忘憂之物

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             渋沢栄一

大島さん涙のV「この景色をもう一度」…総選挙(読売新聞)>2012.6.7

2012年06月07日 | 過去記事

    



大島さん涙のV「この景色をもう一度」…総選挙(読売新聞) - goo ニュース

<アイドルグループ、AKB48の新曲を歌うメンバーをファン投票で決める「AKB48 27thシングル 選抜総選挙」の開票イベントが6日、東京・千代田区の日本武道館で開かれ、大島優子さん(23)が10万8837票を獲得し、トップとなった。大島さんの1位は2年ぶり2回目。大島さんは、「この景色をもう一度見たかった」と涙ながらに語った。

 投票総数は、昨年より約21万8000票多い138万4122票。上位16人は、27枚目シングルのメーン曲を歌う。16位までの順位は次の通り。〈1〉大島優子〈2〉渡辺麻友〈3〉柏木由紀〈4〉指原莉乃〈5〉篠田麻里子〈6〉高橋みなみ〈7〉小嶋陽菜〈8〉板野友美〈9〉松井珠理奈〈10〉松井玲奈〈11〉宮澤佐江〈12〉河西智美〈13〉北原里英〈14〉峯岸みなみ〈15〉横山由依〈16〉梅田彩佳>





最初に書いておくと、私はこの「AKB48」とやらにまったく興味がなく、個別の顔や名前の識別も不可能、今回の「総選挙」とやらで第一位になったメンバーを明日、倅が我が家に連れてきて「彼女です」と紹介されたとしても気付かない。ふらりと立ち寄った「AKB」という名のラウンジで、そこにホンモノのメンバーが勢揃い、酒席の真ん中に私がいたとしても、次に日には「飲み過ぎた」という後悔しか残らない。

ただ、その「総選挙」とやらの当日、職場では凄く盛り上がっていたことは知っている。私も何度か問われた。「今日、誰が勝つと思う?」とのことだが、知ったかぶりの私は「十朱幸代」と答えて失笑を買う始末だった。恥を忍んで問うてみれば、それはいまをときめくアイドルグループであり、その何十人か何百人か知らんが、メンバーの「人気投票」のようなモノが行われるのだと聞いた。テレビも生中継するし、その前後も話題は沸騰していた。NHKもやった。私が見ているくらいだから、コレはテレビで相当やったと察する。

聞きかじりの知識で恐縮だが、それは「第一位」の栄誉に輝いたメンバーが、次回作の「センター」にて歌って踊る権利を得るのだとか。ファンの人気投票にて選ばれたメンバーが問答無用、人気商売における実力の証・人気というモノで有無を言わせず「中心」に座ることだと理解した。それはとても合理主義的、且つ、民主主義的なこと、結構なことだ。

また、更に聞いてみれば、その「投票用紙」は販売される「CD」に付属するという。つまり、それを買わなければ投票権はないし、逆に言えば資本力を活かすことで「ひとり1票」という原理原則も破壊できるという、まことに自由経済的、且つ、資本主義的なルールもあった。「1票の格差」など鼻で笑う如き現実主義を見た。とても面白いと感じた。

それから興味を持って話を聞いたり、他の職員らが中継を見る様子を観察することも出来た。50代半ばの女性職員も夢中、40代半ばの男性職員も没頭、オノレの贔屓するメンバーがいったい何位に収まるのか、オノレの予想はどれほど当たっているのかと、施設の年寄りも放ってテレビにくぎ付けとなる。そして、私だけは画面ではなく、彼ら彼女らの言動にこそ注目していた途中、職員のひとりの携帯が鳴る。メンバーの誰かが何位かになった瞬間、それはまさにリアルタイムで「喜びを共有し合う」とか、自分の予想が当たったことを「誇らしく語る」内容の電話であった。

私はこのとき、私が通う職場には、これほどの「AKBファン」がいたのかと驚愕した。先日行われた施設の「お楽しみ会」では、中年女性職員らによる「KARA」の歌と踊りがあった。その日から偶然、連続して年寄りが数人死んだが(実話)、マトモに見せつけられた私も糖尿病と高血圧症が悪化した。50代を少し過ぎた女性職員が、臀部を微妙に振動させながら近寄って来たとき、私の愛想笑いは限界を超え、額の前に拳を重ねて目を閉じ、静かに彼女が去って行くのを待ったものだが、彼女らは「KARA」のファンでもあり「AKB」のファンでもあったのか、なるほど、コレが日韓友好なのかと得心した。

