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東條英機のメモ公開の報道を読んで

2008-08-16 00:23:12 | 日本近現代史
 12日の『朝日新聞』夕刊1面に「東条元首相 直筆メモ」との見出しの記事が載った。
 (記事その1)(その2


《1945(昭和20)年8月10日から14日にかけ、東条英機元首相が書いた直筆メモが、国立公文書館(東京都千代田区)から公開された。無条件降伏すれば国民が「軍部をのろう」とし、天皇制を中心とした「国体護持」が受け入れられないなら「敢然戦うべき」と戦争継続を昭和天皇に訴えた様子がうかがえる。

 太平洋戦争開戦時の首相だった東条氏の終戦直前の言動は、寺崎英成御用掛らによる「昭和天皇独白録」などで断片的に伝えられるだけで、詳細を補う貴重な資料となる。

 メモははがき大の用紙30枚に日付順に鉛筆で書かれていた。国体護持を条件に連合国側のポツダム宣言の受け入れを御前会議が決めた10日に始まる。すでに首相を辞めていた東条氏を含む首相経験者らは重臣会議で経緯を説明され、意見を求められた。「メモ魔」の異名をとる東条氏は、天皇に上奏したとする内容を「奉答要旨」として細かく残していた。》


 日経を除く全国紙の紙面を見てみたが、メモの本文が載っている朝日の記事が一番詳しい(アサヒ・コムにはメモの本文はなかった)。これだから朝日からは目が離せない。産経は13日朝刊に掲載。読売には見当たらなかったと思ったが、今YOMIURI ONLINEで調べると掲載されているので、私が見落としたのかもしれない。

 NIKKEI NETの記事によると、筆跡が一部異なるという。以下記事全文。


《東条元首相メモ公開 直筆、一部筆跡異なる
 国立公文書館(東京・千代田)は13日、太平洋戦争開戦時の首相、東条英機・陸軍大将が終戦直前の1945年8月10日から同14日にかけて記したメモを公開した。本人の直筆とみられるが、筆跡が異なる個所も含まれているという。

 公文書館によると、メモははがき大の用紙約30枚に日付順に鉛筆で書かれていた。「敵の法廷に立つごときことは日本人として採らざるところ」と自決の覚悟を述べた個所などは、これまでに判明している資料との比較などから東条元首相の直筆とみられるという。一方、ポツダム宣言の条項について記した12日の記述は、他とは筆跡が異なっていた。

 メモは極東国際軍事裁判(東京裁判)で東条元首相の弁護人を務めた清瀬一郎氏が法務省に寄贈した裁判資料の中にあり、99年に同省から公文書館に移管された。メモを打ち直したとみられるタイプ版も含まれていた。》


 12日の夕刊各紙に載っているのに、NIKKEI NETの記事には13日に公開したとある。12日の記事はリークで、13日に正式発表したということか。
 筆跡が異なる点について、朝日の紙面では続報はなかった。ただ、その12日のメモの本文は紙面では丸々省略されている。

 東條がポツダム宣言受諾に反対し、徹底抗戦を唱えたことはよく知られている。
 このメモの内容から読み取れるのはそうした東條像そのままなのだが、それが直筆のメモにより彼の本心であったことが裏付けられた点で意義があるということなのだろう。

 メモの文中、印象深い箇所を挙げておく(難読字の読みがなが紙面には掲載されているが、一部を除き省略)。


 8月10日に天皇に奏答した内容の要旨の一部。ポツダム宣言受諾について、

《皇位確保、国体護持に就ては当然にして、之れをしも否定する敵側の態度なりとせば、一億一人となるを敢然戦ふべきは当然なり。而して統帥大権を含む統治大権は毫末も敵側に触れしむべきに在らず。又、第一線皇軍将兵は堅く戦勝を信じ、現に唯今でも勇戦敢闘、一死を顧みず死に就て居り。既に幾多の犠牲者は喜で大義に殉じつつ在り。又、内地に於て戦災犠牲者は多数に上り、皆、国家発展の礎として其の苦労を忍びつつ在り。廟堂の処置、之れ等の犠牲を犬死に終わらしめざる如く切望に不堪(たえ)ず。》


