ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「玉磨き」

2013年05月28日 | 書籍関連

*********************************

ルポライターとして働いて来た「私」は、20年の節目を迎え、請け負い仕事を熟す中で「見逃してしまった事」や「過ぎ去ってしまった物」を、改めて取材して回った。

 

細々継承された伝統工芸、埋もれようとしている技術、忘れ去られ様としている出来事・・・。消え去る物と受け継がれて行く物が在る。其れを記録して残す事に意味が在るのだろうか?

 

在り得るかもしれない現実と地続き不条理から、現在の私達の姿がくっきりと浮かび上がる。人の人生に意味は在るのか?意味を失ったのは、世界か、貴方か?

 

集落に伝わる伝統産業『玉磨き』の唯一の担い手で在る高橋家。-『玉磨き』」、「通勤用観覧車の企画設計から設置運行を請け負う只見通観株式会社。-『只見通観株式会社』、「『古川』の人間の優秀さに牽引されているとされた、古川世代ブーム。-『古川世代』」、「不安や不調を呼び起こす『ガミ』を捕える『ガミ追い』の現場。-『ガミ追い』」、「只管1人で部品だけを作り続け、完成形を見る事の無い分業体制。-『分業』、「水底に沈んだ町で、たった1人、商店街組合を守り続ける男。-『新坂町商店街組合』」。
*********************************
 
 
日常世界』を描いている様に見せ掛け乍ら然りげ無く『非日常世界』を滑り込ませて行き、最後には読者をどっぷりと『非日常世界』に浸かり込ませている。、そんな作風確立しているのが、冒頭梗概を記した小説「玉磨き」の著者・三崎亜記氏だ。
 
「玉磨き」というタイトルを最初に目にした時、助平な自分は「ソープ嬢を描いた作品か?」等と馬鹿な事を思ってしまったが、勿論、そんな訳は無く、“架空の”伝統産業で在る「玉磨き」に従事する(していた)人達をルポタージュした作品。「ルポタージュ」と記したが、此れも“架空の”ルポタージュで在り、要するに収録されている6つの短編小説は全て、「三崎氏が生み出した“架空の”産業を、“架空の”ルポタージュという形で描いた作品。」という事で在る。
 
何れも不思議な世界観の上に成立している作品なのだが、中でも「古川世代」という作品が印象的だった。誰が言い出したか全く判らないのだけれど、或る日突然「古川姓を持つ一定年齢の者達は、極めて優秀で在る。」という風潮が出来上がる。今になってみれば全く無根拠な話なのだけれど、其の事に疑義質す様な事が許されない雰囲気となり、古川姓を持つ一定年齢の者達は世の中で優遇されて行く。或る者は履歴書も資料請求の葉書も送っていないのに、「古川世代」という事だけで大手企業の人事部長が「是非入社して欲しい。」と家を訪れ、入社試験も無しに入社し、在り得ない程の高待遇を得た程。同年代なのに「古川姓」では無いというだけで割を食う人々、そして或る切っ掛けにより、一転して排除されて行く事になる「古川世代」。「面白おかしく“~世代”と一括りにし、散々持ち上げた挙句に叩き落とす。」というメディア特質を、シニカルに描いた作品という感じがした。
 
不思議なテーストで、面白く無い訳では無いのだが、何となく読み進めるのがしんどくも在る作品。三崎作品は人によって、好き好きがはっきり分かれる事だろう。総合評価は、星3つとする。
『小説(レビュー感想)』 ジャンルのランキング
コメント (2)   この記事についてブログを書く
« ネアンデルタール人は現代人... | トップ | スメハラ »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マヌケ)
2013-06-02 14:44:32
掃除がスポーツのイベントだったり、象さんの滑り台が本物の生きた象だったり、バスジャックが流行の行事だったり、町と町が予算を取り合うために戦争をしていたり、それらがあたかも普通のことであるように語られていく不思議な世界が、とてもシュールで意味深い時もあるのですが、私もイマイチ抵抗があります。 なぜならば、あまり面白くはないからです。 ただ、あまりに不思議な話なので、記憶に残るといいますか、感動したわけでもないのに、覚えているという変な感じですね。 確か、大嵐か台風かを迎えるための作法のようなものが存在していて、今時の若い夫婦がそれをよく知らなくて、祖父母の知恵で難を逃れるという変な話が最近ではいちばん記憶に残っております。
>マヌケ様 (giants-55)
2013-06-02 21:18:53
書き込み有難う御座いました。

マヌケ様の今回の御意見、全く同感です。三崎作品って“余りにも非現実的な設定”だからこそ、其の設定がずっと記憶に残るのだけれど、だからと言って「良い作品を読んだなあ。」という余韻が残念乍ら無いんですよね。心を揺さぶられる物が無いと言っても良い。まあ「心を揺さぶられる物も無く、記憶にも残らない。」という小説が多い中、ずっと記憶に残る物が在るというだけでも凄いとは言えるのですが。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

関連するみんなの記事