「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

淳一と多佳子の 悪化 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (39)

2010年10月10日 19時48分37秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ 消化器外科・ 廊下
 

○同・ 処置室

  美和子が 淳一に交換輸血をしている。

  枕元にで世良、 車椅子に乗った多佳子が

  心配そうに見守っている。

世良 「ビリルビンが 上がってしまったのか…

 …」

美和子 「一過性のものかもしれないし、 心配

 しないで」

淳一 「やっと 来るべきものが 来たって感じだ

 ね」

美和子 「当面は、 週一回 交換輸血をして、

 あと ジュンの部屋の蛍光灯を もっと強いもの

 に取り替える」

淳一 「取り替えるなら インバーターにして

 よ」

多佳子 「…… 肝臓も、 取り替えられたら …

 …」

美和子 「絶対 ジュンを死なせたりしないか

 ら」

淳一 「気ィ遣わなくてもいいよ」

多佳子 「そんなこと言わないで!  ジュンく

 ん、 一緒に頑張ろう! (淳一の腕を強く掴

 む)」

  淳一の腕に刺した 針がずれる。

淳一 「いててて !  針が …… !」

多佳子 「あ、 ごめん …… !」

美和子 「大丈夫 ?」

淳一 「いてーな!  死んだらどーすんだ !?」
 

○同・ 外景
 

○同・ 多佳子の病室の窓

  多佳子がベッドで 寝ているのが見える。
  

○同・ 多佳子の病室の中

  咳き込んでいる多佳子。
  

○同・検査室

  美和子が持ってきたサンプルを、 喜多川

  が顕微鏡にセットしている。

世良 「多佳子ちゃんが 肺炎を起こしたんだっ

 て?」

美和子 「免疫抑制剤の影響で 抵抗力が弱くな

 ってるから」

喜多川「でも 移植による拒絶反応を抑えるた

 めには、 免疫抑制剤をやめることはできない

 し」

美和子 「そこが移植のジレンマ ……」

  顕微鏡を覗く 喜多川の顔色が変わる。

世良 「どうですか ?」

喜多川「まずいですね、 膵臓に膿が混ざってる。

 肺炎の菌が 膵臓に巣食ってしまってま

 す」

美和子 「ちょっと見せて ! (顕微鏡を覗く)

 」

喜多川「膵臓が化膿して 腹膜炎を起こしたら

 ……」

世良 「どうなるんです ?」

美和子 「…… 命にも関わるわ ……」

(次の記事に続く)
 


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