西洋と東洋の狭間

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「天使の詩」その2

2007-05-17 22:05:32 | 映画
『天使の詩』 Incompreso 上映時間105分
イタリア映画、日本ヘラルド映画配給、大阪映画実業社(日本・1967年11月)
 
フィレンツェ駐在の英国領事が、妻を失った。彼は幼い二人の息子のうち、しっかり者の兄にだけ母の死を知らせ、弟には黙っていることを約束させる。しかし兄の方は、父親の考えている以上に、母の死にショックを受けていた……。父と子のすれ違いから起こる悲劇を描いたドラマ。
 写真-1     写真-2     写真-3        
※ステファノ・コラグランデ、(写真-1)1955年5月3日、ローマ出身
天文学と物理が好きで天文学者が夢だったようだ。その後の映画出演は無い。
ステファノ・コラグランデの両親は裕福な実業家で、映画出演に反対だったようであったが、監督の熱意により実現。
黒い髪と澄んだ瞳を持ち、とても綺麗な顔をした子供らしい少年である。
撮影が始まると彼は、演技の魅力に夢中になり、才能が開花し、亡き母への想いを押し殺し、感受性の強いアンドレアを演じるステファノ・コラグランデ主演で名作『天使の詩』は完成する。
※シモーネ・ジャンノッツィ、(写真-2)
ミーロの、あどけなさや可愛らしさ、父や兄に甘え、何にも知ず母を慕う感情を素直に上手く表情に出しきり演じたシモーネ・ジャンノッツィも「わんぱく旋風」のベベール(プチ・ジュビス)に似た、愛くるしい顔つきの才能あふれる子役である。

スタッフ及びキャスティング
製作 アンジェロ・リッツォーリ
脚本 ルイジ・コメンチーニ(ルキア・ドゥルディ・デンビィ、ジュゼッペ・マンジョーネ)
脚色 ピエロ・デ・ベルナルディ、レオ・ベンヴェヌーティ、(ルキア・ドゥルディ・デンビィ、ジュゼッペ・マンジョーネ)
監督 ルイジ・コメンチーニ
音楽 フィオレンツォ・カルピ、(ラファエロ・ギグリァ)
撮影 アルマンド・ナンヌッツィ
原作 フロレンス・モンゴメリー(原作「誤解」を映画化)
出演 
アンドレア少年  :ステファノ・コラグランデ 
ミーロ少年    :シモーネ・ジャンノッツィ 
ダンカン     :アンソニー・クエイル
ヴィル叔父さん  :ジョン・シャープ
ミス・ジュディ  :ジョルジア・モル
ドラ       :グラジェッラ・グラナータ

