無い。有名な文学賞を受賞しても、結局は“消えてしまう者”も少なく無いのが現実。どんなに凄い文学賞を受賞したとしても、後が続かずに“一発屋”で終わってしまう小説家は多い。大事なのは、どんどん良い作品を書き続ける事だ。という編集者の発言を読んだ事が在るけれど、小説家として大成するかどうかは、其れに尽きるのだろう。

**********************************************************
幼稚園幼児等を惨殺した直後、自ら覚醒剤を注射した“平成最悪の凶悪犯"と呼ばれる仙街不比等(せんがい ふひと)。彼の担当検事になった天生高春(あもう たかはる)は、刑法第39条によって仙街に無罪判決下る事を恐れ、検事調べで仙街の殺意立証出来ないかと苦慮する。

然し、取り調べ中に突如意識を失ってしまい、目を覚ました時、目の前には仙街の銃殺死体が在った。指紋や硝煙反応検出され、身に覚えの無い殺害容疑逮捕されてしまう天生。

そんな彼を救う旧友岬洋介(みさき ようすけ)が、地球の裏側から急遽駆け付ける。そして、悪徳弁護士と呼ばれる御子柴礼司(みこしば れいじ)や熱血刑事渡瀬(わたせ)古手川和也(こてがわ かずや)、死体好きな監察医光崎藤次郎(みつざき とうじろう)教授等と相見え・・・。
**********************************************************

小説さよならドビュッシー」で
第8回(2008年)「『このミステリーがすごい!』大賞」を受賞し、文壇デビューを果たした中山千里氏。上記した編集者の発言で言えば、間違い無く売れっ子小説家の1人だろう。「岬洋介シリーズ」、「御子柴礼司シリーズ」、「刑事犬養隼人シリーズ」、「『ヒポクラテスの誓い』シリーズ」、「毒島シリーズ」、「宮城県警シリーズ」等の人気シリーズを生み出し、映像化された作品は少なく無い。2010年1月~2019年3月に上梓したのが56作品というのだから、2ヶ月に1冊以上のペースで上梓している訳で、質&量共に凄い。

そんな彼が昨年4月に上梓したのが、今回読んだ「合唱 岬洋介の帰還」。文壇デビューから10周年という事で、「12ヶ月連続で単行本を上梓する。」というとんでもない企画を達成したが、其の1冊が「合唱 岬洋介の帰還」で在る。

中山氏の作品は“摘まみ食い”する感じで、全てを読んではいない。だから、「豪華だな!」という驚きは無いのだけれど、「合唱 岬洋介の帰還」には、中山作品に登場して来た主要キャラクターが、作品の垣根を超えてずらっと顔を揃えている。中山作品のファンにとっては、欣喜雀躍といった感じだろう。

上記した様に、自分は中山作品を全てを読んでいる訳では無い。人気シリーズの1つ「御子柴礼司シリーズ」に関しては、全く読んでいないのだ。超個性的なキャラクターが登場する中山作品に在って、御子柴礼司というキャラクターは非常に特異な存在だろう。探偵役を務める弁護士の様だが、“どんな罪状で在っても負けない悪徳弁護士”と呼ばれているのも然る事乍ら、彼は“元犯罪者”でも在る。「14歳の時に幼女を殺害し、遺体をばらばらに解体。其れ等を郵便ポスト等の上に晒し、“死体配達人”と呼ばれたのが彼。」なのだ。関東医療少年院送致になるも、5年後に仮出所。其の際、氏名変更が家庭裁判所によって認められ、本名の園部信一郎(そのべ しんいちろう)から(本人希望した特撮ヒーロー番組の主人公と同じ名前の)御子柴礼司に変え、そして弁護士となったという経緯が。残虐な犯罪を行った人間が弁護士となり、探偵役を務める。という設定は、非常に露悪的で在り、抵抗を覚える読者もそう。他にも今回登場する“主要キャラクター達”は、実に個性的。

心神喪失者の行為は、罰しない。」、「心神耗弱者の行為は、其の刑を減軽する。」という刑法第39条には、以前から批判が多い。「自身の罪を罰せられない為、又は刑を減軽させる為、心神喪失や心神耗弱を装っている。」様な容疑者が、時折現れるので。大事な人を失った者達にとって、刑法第39条で罪を逃れ様としている様な容疑者に、激しい怒りを覚えるのは当然と言える。

「大量殺人をし、刑法第39条の“悪用”を目論んでいる様な容疑者が、
現役の検事が取り調べ中に殺されてしまう。犯行が起こった際、取調室には容疑者の他に、意識を失った検事1人しか居らず、検事の犯行を裏付ける証拠が幾つも存在する。」という設定。

普通に考えれば、「検事=殺害者」となるだろう。でも、“彼”が殺害者で無いとすれば、考えられる殺害者は自ずと絞られる。だから、彼の人物が殺害者だろうな。」という予想は、完全に的中した。でも、“彼等の関係性”は、「そういう事だったんだ。」という驚きが。御都合主義的な設定では在るものの、意外性は在る。

残念なのは「中山作品の主要キャラクターを勢揃いさせた割には、キャラクターによって“添え物的”な扱いだったりした。」事。非常に個性的なキャラクター達なので、もっともっと個々を“深掘り”しても良かったと思う。実に勿体無い

総合評価は、星3.5個とする。


コメント    この記事についてブログを書く
« 久留米勤労補導学園 | トップ | 帯に短し襷に長し »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。