ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「平成史」佐藤優・片山杜秀 その10

2019-03-21 07:21:06 | 


第六章 帰ってきた安倍晋三、そして戦後70年 平成25年(2013年)⇒平成27年(2015年)

平成25年(2013年)
1月復興特別税が導入される
3月習近平が中国第7代国家主席

4月選挙運動へのインターネットの活用が解禁
6月米国家安全保障局(NSA)の元職員スノーデンが個人情報収集の手口を告発
7月参院選で自民圧勝、民主大敗。ねじれ解消で「安倍一強」体制が確立される
9月2020年の夏季五輪開催地が東京に決定
12月特定秘密保護法
猪瀬直樹都知事が辞意

平成26年(2014年)
1月「日本版NSC」こと国家安全保障会議の事務局である国家安全保障局が発足。初代局長は元外務省事務次官の谷内正太郎。
理化学研究所がSTAP細胞発表。その後捏造騒動へ。
2月作曲家・佐村河内守のゴーストライター事件
都知事に舛添要一
3月ウクライナに属していたクリミアをロシアが編入。
4月消費税8%に引き上げ
韓国でセウォル号沈没
6月アルカイダ系過激派組織が「イスラム国」樹立を宣言。
7月集団的自衛権の行使容認、閣議決定
9月朝日新聞社が「吉田証言」報道(慰安婦問題)ならびに「吉田調書」報道(原発)について訂正、謝罪
11月沖縄県知事、翁長雄志当選

平成27年(2015年)
1月「イスラム国」によって日本人2人が拘束。日本政府に身代金要求、その後殺害。
3月北陸新幹線開業
チュニジアの博物館で襲撃事件。日本人3人死亡
4月安倍首相、日本の首相として初の米議会上下両院合同会議で演説。
5月大阪都構想が大阪市住民投票で却下。橋下市長が政界引退を発表。
7月東芝の巨額不正会計が表面化。
8月安倍首相が戦後70年談話(安倍談話)を発表
山口組が「六代目山口組」と「神戸山口組」に分裂
9月安保関連法案成立。国会前で大規模な安保反対集会が起こる。
12月新国立競技場デザインがザハ・ハディド案頓挫の後、隈研吾案に決定。
慰安婦問題に関して日韓合意


さてここで両氏は安倍晋三首相について評しあっています。主義主張、思想や一貫性がない、ということが二人の共通の安倍判断なのですが、だからこそこの時代に長期政権を保っていられるというのがなんとも苦笑です。
強いこだわりがなく曖昧性と刹那性の組み合わせでできていて批判者が政権に思想的実体があると思って拳を振り上げても霧みたいなもので叩けない、というのはおかしかったです。
佐藤氏は「基本的にはいい人なのではないですか」と言い京都的に言うと「ええ人、ええ人、どうでもええ人」と続けます。
けれども安倍首相は実証性と客観性を無視して自分が欲するように世界を理解する反知性主義者です、と論じています。的確だなあと思いました。
オリンピックに対しても両氏は厳しい目を向けていてその批判にうなづけてしまうのが怖いです。震災復興よりもオリンピック開催に力を注ぐ政権。オリンピックによる景気など一時的なものなのにそこにかつての日本の好景気を重ねようとする政治家たち。菊澤研宗教授が東京オリンピック開催予算をインパール作戦になぞらえているというのがなんとも。

この章の中で「逃げる」というキーワードで平成の社会を考えていることが興味深いです。「逃げるは恥だが役に立つ」のブーム。私はドラマはほとんど見ていないのですが(どうしても日本のドラマは退屈で見続け切れない)内容説明を興味深く読みました。
ここからは私の考えで両氏の意見ではありません。

若者たち、だけではないすべての社会人の生活の多様化が始まっています。既成の人間関係、夫婦、家族、恋人、友人、そういったものが新しく生まれ変わろうとしています。
そうした変化に不安や嫌悪、反発を感じる人も多いのですが、変化はせざるを得ないでしょう。
特に女性の変化は戦後なるべくしてなっていったものですし、日本での変化は遅すぎるほどです。
様々な女性の権利を求める活動はなかなか進まないものではあってもやはり進んでいくものだと思います。
それに応じて男性も変化していくことになりますし、家族形態も変わっていくでしょう。
急激な変化を求めている人たちにとっては緩やかでじれったい速度でも変化はするのです。
田舎に住んでいても若者たちの結婚しない数は実感しますし(周りに驚くほど何人もいる。以前は考えられないほどの割合)若者と言ってしまったけどそういう人々も年をとってしまっている。
離婚率よりも結婚しない率が高い気がします。
子供の数はやはり少ないし、結婚しても子供を産まない組も多い。出来ない組も併せていったら少子化するのは当然です。
加えて結婚してもパートナーに対し不満を持つ確率は高い。昔のように我慢することはもう美点ではないのです。
さらに加えて社会の子供への冷たい視線への不安。少子化対策をしようとしているはずなのになぜか子供を持つことに対して厳しい社会性の謎、不思議。皆で首を絞め合ってるとしか思えません。
将来もっと大きな改革が起きてこないと無理なのかもしれませんね。
私はハインラインが書いた「月は無慈悲な夜の女王」の家族制度のような集団家族のようになっていくのではないかと思っています。多夫多妻家族です。
一対一の夫婦制度で子供を養育していくのは無理があって辛すぎるのです。
勿論これは個々人の選択によってなされるものです。しかも個々人はひとつ屋根の下ではなく別居しながらの多夫多妻かもしれませんね。大勢で幾人かの子供の養育をする。こうした緩い家族性が必要だと思っています。
平成はそこまでは到達できませんでしたが「このままでは嫌だ」という問題提示をした時期ではないかと思います。