物語:(全ストーリーは、昔の記憶を思い出しながら記載しておりますので、前後している場合があるかも知れません)
初めに
イタリア、フィレンツェに駐在するイギリス領事ダンカン=アンソニー・クエイル。妻を亡くし、深い哀しみの中、残されたふたりの息子と暮らしていた。見た目には気丈な8歳の兄のアンドレアはには厳しく接し、病弱で無邪気な4歳の弟ミーロを可愛がり甘やかす父だった。弟ミーロは病弱で家に居る事が多く、わがままを言ってしまうだが兄アンドレアを慕い、アンドレアもミーロを思いやる。でも本当は母を無くしたことにひどく悲しみ、それにも増して理解してくれない父への悲しみ、深まる溝、だがアンドレアは、ひたむきに父に接っしながら愛情を望んでいた。(この父と兄の心のすれ違いから悲しい結末につながっていく・・・。)
ストーリー
利発なアンドレアは既に母の死を予感し、悲しみに小さな胸を痛めていた。しかし不器用でもあるが為、亡き母の事を誰にも話す事が出来ず、募る想いを懸命に耐えていた。
ある時フトした事から父親の書斎で、偶然父が大事にしていたテープレコーダーのテープに収められていた母の声を聴く事になる。それは、紛れも無い優しい母の声であり、つかの間の慰めでもあった。(写真-3)
しかし母の死を受け入れざるおえない現実に、母を慕いながらも堪えてきた気持ちも崩れ、会う事の出来ない悲しさに自然と込み上げてくる涙が頬をつたう。
懐かしい母を求め、幾度となく聴き続けるのだが、やがて誤った操作から母の声を消してしまうのであるが、彼がそれを受け入れるには、余りにも残酷な事でもあった。
このシーンのステファノ・コラグランは主人公が母の死を察する事で、心の葛藤から悲しみ、慕い、張り裂けんばかりの懐かしさへと実に上手く、見事な表現は実に感動させられる場面である。
母の声を永久に失った事は、直に父親に分かる事となり追求され叱られる。
父との、どうしようも無い距離感が漂う。
その事から父親のダンカンは、アンドレアには隠せない事を知り、仕方なく母親の死を告げるのだが、既に母の死を受け止め、深く悲しんでいたのであったが父の前では、そんな様子を見せなかった。
そんな事も知るはずも無い父は、幼いミーロを心配する余り、アンドレアに気遣うことなく、母の死をミーロに話さないように約束させる。
ところがある雷雨の夜、ミーロは恐怖と寂しさから、側にいない母に悲しみ、怒り、とっさに「ママは死んでしまったんだ」と、父親の前で泣き叫ぶのであった。
驚いた父は、アンドレアが喋ったと思い込み、激しく責める。
必死の説明にも、一方的に信じてくれない父親に落胆し、一人泣くアンドレア。
そんな日には、アンドレアは傷つき、満たされない孤独な心の捌け口を庭にある「度胸だめしの枝」に、ぶらさがる事で自身を慰めるのであった。
やがて父の友人である、ヴィル叔父さんが滞在した事で、家の中の雰囲気も少しは明るくなるのだが。
そんなある日、無邪気なミーロの我がままを聞く為にアンドレアは、バスに手をかけ自転車を走らせる。
アンドレアには、容赦なく続く運命なのか、その時、帰りの車から父親に見られていたのだった。兄としての行動と責任に、きつく叱責される。
しばらく滞在した自称子供嫌いのヴィル叔父さんではあるが、純粋で優しい、そして愛情に飢えているアンドレアの理解者でもあり、そんな父親との関係を見ては、不憫にも感じながら密かに気に留め、悟られない様に可愛がるのである。
そんな事もあって見かねたヴィルは友人であるダンカンに、アンドレアと話す機会を作るよう忠告するのであった。
理解した様にダンカンは、仕事にアンドレアを連れて行く事にする。
その日が来た。
兄を慕うミーロは「僕も行く」と、泣いて皆を困らせる。そんなミーロを見て、父を独占する事にアンドレアは、嬉しくもあった。
ミーロをやさしく諭し、アンドレアを見送るヴィル。
領事館でのアンドレアは楽しくて堪らない、父の部下にも紹介された事や用事を依頼された事で、父に認められた様で喜びを感じ、期待通りの挨拶や用事もこなす。それを満足そうに微笑む父、そして明るく振舞うアンドレア。互いに心が通じ合えた時間を過ごすのである。
ダンカンも、そんな息子の姿に安心し、ご褒美として、次の海外出張にアンドレアを連れて行く事を約束する。
父が自分を理解した事に、孤独で無い事を確信出来たかの様にアンドレアは、嬉しくて仕方がない。
おそらく、これからの、新たな幸せな家族の生活を夢見た事であったのだろうか。
外国の賓客との食事会もヴィル叔父さんと家族で共に過ごし、久しぶりに家族の笑いが取り戻せた様であった。
この家族から離れる時がきたヴィルには、気がかりではあったが、以前の快活な子供のアンドレアに戻った事で安堵感が漂う様でもあったのだが。
だが、ヴィルの気がかりが現実になる事が起きるのである。
そんな家族の葛藤を知る由も無いミーロの、兄への我がままは納まる事は無く、朝早く兄の前から、ふざけて外に出てしまった。
心配し追いかけ部屋に戻そうとするアンドレアだったが、嬉しそうにホースの水を掛けてくるミーロを優しく窘める。その事でミーロは高熱を出してしまうのである。
父との海外出張を約束した出発の日、楽しみにしていた嬉しさから学友にも話し、急いで家に帰ったアンドレアの目の前を、家から出て行く父を乗せた車が通り過ぎるのであった。
玄関には、用意しておいた自分のトランクが置かれ、それは同行を許されなかった事を悲しく物語っていた。
アンドレアの信頼と愛に希望を持てた喜びも、ミーロの体を気遣う父には理解されなかったのだ。
傷ついた心は、以前の母が亡くなり厳しくなった父との日々の様に、アンドレアを、あの「度胸だめしの枝」に、ぶらさがらせる事になる。
しかし枝の先まで行くと、側にいない兄を捜しにミーロが来た。
兄と同じ様に登ろうとするミーロ。
弟が危ない。「ミーロ来ては駄目だ」
アンドレアが叫び制止するも、その瞬間アンドレアのぶらさがっていた枝が折れる。
子供の事故の連絡が入り、とっさにミーロと思い、急いで家に帰ったダンカンの目に入ったのは、横たわって瀕死の重傷を負ったアンドレアの方であった。
アンドレアは背骨を打って危険な状態なのだ。
何て事なんだ、ダンカンは思った。
事故の連絡を受け、直にミーロの事で頭が一杯になった。
私には、かけがえのない二人の息子がいたのだった。
そう云えば、常に体の弱いミーロの事ばかりを考え続けていた自分であり、そんな自分を気付かせ、戒める様なアンドレアの事故であった。
ダンカンは、知っている限りの医者に手当ての依頼をするのだが、医者からは既に手の尽くしようがない状態であった。
ヴィルは、この悲しくもいたたまれない現実に激しく胸を痛める。
「ママの肖像画の部屋で・・・」と、父親に最後の願いを言うアンドレ。
父ダンカンも「許しておくれ」・・・この時初めて、アンドレアの心も知り、死の淵にいる大事な息子への誤解し、理解いてやれなかった事にも気付き、アンドレアには、もう届かない自分の非を認めるのであったが・・・。
「お兄ちゃんは、何処かに行くの」
何も知らないで、また一緒に遊べる事を信じながら兄を気遣うミーロの言葉が寂しく響く。
アンドレアは、母の肖像画が見える部屋で、そっと息を引き取り優しかった母の元へ。

