日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

未刊の一冊/絵本「花ばぁば」刊行

2018-04-17 09:24:35 | (瑛)のブログ


「マンヒの家」などで知られる韓国の絵本作家・クォン・ユンドクさんの絵本「花ばぁば(原題:꽃할머니)」がついに日本で翻訳出版される。日本軍性奴隷被害者のシム・ダリョンさんをモデルに描かれた絵本は、2010年の出版から紆余曲折を経て日本で翻訳出版されることになった。
※書籍情報はこちら→http://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784907239299

 実はこの絵本、日中韓の絵本作家が集って2007年にスタートした「日・中・韓 平和絵本シリーズ」の一画をなすもので、日本では童心社からの出版が予定されていたが、頓挫していた。

 同社はシリーズの10冊を発行したもののの、「史実とは言えない描写がある」と「花ばぁば」のみ、日本での刊行を渋った。そこでシリーズの中心メンバーだった、絵本作家の田島征三、浜田桂子さんらが出版先を探したところ、一人出版社「ころから」の木瀬貴吉さん(51)が名乗り出た。
 
 「まずは綺麗な絵本だと思い、出版したいと思いました。戦時下で暴力の被害を受けながらも、名乗りでてくれた被害者たちを忘れないでいたい。日本軍慰安婦問題はなかったことにできないのですから。何より、『3ヵ国で同時刊行する』としていた本が日本だけ刊行されない現状が『ふつう』となることを危惧しました」(木瀬さん)

ヘイトスピーチに象徴される日本の排外主義、とくに出版社の責任を問う本作りに力を注いできた木瀬さんだが、絵本の出版は初めて。そこで、インターネットのクラウドファンディングで募金を呼びかけたところ、202人から募金が集まり、出版にこぎつけた。


 「協力者の7割は女性でした。歴史の事実として被害者の存在を受け止め、その痛みを分かちあうための本だと受け止めてくれたのではないか」と予想外の手ごたえを話す。

 「田島さんが『この絵本を一番必要としているのは、若い人たちだ』と言ってくれました。被害者は13歳で連行され青春を人生を奪われたのに、日本ではこの話は中学生にはまだ早いという意見があった。この意見を聞いて、クォンさんは日本の小学校と中学校で読み聞かせをしています。そこで寄せられたのは、『内容に衝撃を受けた。もっと驚いたのは、この事実を知らなかった』という声。若い人たちのために、これからの平和のためにこの絵本を出したい」

 誰かの思いを公にする、「パブリッシャー」を名乗る木瀬さん。嫌韓、嫌中本が棚に並ぶ出版の状況に一石を投じたい、と書店への営業にも精を出す。「貧すれば鈍する。売れるなら節操もなく何でも棚に置くような出版状況を打破したい。この本を置いてみようとトライする本屋さんの気概に期待しています」。書店には4月25日から並ぶ予定。28日にはクォンさんの来日講演も開かれる。

 鮮やかな色使いに、にじむような筆致、詩のような文章…。クォンさんの美しい絵本をぜひ手にとっていただきたい。(瑛)



●クォン・ユンドクさんのお話「『花ハルモニ』と私たちの平和」、スペシャル鼎談(クォンさん、田島征三、浜田桂子さん)

日時:2018年4月28日(土)14:00~
場所:アバコチャペル(AVACOビル2F、地下鉄東西線早稲田駅徒歩5分)
参加費:1000円
問合せ:女たちの戦争と平和資料館(wam)
℡ 03(3202)4633
ジャンル:
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