それから心配になった。京都府の人権擁護委員会がいまにもドアを蹴り開け、ふりーず!!すとっぷ!げんぱつ!という怒声と共に雪崩れ込んでくるのではないかと怯えた。

「女性」「人気投票」「順位」「勝敗」・・・・人権のブーワードが乱れ飛んでいた。同じグループに属しながら、そこに「順位」が発生する。しかも「人気投票」である。コレは差別の温床になると気付いたとき、私は窓の近くを飛んでいた薮蚊が米軍の探査機に感じられた。鼓動が速くなり、呼吸は荒くなった。気を紛らわそうとするも、テレビ画面ではうら若き乙女らが「順位」を示され、勝った負けたと泣いている。このままではよろしくない、と思い、急いで帰宅しようと思ったが、なんと、その日の私は夜勤だった。つまり、帰ればクビになる。帰りたいのに帰れない。これは強制収容、強制労働ではないのか、と思ったが、夜勤手当も出るから頑張ろうと思った。しかしながら、まさか先祖が密入国、その子孫が「帰れない」と泣く日が来るとは・・・と歴史の皮肉に笑ったのだった、というか、祖母は密入国ではなく、祖父と結婚したから来たのであった。

私は思い切って言ってみた。このままでは人権がないがしろにされる。

「でも、おんなじグループで頑張ってんのに、1位とか10位とか決められた日にゃ」

女性職員らは「それはおかしい」と凄んできた。9時間拘束後の化粧の浮いた顔が眼前に迫った。その威力、迫力に私は気圧され、おしっこがちょっと出た。

曰く「所詮が実力主義」だという。「ちよたろさんは、わかってないなぁ」と呆れたあと、その女性は無駄に長い髪を分けながら、さらに無駄に長い説教をしてくれた。生え際あたりを見れば、そろそろ白髪染めの時期だが、要すれば、互いに切磋琢磨するから全体が向上するのだ、ということだった。私は思わず拍手喝采しそうになったが、これは危険思想、競争原理主義の権化、橋の下のイデオロギーではないのか、と気付いて隠忍自重した。

それから「励みにもなる」と聞こえた。私は耳を疑った。耳は「オレを疑うのか」と怒っていたが、私は純朴な朝鮮人青年のような表情を浮かべ「なんで励みになるのん?」と問い直してみた。すると「結果が出るから自分を磨くのだ」みたいなことを言っていた。あと「(AKBは)同じ仲間とはいえども互いにライバル。ぬるま湯ではなく、競い合うからこそ人気が維持できるのだ」という感じのことも言っていた。私はなぜ、日教組がこんな危険思想を放置しているのか、と腹が立ってきた。あれほど競争はよくない、順位を決めても仕方がない、負けた子供の気持ちはどうなる、という心優しい教育方針を推し進めてきた変態ではないか。負けたAKBの誰かが自殺でもしたら、自民党政権はどう責任を取るのか、と不安になった。

それに「トップ当選」となったメンバーの得票数は「10万8837票」だという。2009年、第45回衆議院選挙における北海道第9区、鳩山由紀夫の投票数の半分ほどだが、来る解散総選挙の暁には同選挙区から立ってみるのもよろしかろう。他のメンバーも応援に駆け付け「日本を元気にします」ということで、選挙カーの上で歌って踊れば鳩山に勝てるかもしれない。それに鳩山由紀夫が政治家やるよりも有望だったりする。

それに投票用紙がCDに付属されていて、ひとりで何票も投票することができるなら、負けん気の強いメンバーの誰かが孫正義とかに枕営業、CDを15万枚ほど買わせれば逆転も可能ではないか。事実、ファンの中にはひとりで100枚とか1000枚買って「応援した」という、悪いゼネコンみたいな人もいたらしい。・・・いや、ならば鳩山由紀夫も金ならある。株だけでも90億円とかある。ママはもっと持っている。それで「Take HEART〜翔びたて平和の鳩よ〜」のCDに投票用紙を入れて50万枚とか100万枚くらい楽勝で買える。

それにしても公然と弱肉強食をやる。テレビのゴールデンタイムで勝った負けたとやる。可憐な少女を舞台に並べて「順位」をつけて評価する。裏には多額の金が動く。朝日新聞が日本の若者は右傾化している、と警鐘を鳴らしていたのは間違いではなかった。私はもう、軍靴の足音が軍歌に聞こえ始めていた。このあたりのことを「キムチエッセンス」を加えて文章にし、それから毎日新聞と朝日新聞に送ってみようかと思う。お小遣いも欲しい。図書カードも欲しいのである。




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