机の上

我、机の上に散らかった日々雑多な趣味(イラスト・劇画・CG・模型・HP・生活)の更新記録です。

走れメロス

2016-05-25 15:44:00 | 本の読味
「走れメロス」 太宰治 著  

昭和四十二年七月十日発行 昭和五十五年二十五日 二十八刷

新潮文庫 定価 二百四十円 

 表題作を含めて全九篇からなる短編集。
書棚の文庫本にはカバーがかかっている物が多く、本の中身がわからない。
なにげに手にとって取ってポケットに入れたのだが、「走れメロス」。
こいつはハズレだ。
あとがきだけを読んで止めにしようか。年表が付録についているが、眺めただけでも気が滅入る。

 この人、自殺などせずに長生きをして高度成長期のTVの深夜番組にでも出演して、与多話しのひとつでもしてもらいたかった。
それこそO橋K泉あたりと煙草の煙をくゆらせながら当時の今を語ってもらいたかった。
死ぬのなんてM島由紀夫のあとでもよかったのではないだろうか。ねぇ。
K端康成もNーベル賞を取った訳だし。
長生きすればもっともっと悔しい事がいっぱいあるのに・・・・・。
 
 死んでしまって、こちらがいちばん悔しい。
身近なことで言えば亡くなったこの時期、T塚治虫はデビューしていた。
きっと、T塚治虫は勿論のこと生きていれば太宰治の作品も変わっていっただろう。

 ふたりは会って話しをすることが、あっただろうか。
きっとT塚治虫は太宰治が横にいても目もくれず原稿に専念しているだろうし、太宰治は例の丹前姿で手を結び、咥え煙草で窓の外を眺めているのだろう。

 横にいた編集者が業をにやし「おふたりとも御名前がおさむですし・・・」
今度はT塚治虫が窓の外を眺めた。
「おじゃまして、すみません」と、太宰治は帰るためにきびすをかえした。
「や、お茶もだしませんで、すみません」と、T塚治虫はまた原稿に没頭した。
あわてて追いかける編集者。
 
 せめて、それからでもよかったのではないか・・・・。