地形学とGIS / Geomorphology & GIS

ある研究者の活動と思考の記録

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三澤勝衛

2009-02-18 | ひと
三澤(三沢)勝衛の著作集が刊行され始めた.三澤は戦前の人で,旧制諏訪中学で地理を教えつつ,自然環境,天文,農業などについて独自の研究を行った.旧制諏訪中学は,僕の母校である諏訪清陵高校の前身なので,高校時代に三澤について何度か話を聞いた.当時は自分が地理や地学を専攻するとは思っていなかったので,「気合いが入った先生が昔いたんだ」と感じた程度だった.

大学に入り,あれこれ迷った末に理学部地理学教室(現在の地球惑星環境学科)に進学.最初のガイダンスで,鈴木秀夫先生に「高校の先輩の矢澤大二先生を知っていますか」と聞かれた.矢澤先生は日本の気候学の大家で,鈴木先生の師匠でもあるが,そのときは知識がなく「知りません」と答えた.続いて鈴木先生は「矢澤先生は三澤勝衛の学生です.あなたの学校は有名です」と話された.三澤の名前が出てきたのは全く想定外だったが,自分が適切な場所に進学したという安心感を即座に与えてくれた.僕は大学入学後,遊び中心の学生になっていたが,地理学教室に進学後は学業に取り組んだ.この改心のために,三澤の一件は重要だった.

そんな僕にとっても,今回の三澤の著者集の刊行は衝撃だった.戦前に,信州の片隅で書かれた文章なのだから.三澤の著作集は,みすず書房から約30年前に一度出版されており,それで幕だと思っていた.今回の著作集は,内容がより増えており,仮名づかいや見出しの設定が現代風になっている.新たに息吹を吹き込んだという感じであり,二度目の企画としても十分に価値がある.

これまで全4巻のうち2巻が届いており,最初の配本「風土産業」について,雑誌「地理」に書評を書いた.この際には,1952年に古今書院から出た単行本,みすず書房の全集,および今回の3つの版を比較した.書評のために,このような分析をすることは珍しい.会ったことがない母校の大先輩に,すっかり魅せられている自分に気づいた.

今回の全集が出た背景には,最近の経済不況や環境破壊の中で,地域の環境と調和した産業を提案した三澤の思想が再評価されていることがある.近代的な成長を目指してきた我々が,発想の転換を迫られており,そのために三澤に学ぼうという提案である.

ところで余談だが,三澤の本のように,今こそ聴きたいアルバムが Kinks の Village Green Preservation Society.1968年に,サイケデリック・カルチャーや学生運動の嵐が吹く中で,「イギリスの田舎の緑や伝統を大切に」と静かに主張した小品集.当時は売れなかったが,今では名盤扱いで,数年前にはミックス違いやアウトテイクを収めた3枚組も出た.良いものは時代を超える.

Preserving the old ways from being abused.
(The Village Green Preservation Society / Kinks)
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