大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 4月24日 ユウちゃん

2015-04-24 14:12:17 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 4月24日 ユウちゃん



 関西の大学に通うWさんから聞きました。

 俺が中学生で、7月頃の話です。
晩飯を食い終わり、階段を上って部屋に戻る途中、廊下の窓からふと隣りの家を見た。
もっとも、隣りといっても空き地を挟んだ先に建っているので、ウチから50mほど離れてはいる。
 もう陽は落ちていたけど、わずかに残る明るさの中で、その家の軒下に短パン姿の小さな男の子が立っているのが分かった。
俺に背を向けその家の壁と向かい合わせで、なんつうか棒立ちで、ドアも窓も無いただの壁の所に立って微動だにしない。

“ どこの子だ?
こんな時間になにやってんだろ?”

と暫く見ていた。
 もっとも、暫くと言っても、時間としては5秒ぐらいかな。
突然、居間から兄が、

「 おーい○○(俺の名前)、今週のジャンプは~?」

って俺を呼んだので、その場を離れた。
 その後、まだ読みかけのジャンプを兄に奪われ、戻ってきた時には、もうその子はいなかった。

“ 空き地で遊んでて、転がってったボールを探してたんだろな・・・。”

ぐらいにしか思わなかった。
 そのことはしばらく忘れていたんだけれど、それからひと月後ぐらいに兄と話しているとき、ふとその日の事を思い出し、何気に兄に話した。
 すると、さっきまでヘラヘラしてた兄の表情が一変した。
それも、悲しげな顔で、

「 そういえばお前まだ小さかったし、教えてなかったしな・・・。」

と昔の話をしてくれた。
 隣りの家にはユウちゃんという男の子が一人いたそうだ。
ユウちゃんは俺の兄の一つ下で、兄とユウちゃんはいつも一緒に遊んでいた。
兄と俺は4つ離れていて、当時1歳だった俺は遊び相手にはならなかった。
だから、俺にはユウちゃんの記憶はない。
 でも、仲の良かったユウちゃんは交通事故で死んでしまったそうだ。
道路の向かい側に自分の母親を見つけ、思わず飛び出し車にはねられて即死だったとのことだった。
 兄もかなりショックで相当泣いたらしい。
ウチの家族もそんな兄を想い、ユウちゃんの話はずっと伏せていたので、俺は一切知らなかった。
 俺があの日に見たその子は特徴から、

「 絶対、ユウちゃんだ。」

と、兄は言った。
 でも、それはそれとして、俺には一つ疑問があった。
それで兄に聞いてみた。

「 なんで何もない壁のほう向いてたのかな?」

すると兄は答えた。

「 ああ、それもさ、お前覚えてないだろ。
あの家、それから改築したのよ。
かわいそうに、玄関がわかんなくて入れないんだな・・・。」

俺が見たユウちゃんが立っていた場所、ちょうど改築前は玄関の位置だったそうだ。










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