ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅の豆知識「大名庭園」

2017年07月31日 | 旅の豆知識
 近年、日本の近世にあたる江戸時代に関心を向ける人も多くなってきていますが、『テーマのある旅』として、江戸時代の跡を追いかけてみるのも、また面白いものです。その中で今日は、「大名庭園」について見てみたいと思います。
 大名庭園は、日本各地に残されていますが、日本三名園(偕楽園、兼六園、後楽園)や栗林公園、小石川後楽園、六義園などがその代表です。これらは、昔の大名たちが諸国から名木や名石を取り寄せて、作庭されたものも多く、日本の美意識が凝縮されているとも言われています。必ず、どこかに茶室も作られていますので、休憩がてら抹茶を立ててもらって、飲茶しながら庭園を愛でてみるのも良いかと思います。
 大名庭園は、大規模な回遊式庭園が多く、テーマを持って作庭したものも結構あります。東海道五十三次の景勝を模したといわれる水前寺成趣園、近江の琵琶湖をかたどった八景池をメインにした中津万象園、中国湖南省の洞庭湖にある玄宗皇帝の離宮庭園を参考にしたという玄宮園、尾張藩ゆかりの木曽の寝覚めの面影を写したともいわれる名古屋城二之丸庭園などです。このようなテーマを念頭に庭園を巡ってみても面白いものです。日本の美の一つの完成形を見る思いもします。

〇「大名庭園」とは?
 江戸時代の幕藩体制の下で、それぞれの藩の大名が領地内や江戸屋敷等に築造した庭園で、各藩がお互いに競争したことにより、造園技術が発達し、各地に名園を生み出しました。
 これらの庭園は、大規模なものも多く、回遊式庭園がたくさん残されています。日本の庭園の歴史を見るうえで極めて重要なものです。

☆「大名庭園」のお勧め

(1)偕楽園<茨城県水戸市>
 日本三名園の一つで、千波湖に隣接していて、特に梅で名高い庭園です。江戸時代後期の1841年(天保12)に、9代水戸藩主徳川斉昭 (烈公) が、中国の古典である『孟子』の「古の人は民と偕(とも)に楽しむ、故に能く楽しむなり」という一節からとって命名し、そういう趣旨で造営させました。 園内には、約100品種・3,000本の梅が植えられていて、早春には多くの観梅客でにぎわいます。1922年(大正11)には、国の史跡及び名勝に指定されました。

(2)六義園<東京都文京区>
 江戸時代中期の1695年(元禄8)に、5代将軍徳川綱吉の側用人柳沢吉保が綱吉から拝領した土地に、約7年をかけて完成させた大名庭園です。約8万 7800m2の回遊式築山池泉庭園で、土地に土を盛って丘を築き、千川上水を引き入れた池を中心に、中島を大きくつくり、巨石で蓬莱石組を構成し、さらに岩島を造り、池畔にはアシを繁茂させていました。名前の由来は、『詩経』の六義からきていて、吉保自身の命名したものとのことで、徳川5代将軍綱吉もしばしば遊んだそうです。明治維新以後,岩崎弥太郎(三菱創設者)の所有となり,1938年(昭和13)に、岩崎家から東京市に寄贈されました。1953年(昭和28)に、国の特別名勝に指定されています。春のしだれ桜、秋の紅葉など四季折々の風情があり、とても良い庭園です。

 
(3)小石川後楽園<東京都文京区>
 東京ドームのそばにある江戸時代の大名庭園です。江戸時代前期の1629年(寛永6)に、水戸藩水戸徳川家初代藩主徳川頼房が、江戸の屋敷内に庭の造営に着手し、2代藩主徳川光圀に引き継がれ、「後楽園」と命名して完成させました。庭園は池を中心にした回遊式築山泉水庭園で、随所に日本や中国大陸の名所の名前をつけた景観を配しています。江戸時代大名庭園の初期のものとして貴重なことから、1923年(大正12)に国の史跡及び名勝に指定され、1952年(昭和27)には、特別史跡及び特別名勝に指定されました。現在は、約7万平方mもの広大な都立の庭園として公開されていて、都民に親しまれています。

