忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

どみにおんVSむさし

2020年11月28日 | 忘憂之物
いまから数年以上前の2013年、独立選挙監視団体「ゴロス」がロシア法務省から、罰金50万ルーブル払えと言われた。容疑は非政府組織を規制する法律違反。同団体はその前年に行われたロシア大統領選やら下院選挙などにおける不正投票、不正行為を指摘し、モスクワなどで数百人規模の反政府デモを扇動したということだった。

ここは日本や米国ではなくロシアだ。外国からの資金援助で帝政ロシアを批判するとはよい度胸だ、ということで他のNGOも一絡げ、活動停止を含めた施設閉鎖が9千件以上、5610団体は罰金刑になった。

もちろん、大統領選もプーチンが4500万票以上獲得で圧勝したが、これにも欧州安全保障協力機構(OSCE)から派遣された国際監視団が「プーチン氏に有利な条件だった。選挙不正はあった」と結論付けて報告した。当時のオバマ政権下の米国務省、ヌーランド報道官もロシア政府に不正の調査をするように声明を出したが、当のプーチンは「不正はあった。解明する必要はあるが再投票はしない」とさすがの対応だった。だからなんだ?勝手にしろ、ということだ。

最近、久しぶりにネットを見ていたら、なにやら「ドミニオン」とやらが有名だ。選挙システムに悪さができるというが、それならなんの日本にも「ムサシ」がある。

そのむかし、私も紙幣を計数するのに使用していた優れモノだが、2012年くらいから投票用紙の自動集計機も販売しているそうで、あの3年と少しの「悪夢の民主党政権」が終わってしまったのはコレの所為という「陰謀論」もあった。あの籠池氏も外国特派員への会見でムサシいうのがありますねん、これ不正が行われる恐れがありますねん、この会社の筆頭株主は安倍晋三でおまんねん、とか言っていた。

それなら性能は日本印だ。ドミニオンに負けず劣らず、ウソかホントか、やろうと思えば候補者の名前を入れ替えたり、消したり足したりとか朝飯前、他にもいろいろと便利な機能付きなんだろう。そんなムサシのお陰様で、その後の安倍長期政権は負け知らずだった、ということらしい。そんなに気に入らなければ裁判でもすればよかったのにと思うが、とくに騒いでもいなかった。

まあ、あってはならないことではあるが、どこの国でも選挙不正は起こり得るものでめずらしくもない。やり口もいろいろとある。

そういえば日本の2013年参院選でも香川県の事件があった。

自民党の衛藤氏の投票数が高松市でゼロだった。びっくりした支持団体が訴えたら高松市の選挙管理委員会、委員長をはじめ6名が逮捕された。聞けば集計済みの白票300以上を再度集計し、衛藤氏の名を書いた投票用紙を同じ数ほど段ボール箱に入れて処分していた。

当然ながらミスでした、で済む話でもなく、問い詰めたら過去にもやっていた。手口は幼稚にも投票用紙に書き込んだり、シュレッダーしたり、無効票の段ボールに入れたり。

実に微笑ましい。選挙に悪戯して執行猶予とはまったくお似合いだ、などと懐かしく思いながら、いま話題のアメリカ大統領選挙をみると、得票数が可愛らしくないことになっている。

バイデンの得票数が史上最多数とかで8千万票オーバー。現職トランプが前回より1千万以上乗せても敵わない。凄まじい得票数だ。先ず、ここに驚く。

2016年のヒラリーが6500万も前職オバマと並んでびっくりしたものだが、日本の天気予報みたいに観測史上最高の大雨です、史上最強クラスの台風が、みたいで派手になったもんだ。猪瀬元都知事が450万票くらいで「ギネスに申請するか」と調子に乗っていたが、バイデンは8千万票超ならギネス認定されるレベルだ。

