玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

長期入院と幻覚(14)

2016年10月25日 | 日記

「両手手袋」(拘禁夢2)
 たくさんの拘禁夢を見たが、一番不快だったのは「両手手袋」の夢であった。この夢は合掌した状態で両手にひとつの丈夫な手袋をはめるもので、言ってみれば手錠と同じである。手袋をはめられると両手だけでなく全身が動かなくなるから不思議で、実に効率的な拘禁具なのであった。
 私は病院のベッドから、街の中の地下室のようなところに連れて行かれて、身柄を拘束されている。私を拘束しているのは言うまでもなく女性である。それがどんな女性なのか私には分からない。彼女の手下の女性は直接私に接しているが、私を拘束している女性は姿を現さない。
 地下室に寝ていると、「親戚の人がお墓参りに来るからその時は起こして、解放してやろう」と担当は言う。私の家の墓は柏崎の街のど真ん中にあるから、現実を反映している。だから解放ということも真に受けて、おとなしく指示に従っているのであった。
 しかし、親戚が来る時間になっても解放される気配はない。「騙したな!」と私は思うが、なぜか地下室から 出て行くことが出来ない。そのうちに、私は両手手袋の刑に処せられてしまうのだった。
 十字架にかけられたような感じで、手袋だけなのに全身が動かせなくなる。革製ではなく布製のようだが、意外と頑丈で、どんなにもがいても外れない。この不快さは決定的で、私は思いっきりあらがうことになるのだが、いくらあらがっても手袋は脱げないし、「手袋を外してくれ」という私の叫びを聴いてくれる者はいない。
 私は直立した状態で手袋をはめられて、まるでこれから処刑を待つ殉教者のような姿で拘束されている。私を助けてくれるはずの妻や親戚もお墓参りに行っていて、私のことなど忘れているのだろうか?
 助けてくれるはずの人達に見捨てられているという認識がいかにも苦しい。その苦しみは解決の道がないため、永遠に続きそうである。しかも、私が本当は病院のベッドに寝ているのだということを意識出来ないために、この苦しみを合理的に納得することも出来ないのであった。
 両手手袋の苦しさは何とも言い様のないもので、私はもう一つの夢でもこの両手手袋に苦しめられるのであった。


 


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