(4)兼六園<石川県金沢市>
 日本三名園の一つで、加賀藩5代藩主・前田綱紀が、別荘を建てその周辺を庭園としたのが始まりとされています。 その後、加賀藩前田家の歴代藩主により長い歳月をかけて形作られ、現在のような一大回遊式庭園となったのは1851年(嘉永4)とのことです。廃藩置県後の 1874年(明治7)より、金沢市民に開放され、1922年(大正11)、国の名勝に指定されました。そして、1985年(昭和60)には、名勝から特別名勝へと格上げされています。特に、徽軫灯籠(ことじとうろう)付近から霞ヶ池を見た景色が有名です。

(5)玄宮園<滋賀県彦根市>
 井伊家旧下屋敷の大名庭園で、彦根藩4代藩主直興が、江戸時代前期の1677年(延宝5)に造営しました。唐の玄宗皇帝の離宮をなぞらえて造ったので、この名がついたと言われています。大池泉回遊式庭園で、魚躍沼(ぎょやくしょう)と呼ばれる大きな池に突き出すように建つ臨池閣(りんちかく)、凰翔台(ほうしょうだい)といった建物、蓬莱四島になぞらえたという4つの島、鶴鳴渚(かくめいさぎさ)、竜臥(りゅうが)橋などなど、樹木や岩石が巧みに配置され、背景に国宝彦根城天守閣がうかがえる様は、見事というほかありません。初夏にはハナショウブ、秋には紅葉と、四季折々の風情が、訪れる人の目を楽しませてくれます。1951年(昭和26)に、楽々園と併せて、庭の敷地約28.700平方mが名勝に指定され、テレビの時代劇や映画のロケ地としても度々使われているとのことです。

(6)二条城二之丸庭園<京都府京都市中京区>
 1953年(昭和28)に、国の特別名勝に指定された日本を代表する大名庭園で、江戸時代前期の1602年(慶長7)~1603年(慶長8)頃に、二条城が造営されたときに作庭されました。小堀政一(遠州)の代表作とされる桃山様式の池泉回遊式庭園で、神仙蓬莱の世界を表した庭園と言われ,別名八陣の庭とも呼ばれています。池には3つの島(蓬莱島、亀島、鶴島)が浮かび、4つの橋を併せ持ち,池の北西部には、二段の滝があります。二の丸御殿大広間上段の間(将軍の座)、二の丸御殿黒書院上段の間(将軍の 座)、行幸御殿上段の間(天皇の座)・御亭の主に三方向から鑑賞できるように設計されていました。明治時代以降に、宮内省に所管されてからは5回以上改修が行なわれ、離宮的・迎賓館的な城として利用されることになります。1939年(昭和14)に、宮内省が二条離宮を京都市に下賜し、それから、一般公開されるようになりました。これ以外にも城内には、明治時代に造られた本丸庭園、そして昭和に入ってから造られた清流園があります。四季折々に花が咲き、季節を愛でるにもよいところです。また、二条城は1994年(平成6)に、「古都京都の文化財」の一つとして、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されています。

(7)岡山後楽園<岡山県岡山市北区>
 岡山藩2代藩主・池田綱政の命によって、江戸時代中期の1687年(貞享4)に着工し、14年の歳月をかけ1700年(元禄13)に完成した、元禄文化を代表する庭園で、国の特別名勝に指定されています。園内を一巡したのですが、さすがに日本三名園の一つと言われるだけにすばらしいのです。総面積は133,000平方mと広大な、池泉回遊式の大名庭園で、後景に岡山城天守閣を配する造りがみごとです。所々で立ち止まりながら、写真を撮りつつ、じっくりと見て回りました。

(8)栗林公園<香川県高松市>
 讃岐高松藩の下屋敷として利用されていた回遊式庭園で、現在は県立公園となっています。元々は、江戸時代の高松藩初代藩主松平頼重の別邸でしたが、五代にわたり、100年以上をかけて造営されて、江戸時代中期の1745年(延享2)、5代藩主松平頼恭の時に庭園が完成しました。紫雲山を借景とし、6つの池(西湖、南湖、北湖、涵翠池、芙蓉池、潺湲池)と13の築山(飛来峰、小普陀、飛猿巌など)を配した回遊式大名庭園で、面積約 75万 m2の広大なものです。明治維新後荒廃していましたが、1875年(明治8)には県有地となり、1885年(明治18)には県立公園として一般公開されるようになりました。1922年(大正11)に国の名勝に指定され、1953年(昭和28)には、特別名勝に格上げされています。また園内には、茶亭や讃岐民芸館、商工奨励館もあります。

