月水食堂のお弁当

地産地消と昭和の香りをコンセプトにした安くておいしいお弁当を届けます。

戦友アイロン

2010-12-12 16:02:34 | 日記
このアイロンは、28年間ずっと使い続けている物です。
21才の頃、数ヶ月一人暮らしをした。

失恋と失業のダブルパンチに見舞われ、寮という住まいも失ったナイナイ尽くしの私は、幼なじみのシャーロットの彼を通じ、アパートを探してもらった。

しかし、持ち金はわずか20万。車も購入したばかりで、きちんとしたアパートの敷金や礼金も払えぬ状態だった。

渡りに舟という感じで浮上した、シャーロットたちの行きつけのスナックの2階を、月一万で貸してくれるという話に乗った。

だが、ママからの条件があった。その店のアルバイトを週三日はせよという。

水商売かよ!

引いた。しかし、背に腹は代えられない。

私はそこに引っ越し、就活をしながら、日中は強烈なキャラ揃いの喫茶店で8時間もアルバイトをした。
夜は6時から10時まで週三日4時間働いた。

昼も夜も働き、深夜は客と飲み歩いた。
ハードこの上ない生活だったが、やみくもに働き、苦しみから逃れていたのだろう。
童顔なので、歳は18と偽れとママが言い、呆れながらも従った。

短い間にいろんな事があったな。危険な目にも遇いそうになったし、人を傷つけたりもした。

二度と戻りたくない実家
だったけど、寂しさに耐え切れず、四か月で結局戻るはめになった。自分の弱さを思い知った瞬間。
一人暮らす部屋で、よれよれの自分というシャツを伸ばすように、かけ続けたアイロン。

以来ずっと使ってきた。
たまにコードレスの最新式で軽いものに買い替えようかと思う時もあったが、あの頃がなつかしく捨てられないでいる。

どんな苦い思い出にも、今の自分を形作る意味があるんだよね。