箔屋町だより

-ギャラリーこちゅうきょオフィシャルブログ-

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読書回顧2019

2019年12月27日 | ブログ

都心ではイチョウの落葉がほぼ終媳し、迎春の準備に忙しくなってきました。

当ギャラリーでは、12月28日(土)-2020年1月5日(日)の日程で休業いたします。ご不便をおかけしますが、ご賢察を頂ければ幸です。

前回綴りましたが、22日「冬至」に幸い休みが取れ、六本木・国立新美術館で開催中の「ブダペスト ヨーロッパとハンガリーの美術400年」展を拝見しました。

期待と不安が交々のうちに出かけましたが、果せるかな、懸案のイヴァニー・グリュンヴァルト・ベラ作『アヴェ・マリア』(1891年)が出展されているではありませんか!

1999年夏にブダペストはナショナル・ギャラリーにて出会って以来、実に20年ぶりの「劇的な再会」となり、同伴した家内共々感慨無量となりました。

東京会場では結構良い場所に展示され、ゆっくりじっくりと鑑賞出来ましたが、ブダペストで観たときと較べてこじんまりとした印象があり、不思議な感を抱きました。現地での「指定席」は東京会場よりも天井が高く、自然光も入る好環境だったと記憶します。それでも作品の価値が微塵も変わるべくもありませんので、時間の許す限り、淑女との再会・逢瀬を楽しんだ次第です。

※立派な展覧会図録の頁を繰りますと、2頁にわたり、立派に取り上げられていますので、本展でも別格扱いとされていると想像します。ただ、図版の画像が荒く、色調も暗いゆえに実作品とはかなりの違和感を覚えます。この点で少々がっかりしたこともまた事実。これはぜひ、現場で鑑賞していただきたいものです。私儀ももういちど拝見に参ろうと考えています。

さて、令和元年の我が読書体験は、年を追って一段と分量が落ち、振り返りますと全21種を昨日までに読了した結果となりました。

分量こそ少ないものの、感銘度と充実感はなかなかのもの、決して恥ずべきではないぞよと、自らに言い聞かせています。以下、恒例の(!?)マイ・ベストを列挙してみますが、例によって順不同です。

1.青木正児(1887-1964)の著作のうち、

『江南春』、『中華名物考』、『中華飲酒詩選』、いずれも平凡社東洋文庫

我が故郷・仙台にも縁の深い青木大先生の著述は学識の深さはともかく、ユーモアとウイットに富み、大いに愉しく通読しました。先生自ら提唱した「名物学」は奥深く面白く、我が嗜好に大いに合いますので、今後も同先生の著作が入手しやすい形で新刊・復刊していただきたいと切望します。飲酒詩選は先生の詩の方面での見識を伺える貴重なものかと感じますし、翻訳の調子も自然体で頗る上々かとみました。文学の素養も人並みではないと、改めて青木先生に敬意を表します。

※袁枚『随園食単』(岩波文庫)は青木先生の翻訳ですが、食通で鳴る同先生の筆にかかると、一段と説得力があるかとみます。同書を今年再読して得るところ大、新鮮な感動を享受しました。

2.エドゥアール・シャヴァンヌ Éduard Chavannes(1865-1918)の著で

『古代中国の社』、『泰山』、いずれも菊池章太訳、平凡社東洋文庫。

フランス東洋学の泰斗で努力型天才=シャヴァンヌ作品の翻訳通読初体験となりますが、チャレンジして大いに良かったと存じます。黎明期の東洋学の高い水準を目の当たりにし、大いに驚きました。若き菊池先生の訳は平明でありながらも、品格十分、原注(訳)と訳注とが精細で丁寧、解説も読み応えがあります。『泰山』は原著オリジナルの写真・図版・地図が全点掲載されますので、大いに面白く重宝するものです。最良のガイドブックともいえましょう。今夏、パリに滞在しましたが、目的のひとつ=ギメ美術館の訪問を果たしました。当館にて在りし日のシャヴァンヌが研究に没頭して、輝かしい業績をいまに残したことに思いを馳せました。シノロジー(中国学)と合わせて、東洋学の方面に一層の関心が高まり、来年も注意したく意気込んでおります。

3.『文選 詩篇』、川合康三他訳、岩波文庫全6巻

春秋時代~南朝梁までの賦・詩・文章のうち、詞華のみ435首を訳した本篇ですが、時間をかけて上梓を敢行した岩波書店にまず敬意を表したい。昨年晩秋から約9ヶ月かけて通読しましたが、『文選』の偉大さ重要さを初めて痛感し、圧倒されました。同書がなければ、日本文学史を大分書き換えねばならぬだろうとは容易に想像されます。とりわけ、魏晋南北朝期の詩文は今もって新鮮ですし、これだけでも文学=韻文の核心が表現し尽くされているのではないかと感じるものです。川合先生を筆頭とする諸氏の訳業も良心があふれ、丁寧極まりなく、大拍手を送るものです。再読、三読したいものです。そして賦篇と文章篇の当文庫化を切に望みます。

4.『万葉集』、佐竹昭広他訳、岩波文庫全5巻

上記『文選』が無ければ、『万葉集』自体が成立したかどうか、私的に大いに疑問と関心を抱くものです。それでもやはり、『万葉集』は素晴らしい!10代、20代、30代、40代、そしていまの50代と都合5回通読を果たした結果となります。本音を漏らせば、伊藤博先生(1925-2003)の偉大な業績=『萬葉集釋注』に軍配を上げるところですが、この岩波文庫版も最新の研究成果を踏まえていますし、種々便利ですので、今後も大いに読まれることでしょう。今回も時間をかけて通読しましたが、前回以上に、大伴家持の偉大さを実感しました。40代までは大伴旅人が大好きでしたが、息子家持の文才は父旅人に匹敵、いや、それ以上かと愚見を改めるものです。60代にも通読出来るのか…。現時点では全く予測しかねますが、生きているならば、ぜひチャレンジしたいと想っております。

引き続き、八代集のうち『後拾遺和歌集』に初めて挑みましたが、これもやはり『文選』無しでは語れないかとみます。『文選』通読以後、日本古典文学への関心が大いに高まったこと、これだけでも『文選』に出会えて良かった!と心中絶叫するものです。

令和2年には、ペルシャの諸古典(もちろん翻訳で)、古今和歌集の読み直し等々、おぼろながら読書計画を立てつつありますが、もちろん、想定外の出会いも大いに期待いたします。

本年も皆さまのお力添えとご陰徳に支えられた、大過の無い一年となりました。改めて、心より深く厚く御礼を申し上げます。真にありがとうございます。

良いお歳をお迎えください。(by kiyo)

 

 

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