美しい背景が、アンドレア少年の汚れの無い純粋な心を物語る様に映し出され、ゆえに、崩れそうで、はかない未来をも予感させた映像美となり、演技力と云った枠を超えた、ステファノ・コラグランデ少年の端整なマスクから生み出された自然なままの繊細な表現の美しさと、綺麗なまでに見える線の細いが故の存在感を、上手く調和させ、理解される事の無かった悲しくも短い小さな生涯を、美しく心に焼き付けさせた、忘れえぬ作品であった。

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8 コメント

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Unknown (たそがれ)
2007-05-17 22:34:11
 遠い日の思い出の作品だったようですね。
 子役が出てくる作品は音なの世界とは違ってナニか純粋な感じですね。
SUKIPIOさんへ (kju96)
2007-05-18 01:49:20
この作品は、見てません。
ルイジ・コメンチーニ作品は
カルデナーレとチャキリスの「ブーベの恋人」
J・ジェンマの「ミラノの恋人」
暗いでしょうか。
この映画も見ないといけないな~と思っておりました。
ヴェンダーズの「ベルリン・天使の詩」のイメージが
強く、・・・気にはなっていましたが。


たそがれさんへ (SUKIPIO)
2007-05-21 11:29:25
お返事、遅くなり申し訳ございませんでした。
映像の美しさやストーリーからの感動が、当時の私の心に焼きついた事で、今でも、この作品の時代背景の懐かしさを、何時までも思い起こさせている様です。



kju96さんへ (SUKIPIO)
2007-05-21 11:33:11
お返事、遅くなり申し訳ございませんでした。
子供が主演している事からかも知れませんが、主人公の心の描写が、悲しく、より美しくもはかなく、描かれていました。
ヴィルの家族への視線も、見ている側の思いを反映している様で、より物語へ入り込ませ、ラストでの無力感を受け止めなければならないのが、記憶に残る事にもなりました。

多くの人が見られています「ベルリン・天使の詩」は、先日放映されていました様でしたが、見忘れてしまい反省しております。
初めてのコメント (山口ももり)
2007-05-25 18:03:42
時々お名前を拝見していましたが、初めてHP拝見しました。じっくり読まないといけないようなしっかりした内容らしく、襟を正しています。映画は大好き。明日も、京都アスニーの無料名画鑑賞会「郵便配達夫は2度ベルを鳴らす」をやります。見たような気がするんですけど思い出せません。行かなくっちゃ・・・でも、明後日は朝早く、イギリスへ・・・さああ・・・???やっぱり・・行くでしょうね。ミーシャさんのブログに書かれていたコメント、これからじっくり考えましょう。
ももりさんへ (SUKIPIO)
2007-05-25 20:25:29
早速、コメントを下さいまして、有難うございます。ももりさんが仰る程、大した内容のモノは何一つありませんので、気楽に見て下さい。
そうでなければ、逆にプレッシャーとなりますので、宜しくお願い致します。

コメントの内容から、察しますと、失礼かもしれませんが、思い立った様な自由な発想からの旅で、英国に行かれるのでしょうか。
大変羨ましいですね。
歴史的な背景の地や建造物は勿論なのですが、物語の影響にもよるのでしょうか、イアン・ランカスター・フレミング原作の映画「007シリーズ」の故郷でもあり、「シャーロック・ホームズ」の地ベーカー街221Bや絵本作家のヘレン・ビアトリクス・ポターの創作活動の基となります北西部に位置します湖水地方等、その様な少し子供っぽい理由なのですが、尚更、訪れてみたい所が多くあります。

旅を十分満喫されて、帰ってこられてからのブログでのスケッチを楽しみにしております。
こんばんわ、SUKIPIOさん (anise)
2007-05-28 19:59:18
何時もコメント頂きまして、ありがとうございます。
丁寧なあらすじ、よく解ります。

ステファノ・コラグランデ少年は、この作品だけなんですか。
拝読しながら、私が見ましたリメーク版より、この少年が、際立たせている作品の様なので、その背景も含み、是非見たくなりましたが、DVDが、やはり無かったのですよ。

原作も一度読みたいとも思っています。また違った見方が出来るかもしれませんね。
aniseさんへ (SUKIPIO)
2007-05-29 17:49:38
お久振りです。
そして、何時もコメント有難うございます。

aniseさんから紹介がありました、ジェリー・シャッツバーグとマーシャ・ノーマンが脚色し、出演はG・ハックマンと「E.T.」のヘンリー・卜ーマスを用いリメイクした作品「Winter Ros」は、監督の意図と申しますか、その微妙な違いも是非、見てみたいものですね。

「天使の詩」の音楽も、目立たず心に訴える効果がありますよ。
この心に残るテーマ曲等、音楽はマイケル・ホッペが担当しています。

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