そのむかし、小浜市ではオバマガールがオバマ音頭だった。温泉行く途中に小浜駅付近にて遊んだ記憶があるが、2期目の終盤ながら、駅周辺はまだオバマグッズで溢れていた。日本のメディアもオバマブームで、政治に興味のない人らでもいえすうぃきゃん、くらいは言っていた。日本では「オバマのおかげです」と仕事も増えたモノマネ芸人もいた。史上初の黒人大統領。そのメディアでの露出度は思い出すまでもなかった。そのオバマよりも1500万票以上重ねるとは、私が知らないだけでバイデンブームもあったに違いない。モノマネも流行ったんだろう。私は知らないが、すごい人気者だったと察する。

比して現職大統領はダメ。相変わらず米国は元より、日本のメディアからも嫌われているらしく、連日、テレビでは「負けたのに潔くない」と叩かれていた。見ていて恥ずかしい、みっともない、アメリカの恥にならないか、と叩きたい放題。ニュースバラエティ番組の選挙速報でも「バイデン優勢」にガッツポーズの露骨なMCもいた。会見映像などの吹き替えは濁声で高圧的。言葉遣いも「彼らは」でいいところを「やつらは」と吹き替えられる。安倍前総理が顔色を暗くされたり、党首討論の答弁まで切り貼りで印象操作されたり、TBSがやった「ゲリラ活動?」のテロップと安倍前総理の顔写真を同時に流す、などの悪意に似る。

相変わらずのテレビで安心したが、ところで2016年の勝利した大統領選挙でも、トランプは「不正があった。操作されている」と何度も言っているが報道しないのはなぜなのか。どうせなら「勝っても負けても文句言うのか」と叩けばいいのにと思う。それともナニか理由があるのか。

前回の大統領選。日米メディアは今回と同じく、選挙前からヒラリー優勢、トランプは一部の熱狂的支持者がいるが多数ではない、とし続けていた。やる前から圧倒的にヒラリーだと。思わず、候補者だったトランプは投票日直前の10月、勝っても負けても満足だ、とコメントしている。さすがに相手は夫が元大統領。苦戦するのは共和党の選挙対策本部も覚悟の上で「後れを取っている、でもあきらめない。最後には勝つ」と述べている。

アメリカの大手メディアは先ずは「トランプは出馬すらしない」と言っていた。それから共和党候補者になれない、だった。当時のオバマも小馬鹿にしていた。オバマ政権最後の記者会見後の夕食会、トランプが欠席だとして「ツイッターで悪口を書くのに忙しいんだろう」と記者らと笑っていた。「エア・フォース・ワン」が好きだ、と言ったトランプをして、ハリソン・フォードは「あれは映画の話なんだ、ドナルド。まあ、でも彼にはわからないか」みたいにおちょくっていた。日本でも人気のアメリカ人俳優、歌手、政治家が口を揃えて「トランプはダメ」と明言していた。それを連日、日本のメディアが追いかけて報じた。

2016年.トランプは選挙前も勝った後も「不正」を言っていた。オバマはトランプ(候補)の発言は危険だと批判していた。トランプが選挙は仕組まれている、と言えば「泣き言はやめろ」とホワイトハウスの会見で嘲った。共和党の内部からも擁護できない、民主主義を否定してはならない、と聞こえていた。いろいろと思い出していくに既視感を覚える。

いま、ネット論壇が喧しい。陰謀論はダメだとか、事実がどうしたこうした、エビデンスがどうの、フェイク動画がどうしたこうした、スタンスがどうだこうだ―――そんな口角に泡つけてやらんでもよろしい。そもそも、人様をして無知蒙昧、我こそは英邁メディアであるぞ、惰眠を貪りアベ政権を永らえさせた愚民共よ、我が社説を読んで大いに学ぶがよい、と言い出す入り口はそのへんにある。注意せねば迷い込む。

これはたいへんだ、世の中の知らない人に教えないと!という危機感からの使命感は危うい。ややもするとマスクしろで掴みかかる危うさに通ずる。

自分が考えることなどあくまでも自分の常識の範疇。ヘンだと思えばヘンだと思うだけのことだ。またその「常識」も単純明快で、要するに天網恢恢疎にして漏らさず、老子だ。ズルをしないとか、騙さないとか、盗まないとか、子供にわかるようになっているが、紀元前4世紀から教えてもらってもできない国もある。無論、その一味もいる。

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