 「一億一人となるを敢然戦ふべきは当然なり」
 映画「海底軍艦」の「戦争きちがい」という台詞を思い出した。

 「之れ等の犠牲を犬死に終わらしめざる如く切望に不堪ず」と言われてもなあ。
 だったら、勝ってみせろよ。

 もっとも、東條は、降伏して生きながらえるよりも、「大義に殉」ずることの方が価値があると考えていたフシがある。
 

《「東亜の安定を確保し、世界平和に寄与する」ことは、自存自衛を確保せんとすること共に、本戦争の目的なることは宣戦の御詔勅に明示せられたる所にして、大東亜宣言の主旨、又、之に発す。(略)然るに若し、現戦局の現在に捕はれ、御蔵の火のみに捕はれ、大東亜諸民族の幸福安寧を顧みるの処置に欠くる所あらんか、大東亜諸民族は永ごうに帝国をぶべつするのみならず、大東亜戦争も結局は君名の下、自己の便宜に出発せるものなりとの深き印象を与え、帝国の道義其のもの迄も滅ぶるに至る。此の点、深く思いを至されんことを願て止まず。》


 対英米蘭戦においては、彼の言う自存自衛こそが本来の戦争目的だった。経済封鎖でどうしようもなくなったから戦争に踏み込んだのであって、大東亜宣言など、後付けの理屈に過ぎない。まさに、「自己の便宜に出発せるもの」だった。
 しかし東條は、おそらく本心から、このようなフィクションを信じていたのだろう。


 8月13日。

《戦ひは常に最後の一瞬に於て決定するの常則は不変なるに不拘(かかわらず)、其の最後の一瞬に於て尚ほ、帝国として持てる力を十二分に発揮することをなさず、敵の宣伝政略の前に屈し、此の結末を見るに至る。(略)もろくも敵の脅威に脅へ、簡単に手を挙ぐるに至るが如き国政指導者及国民の無気魂なりとは夢想だもせざりし処、之れに基礎を置きて戦争指導に当りたる不明は、開戦当時の責任者として、深く其の責を感ずる処、上御一人に対し、又、国民に対し、申訳なき限り。願くは今後の国民諸君、降伏に依りて来るべき更に大なる苦難を忍びに忍び、他日の光栄ある帝国建設に努められんことを伏して願て止まず。涕泣謂ふ処を知らず。》


 簡単に降伏する指導者や国民が悪いのだと言わんばかりである。勝てなかった責任、勝てないことが見通せたにもかかわらず開戦に踏み切った責任をどこまで自覚しているのか。
 そして、この期に及んでもまだ「最後の一瞬」とは。
 「最後の一瞬」まで抵抗したら、わが国は滅んだかもしれない。昭和天皇や鈴木貫太郎の決断は正しかった。


 8月14日。

《赤松大佐へ
一、(略)国民の難きを忍び、皇軍将士の神国日本の不滅を信じつつ大義に殉ぜる犠牲も遂に犬死に終らしむるに至りしことは、前責任者として其の重大なる責任を痛感する処、陛下は元より列代皇祖皇宗の御遺霊に対し奉り、申訳なき次第なり。(略)
二、事茲に至りたる道徳上の責任は、死を以て御詫び申上ぐ一点丈(だけ)、今日、余に残る。而して、其の機は今の瞬間に於ても其の必要を見るやも知れず、決して不覚の動作はせざる決心なり。(略)陛下が重臣を敵側に売りたるとのそしりを受けざる如く、又、日本人として敵の法廷に立つ如きことは、日本人として採らざる処、其の主旨にて行動すべし。》


 だったらさっさと死ねよ。
 阿南惟幾陸相は8月15日に自決した。神風特攻隊の生みの親とされる大西瀧治郎は16日に自決した。
 東條が自殺を図ったことはよく知られているが、それは、9月11日、GHQの指令により戦犯として逮捕されることを拒んでのものである。終戦からひと月近い。それまで東條は何をしていたのだろうか。
 私は、東條はもっと早くに死ぬべきだったと言いたいのではない。死ぬことにより敗戦の責任がとれるとも思わない。
 ただ、「生きて虜囚の辱(はずかしめ)を受けず」で著名な戦陣訓を陸相として示達し、またこのメモでも自決をうたっている東條が、実際に自決を試みたのは逮捕が迫ったまさにその時であったというのは、どういうことなのか理解に苦しむ。戦犯として追及されることなどポ宣言受諾が決まった時点で明らかだったことではないのか。

 それにしても、何故このメモはこの時期に公表されたのだろう。
 8月で、先の戦争への関心が深まる時だからというのはわかる。しかし、何故これまで公表されてこなかったのだろうか。そして、何故今になって公表されたのだろうか。
 昨今一部に見られる、行き過ぎた東條英雄視に冷水を浴びせたつもりなのだろうか。 
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