家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

「家づくりははじめてですか」――まずは「出発点」を見定めたい

2005年03月14日 | 家について思ったことなど
インターネットの世界を徘徊しているとたまに見かけるのが、家づくりを検討し始めたばかりの施主予備軍が、家づくりの依頼先はどこがいいか、構法は何がいいかを人に問うているシーン。
そして親切な施主や住宅業界人がそれに答える。ハウスメーカーはどうの、工務店はどうの、建築家はどうの・・・、2×4、2×6はどうの、在来工法はどうの・・・。

回答の正否はともかく、その流れは何かおかしい。
家づくりの出発点は、実現のための依頼先・構造の選定ではない。
自分がどういう家に住みたいか、の洗い出しと整理、そして自らを取り巻く制限(予算、時期、立地条件)の認識であると思う。
それなくして先に依頼先・構造を検討し始めると、家づくりの方法はいつのまにか限定された範囲になってしまうし、楽しみもそれだけ少なくなる(もっとも、家づくりなんてチャッチャと終わらせたいと考えているのなら別だが)。
ハウスメーカー、工務店、建築家(設計事務所)それぞれに長所・短所があるが、自分の家(家族の暮らし方まで含んだ広義の「家」)の姿がはっきりしない段階でそれを吟味してもしょうがない。将来着工する「自分の家」にとって、それらは短所ではなく長所であったり、その逆だったりということもありうるからだ。

だから家を建てようとする人は、どこに頼むかを考える前に、自分で家の姿を描くところから始めるべきだと思っている。
条件を文章に書き出してもいいし、間取りをああだこうだ考えてもいい。形が気になる人は外観でも描いたらいい。
そうして家の姿が見えてきた段階で初めて、それを実現するのに一番都合のいい相手・方法を考えはじめるのがいいのではないだろうか。

私は最初に間取りをたくさん描いた。さんざ描きながら(※注)、耐震性や素材、外観、断熱など家のスペックへの条件を書き出していった。そのうち、間取りだけ考えていたって全然足りないと気づき、さらに「古屋を残す」という特殊な制限を考慮していったら、建築家と組むという道筋が自然と見えてきた。

住宅関連のBBSや相談室のようなところで、自分が考えている家の姿もろくに開示せずに、いきなり「どこに頼むのが一番いいのでしょう?」「どの工法にするのがいいのでしょう」などという質問を投げかけているのを見るたびに、「順番を間違っているよなあ」と思う。
おぼろげでもいいから、住宅に対する考え方がわからなければ、外部の人間が正解など導き出せるはずもない。

 上記のような文章を用意してあった。そしてひとつのエントリにしようと考えていたら、すでに建築プロデューサーの朝妻さんが、物語仕立ての著書「家づくりははじめてですか」で出発点の重要さを見事に伝えていた。
よって、この文章は朝妻さんにささげることにする。

 さて、その本。
 ジンというおじさんの妖精(!)が、家づくりの迷路に入り込んだ主婦を導くというストーリーなのだが、これを読むと家づくりの出発点の重要さが自然にわかってくるのである。
 方法とか依頼先を考える前にやることがあるということを、堅苦しくない文章でわからせてくれる。さらっとした中に相当深く考えて構成してあることが見て取れる。さすがである。
 ここで過去に展開した「建築家とは?」についても、簡潔な文章でわかりやすくその役割を論じている。「普通の家」しかり、間取り論しかり、私の問題意識と近いので、いちいち納得してしまう。読みやすいので私は新幹線通勤の1往復で読み終わった。

なお、前に書いたエントリ「施主予備軍のBLOG活用」においては、施主予備軍がこうした家づくりの出発点から記録をつけ始めることを想定している。
ネットの世界ならば、普通の人間でもジンのような機動力を実現できそうだ。きっと、ジンのような役割をする人も現れるだろう。その第一号が朝妻さんだろうか。

このところ、一部の施主blogではこの朝妻さんの本を題材にしたエントリが立っている。
ゆかりさん LINK
ノアノアさん LINK
m-louisさん LINK
rattleheadさん LINK

 私ももう少し書評らしく書こうと思っていたのだが、私は後発で、これらのするどい方々がすでに紹介したあとなので、なかなか書きにくい。まずは施主連の感想を読んでみてほしい。


(※注)ちなみに以前のエントリで紹介した本には、「絶対に『建築家』に頼んではいけない人」の条件のひとつに、「自分で間取り図を書く人」という項目があった。しかし、私の場合は間取り図を描いていたからこそ建築家と組むという方法に至ったし、自分で間取りのシミュレーションをしていたからこそ、建築家の図面の意図を読み取りやすかったということがある。自分が「建築家に頼んでもよさそうだ」と思ったのは、自分の描いた間取り図に固執するつもりがなかったからだ。

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3 コメント

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ヤバッその3 (asazuma)
2005-03-15 14:17:13
どうも!朝妻です。



いろいろとお忙しいうえに二日酔いのところ

このようなエントリーありがとうございました。



自分のblogに皆様へのお礼をupします。
ヤバッその2 (rattlehead)
2005-03-15 10:41:17
段々感想が書けなくなってくる...
ヤバッ... (ノアノア)
2005-03-14 23:32:17
今回かなりカブってます。

まとまらなくなてアップ出来ずにいる私の続編と。一応、去年のうちに書いていたものなんですが。



「よって、この文章は朝妻さんにささげることにする。」



私もコレいただきです。

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