玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

近所にイノシシが

2012年03月12日 | 日記
 十三日の防災無線の放送にはびっくりした。「イノシシが比角地区で目撃されたので注意してください」という第一報を聴いて、「まさか、嘘だろ」というのが本音だった。タヌキは住宅街でもよく目にすることがあるが、イノシシがそんなところに出没するはずがないと思った。
 放送の直後、家人が近くの医院から帰ってきて、「前の人がイノシシをそこで見たと言ってた。あと五分早ければ見られたのに」と悔しそうだった。越後線東柏崎駅前(常盤高校側)の話で、自宅とは至近距離である。比角地区といっても広いが、我が家のすぐ近くまでイノシシが来ていたのだ。
 間もなく「東本町で捕獲されました」との防災無線が入った。後で報道されたところによると、イノシシは佐藤池│茨目│北半田│日吉町│比角というルートで進んできたらしい。きっと、佐藤池から国道252号線に出て、8号線との交差点を直進して比角方向に向かったのだろう(比角コミセン付近での目撃情報もある)。
 広い道を選んで進んでいるのは、イノシシは脚が短くて雪道が苦手だからだろう。除雪のゆきとどいた道をイノシシは悠々と進んだのである。それにしても、今年の豪雪がもたらした、とんでもない珍事だった。
 ところでイノシシの肉は大好物で、年に一回くらいは口にする。くせがなくて大変おいしい。もしイノシシに遭遇したら食欲を感じるだろうかというのが自問である。白鳥の池などに行くと、一緒に無数のカモが泳いでいて、いつでもカモに対して食欲を感じてしまう。特にマガモの青い首を見るとよだれを禁じ得ない。
 比角コミセン付近でイノシシに遭遇した人は、立ち話をしていたら股の間から覗いていて、生きた心地がしなかったという。そんな遭遇の仕方だったら、食欲どころではないだろうな。

越後タイムス2月24日「週末点描」より)


大雪と苦情

2012年03月12日 | 日記
 東京の柏崎談笑会に出席して、ふるさとの雪のことを聴かれ、「今年の雪は大したことないですよ。例年の半分くらいです」と報告し、翌日柏崎に帰ってきたら、大変な大雪となっていた。その後も寒気が居座り続け、旧柏崎市は二十六年ぶりの豪雪となった。
 そんなある日、市役所の喫煙所でタバコを吸っていると、一人の男性が入ってきて、何かしゃべりたそうにしている。見ず知らずのその人は「今、市役所に怒鳴り込んできた。柏崎の除雪はあまりにもおそまつだ。“アルフォーレみたいなもん造る金があったら、除雪費を充実させろ”と言ってきたんだ」と興奮気味に話した。
 さらにその人は「我々貧乏人には文化や芸術なんかどうでもいい。とにかく、この雪をなんとかしてくれ」と切実に訴えるのだ。秋田出身だというその人は、故郷の除雪体勢の完璧さと柏崎のそれを比較して、市役所への批判を続けた。
 確かに長岡市などと比べると、柏崎市の道路除雪は下手くそで、垂直に雪の壁をつくる美しい除雪はめったに見られない。しかし、豪雪地と柏崎のように山間部を除いては比較的雪の少ない都市の除雪費に差があるのは仕方のないことで、除雪車にも大きな違いがある。今年柏崎市は国からロータリー除雪車を借り受けたほどだ。
 早朝から深夜まで、不眠不休で除雪を行う業者の人達の努力を考えると、文句は言えない。今年度の除雪費は当初予算の四億三千万円が補正によって倍の八億四千万円に膨らんだ。決して小さな金額ではない。
 ところで、アルフォーレが活発に利用され、市の活性化に貢献し、先のようなことを言われないようになることを強く願っている。

越後タイムス2月9日「週末点描」より)