(9)水前寺成趣園<熊本県熊本市中央区>
 面積約7万3千平方mと広大な大名庭園で、水前寺公園は通称です。熊本藩細川氏の初代藩主細川忠利が、そこにあった水前寺を他に移し、江戸時代前期の1636年(寛永13)頃から造営した「水前寺御茶屋」が始まりでした。その後3代にわたって築造が続き、細川綱利のときに泉水・築山などが作られ、現在のような姿になったのです。池泉回遊式庭園で、東海道五十三次を縮景したものとして有名でした。しかし、中心となる御茶屋「酔月亭」は1877年(明治10)の西南戦争で焼失し、泉水・築山なども荒廃してしまったのです。その後有志によって復興され、一般にも開放されるようになり、1912年(大正元)には、細川幽斎ゆかりの「古今伝授の間」が、京都から移築復原されました。1925年(大正14)から水前寺公園の名で市民に親しまれ、1929年(昭和4)には、「水前寺成趣園」として、国の名勝および国の史跡に指定されたのです。

☆「大名庭園」一覧

・秋田藩主佐竹氏別邸庭園(秋田県秋田市) 久保田藩 国名勝
・酒井氏庭園(山形県鶴岡市) 鶴岡藩 国名勝
・南湖公園(福島県白河市) 白河藩 国史跡・名勝
・御薬園(福島県会津若松市) 会津藩 国名勝
・紅葉山公園(福島県福島市) 福島藩
・偕楽園(茨城県水戸市) 水戸藩 国史跡・名勝 日本三名園
・楽山園(群馬県甘楽町) 小幡藩 国名勝
・浜離宮恩賜庭園(東京都中央区) 国特別名勝
・旧芝離宮恩賜庭園(東京都港区) 国史跡・名勝
・小石川後楽園(東京都文京区) 水戸藩 国特別史跡・特別名勝
・六義園(東京都文京区) 郡山藩 国特別名勝
・清澄庭園(東京都江東区) 関宿藩 都名勝
・清水園(新潟県新発田市) 新発田藩 国名勝
・兼六園(石川県金沢市) 加賀藩 国特別名勝 日本三名園
・金沢城玉泉院丸庭園(石川県金沢市) 加賀藩
・養浩館庭園(福井県福井市) 福井藩 国名勝
・名古屋城二之丸庭園(愛知県名古屋市) 尾張藩 国名勝
・徳川園(愛知県名古屋市) 尾張藩
・玄宮楽々園(滋賀県彦根市) 彦根藩 国名勝
・二条城二之丸庭園(京都府京都市) 国特別名勝
・養翠園(和歌山県和歌山市) 紀州藩 国名勝
・和歌山城西之丸庭園(和歌山県和歌山市) 紀州藩 国名勝
・旧赤穂城庭園(兵庫県赤穂市) 赤穂藩 国名勝
・後楽園(岡山県岡山市) 岡山藩 国特別名勝 日本三名園
・衆楽園(岡山県津山市) 津山藩 国名勝
・近水園(岡山県岡山市) 足守藩 県史跡
・縮景園(広島県広島市) 広島藩 国名勝
・嘉楽園(島根県津和野町) 津和野藩
・徳島城表御殿庭園(徳島県徳島市) 徳島藩 国名勝
・栗林公園(香川県高松市) 高松藩 国特別名勝
・中津万象園(香川県丸亀市) 丸亀藩
・松山城二之丸史跡庭園(愛媛県松山市) 伊予松山藩
・天赦園(愛媛県宇和島市) 宇和島藩 国名勝
・松涛園(福岡県柳川市) 柳河藩 国名勝
・旧金石城庭園(長崎県対馬市) 対馬府中藩 国名勝
・石田城五島氏庭園(長崎県五島市) 福江藩 国名勝
・水前寺成趣園(熊本県熊本市) 熊本藩 国史跡・名勝
・仙巌園[磯庭園](鹿児島県鹿児島市) 薩摩藩 国名勝

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