日々の恐怖 4月18日 水溜り
ど田舎に住んでいた、小学校時代の話です。
かなり雪が積もる地方の春先のこと、自宅近くのホームセンターに一人で買い物に出かけ、駐車場を横切っていた。
車止めと車止めの間、停めてある車のお尻が並ぶ間で、そこは雪解け水が泥水になって広い広い水溜りになっていたが、駐車場だからさほど深い水溜りではないし、長靴でばちゃばちゃやりながら歩いていた。
すると、いきなり片足が付け根近くまで水に沈んだ。
つま先がどこにもつかない。
心臓が止まるかと思うほど驚いたが、運動音痴な自分には珍しく、バランスを崩さずにしゃがんだ姿勢になっただけだったので、必死にもう片足だけの力で立ち直ることができた。
被害は片足だけだったが、水は雪混じりで本当に氷のように冷たかったし、恥ずかしいし、助けてくれそうな大人の姿は辺りになかった。
たぶん、田舎だし寒いので皆店内にいたのだと思う。
それで、半べそで家に帰った。
数日して再度その店に行ってみたところ、駐車場の水溜りはすっかり水が退いていて、片足が落ちた辺りには、子供一人が落ちるには十分な大きさの排水口があるのが見えた。
多分、あの時には、泥水で見えなかったけれど、蓋の金属の網が外れていたんだと思う。
もう一歩横にずれて歩いていて泥水の下の落とし穴にすっぽり落ちていたら、気がついてくれる人もいなかっただろうし、私はホームセンターの駐車場で水死していたかも、と後から怖くなった。
あれから、浅いと思っても水溜りを歩くのが怖い。
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