満月と黒猫日記

わたくし黒猫ブランカのデカダン酔いしれた暮らしぶりのレポートです。白い壁に「墜天使」って書いたり書かなかったり。

『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』

2008-06-26 02:12:01 | 映画

皆様ごきげんよう。何故か朝から羞恥心の新曲生バージョンを見てしまい、微妙だった黒猫でございます。めざましTVでやってたんだもんよ・・・。基本朝のニュースはこの局じゃないんですが、適当にチャンネル変えてたら出てきてました。どうなの、朝から。


今日は結構今更レビューの第一弾、『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』を。
東京での公開は終了しました・・・と思ったら、6/28より追加上映だそうです!あらまあ。結構入りがよかったのかな。ご興味のある方は上記リンク先公式サイトを参照して下さい。

1973年、シカゴの病院で一人の老人が亡くなった。老人の名はヘンリー。姓についてはダーガーとする者、ダージャーだと言い張る者があり、どちらなのかはっきりしない。それほどまでにひっそりと生きた人生だった。

シカゴ市内の病院で清掃員の仕事をしていたヘンリーは、人付き合いも極めて少なく、友人と呼べるほどの人もほとんどいなかった。彼の死後、借りていた部屋の大家で工業デザイナーだったネルソン夫妻が部屋を片付けようとしてみると、部屋の中から夥しい数の絵画と文章が発見された。
「非現実の王国で」と題された一連の絵画と物語は、実に18000枚以上にわたり、架空の王国を舞台に「ヴィヴィアン・ガールズ」と呼ばれる少女たちが子供奴隷の解放を目指して戦う戦争の記述だった。
たったひとりで人知れず膨大な王国を紡いだヘンリーの人生と、彼の王国の謎に迫る。


1973年に亡くなったアメリカのアウトサイダーアーティスト(美術教育を受けなかった芸術家)、ヘンリー・ダーガーを巡るドキュメンタリー映画です。

どこで知ったか忘れてしまいましたが、わたしはこの人の絵が気になって、昨年開催された絵画展にも行ってきました。

周囲の人と交流せず、ひとりきりで驚くべき量の創造を行ったその背景にも興味がありましたが、今回は「非現実~」の内容がもっと詳しくわかるのかな、とちょっと期待していました。残念ながらその点ではあまり新しいことはわかりませんでしたが、今回は映画ということで、ヘンリーの絵画を部分的に切り取ってアニメーションにするという試みがあり、影絵のようなぎくしゃくした動きが却って新鮮でした。

専門の教育を受けていないので、デッサンとかそういう面からしたら評価されないのかもしれませんが、何枚も横につなげた大きな紙の両面いっぱいに描き込まれた絵には不思議な魅力と迫力があります。ヴィヴィアン・ガールズはいつもカラフルな可愛い服を着て(あるいは何も着ないで)、画面いっぱいに走り回ります。

絵にしろテキストにしろ、あれほどの量を生み出すのにどれほどの時間がかかったことか。好きなことなら寝食を削って続けられるとはよく言いますが、この人はまさに己が身を削って創作を続けたようです。きっと自分というものの大部分を非現実の王国の創造に捧げたんでしょうね。
それでいて誰にも見せるあてがなかったというのがなんとも切ない。でもきちんとタイプ打ちされ製本されたテキストや「我が人生の歴史」というテキストも発見されており、誰かに見せたいという気持ちもあったのかもしれません。
でも世間的に名の知れた芸術家というものは、その人生も事細かに研究されてしまうものなので、ヘンリーはそれには耐えられなかったんじゃないかなとも思います。でももしも誰かに見いだされて、画材代を気にせず創作できる環境にあったらどんな作品を作ったかなあ、とも思ってしまいます。その場合、多分べつの「非現実の王国」になっていたでしょうけど。

ヘンリーは不幸な家庭環境から教育の機会を奪われ、やむなく逃亡したために、その後の職業選択の幅も限られてしまい、貧しい暮らしを送らざるを得なかったんですが、こういうことって知られていないだけで結構あったのかもしれません。あまりメディアの発達していなかった時代って結構すごいことが誰にも知られずあったと思います。

なんかあまり映画のレビューじゃなくて申し訳ありません。わたしはとても興味深く観ましたが、ヘンリー・ダーガーを全く知らない人にはあまりおすすめできないかも。でも全く知らない人にもわかりやすい構成だったと思います。

映画の中で印象的だったのは、ヘンリーは家主夫妻が飼っている犬を気に入っていて、「犬を飼うのに一月いくらぐらいかかりますか」と質問してきたので家主の奥さんが「5ドルくらいかしら」と答えると、落胆した様子で「わたしには高すぎます」と言っていた、というくだりです。

・・・なんかすごくせつない。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おはようございます | トップ | ie直りました »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事