ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

長江哀歌byジャ・ジャンクー

2008年06月08日 | Weblog
2006年ベネチア国際映画賞で金獅子賞グランプリを獲得したジャ・ジャンクー監督の「長江哀歌(エレジー)」を恵比寿写真美術館で観る。
冒頭、船上の人々の姿を移動撮影でとらえたカットでいきなり気持ちを揺さぶられる。1970年生まれの若い映画作家の作品とは信じがたい重厚な画面。確かに、全体に漲る重厚なトーンはアンゲロプロスを彷彿とさせる。ダムの底へと沈みゆく2000年の歴史を紡いできた町。破壊される町と人々の荒んだ生活を淡々と描きつつ、逃げられた嫁と娘を探す男と、二年間音沙汰のない夫を探す女、何の変哲もない二人の主人公それぞれが相手を探し歩く物語。特別な事件は起きないが、ダム底へと滅びゆく町に充満する寂寞とした負の力が画面を通して伝わってきて、目が離せない。そんな負の力が為せる技なのか、至極真面目なストーリーが展開する中で、非常に異質な、度肝を抜く要素に我が目を疑う。脈絡のない二人の主人公を結びスムーズなストーリー転換をせしめたUFO出現のシーンは見事だが、不気味な存在感を誇示していたコンクリの高層ビルが手前に洗濯物がはためくカットの奥で噴煙を上げて空へ飛び立つシーンは一体何?そんな疑問は宙に浮いたまま二人の主人公はお互いの尋ね人を見つけ、彼らなりの決着をつけ、それぞれの人生を再び歩み始める。絶え間なく流れていた河の流れ、しかし堰き止められてしまった水の淀みは三峡という町を負の力で圧迫し、人々の生活も濁り、停滞する。まるでそのような磁場が解決策の見えない闘争を人々に課し、やたらと水を飲む女はその淀みに抗おうとしているかのようだ。食事中に四川の地に帰ることを切り出す男と仕事仲間のカット、半裸の男たちが薄明かりの中で円座になり大皿に盛られた料理を箸で突き合う姿は映画的感動を呼び起こす。

ラ・グラップでお茶をして、夜は成城にあるとんかつ屋「椿」へ。

勢いづいて下高井戸シネマへ。レイトショーでイオセリアーニの「田園詩」が上映されているはずだったのだが、なんと12日からだった!しかも14日までのごく限られた上映。しぶしぶ帰宅。