ピンと張った糸は

2004-10-27 14:02:22 | コラム
10月はいろんな事があったのです。自分自身。
9月後半から恐ろしい程のハードスケジュールの仕事があったというのも1つあるのですが、
久々に自分を情けないと涙することも、あったわけです。
そういうのって、突然やってくるもので、
自分の未だ「大人」に成り切れない精神的な「未熟さ」に反抗するかのように、
気を張ってたり強がったり冷静であろうと試みたりしていく日々の中、
もしかして本当に自分は「大人」になれたのではないかと錯角するわけだけれども、
そんな錯角は慢性化し、錯角していることさえも忘れた頃、
ある日ワタシは「ボロ」を出してしまった。しかも信頼する友人に。
何より驚いたのは、
そんな「ボロ」を出してしまった自分が、
遠い昔に自己嫌悪に陥って以来封じ込めていたあの頃の自分であって、
それに一瞬懐かしくなり、その直後、
そんな自分がやっぱりまだ自分の中にいて、
全然成長していなかった事が情けなくて情けなくて気付いたら泣いていた、
という事でした。

全く成長していない、ということは決してないとは思うが、
元々持っている自分の弱い部分というのは、
ある程度成長した後は完全には消し去ることは出来ないのだろうか。
思春期の頃、もう少し落ち着いた感じで育っていればなぁーなんて思ったり。
もうこれからは「大人らしい」というパテのようなもので、
その「未熟さ」を表立たせないように頑丈に埋めるしか方法はないのか…。
でも、そんな「未熟」な自分がいくら頑丈な「大人らしい」パテで埋められていても、
全然克服された気がしない。
ワタシは、「未熟さ」を完全にワタシの中から消し去りたいのだ。
消し去りたいのだよォ~。

*****

思い返すこと十数年前。
中学の修学旅行でワタシは、「修学旅行委員長」(何じゃそりゃ)を務めていて、
みんなが修学旅行を自由に楽しむために、「規則」を作る分「自由」を増やす、
というスローガンをもとに生徒の代表となり先生達と討議を繰り返し、
自分達が納得出来る「自由」を勝ち取ろう!という、
いかにも中学生らしい情熱を燃やしていた事があったのですが、
その中で、「カメラの持参を認めろ」という強い生徒側の要望を、
プロのカメラマンがいるのでそれは禁止だ、という理由で却下され、
ワタシ達生徒はイマイチ達成感のないまま修学旅行に行ったという事があった。
しかし、そんな熱い討論を繰り返してまで作った規則は意図も簡単に破られるもので(ガキだし)、
ワタシの友達は隠れてカメラを持ってきていたのでした。
それを見てワタシは、
「君たち!あれだけカメラは持って来てはいけないって会議で決まったのに、ダメじゃないか!」
…などとは一切言わず、
ヘラヘラと「まぁ、見逃してやるよ、その代わり見つかるなよ!」と、
簡単に認めてしまった。
さらに、その規則破りの生徒は何人もいて、
しかもワタシはその何人かのカメラにニッコリと写ってまでいたのだ。

そんな修学旅行も終わり、何事もなく日々が過ぎていった頃、
とある独り善がりのエセ優等生ブス女が、
「ワタシ、実はカメラに写ってしまったんです…!(泣)
 あれだけみんなで話し合ったのに…!!(大泣)」
と、全く持って意味の分からない懺悔をしたのが事の始まり、
ワタシ達の学年生徒全員が体育館に呼ばれ、
先生たちは大激怒をしていた。当然だけども。
そして、「写真に写ったものも、前に出て来い!」と言われ、
ポロポロと数人が前に並び始め、
ワタシも写真に写った事を知っている友人も前に出て行ったので、
そこで隠れて黙って見ているのも気持ちが悪く、
しょうがなく前に出て行って並んだ。
すると、先生達一同は、驚きやら呆れたやらの表情でワタシを一斉に見た。
そりゃ当たり前だ。だって、
ワタシがリーダーとして「規則」を作る分「自由」を!と叫んでいた張本人なのだから。

それから体育館は、何とも言えない空気に変わり、
怒る気にもならないと思われる落胆した説教を受け、
とりあえず、生徒は解散となり、後味の悪い修学旅行となった。

その解散後、ワタシは先生達に呼ばれ、
10名程の先生たちに囲まれた。
その時ワタシは、どんな説教や体罰がくるのかと、
ドキドキしながら沈黙した輪の中で下を向いていたのだが、
何も話をする気配がなかったので、そっと目を上げると、
なんと、先生たちはみんなそろって涙を流していた。
ワタシはそれを見て、一緒に涙を流すというよりは何とも言えない気持ちになり、
でも何か、彼らに涙を流させるほどワタシは彼らを裏切ってしまったんだ、
ということだけは理解した。
誰も口を開こうとせず、行き場のない時間が数分経った時、
1人の先生がやっと口を開いて優しくこう言ったのです。

「いいか、今からお前が教室に帰ってな、
 お前に優しく声を掛けてくれるヤツがいたらな、
 お前はそいつを一生の友達と思え。いいか?」

そのような、中学生にはイマイチ理解し難い空気の説教は終わり、
真っ白になったアタマを抱えて教室に戻って席に着いた瞬間、
突然ワタシは糸がプチッと切れたような感覚を感じ、
気付いたら蹲って吐くように泣いていた。
もちろん、
全校生徒の前で吊るし上げにされ、
先生たちに怒られたからワタシは泣いているのだ、
と周りの友達は思っていただろうがワタシには関係なかった。
そんな事で泣いているんじゃない。
それだけは自分でも分かっていた。自分がバカバカしくて情けなかった。

*****

…なーんてことが、ありました。
久々手帖を書くと、思いも寄らない過去までほじくっちゃいますね。
ま、トピックですから。いいでしょ?こういうのも。
こんなに昔の事なのに、
今回の事件でワタシは瞬時にこの「修学旅行事件」を思い出してしまったのです。
似てるんです。もう、二度と見たくありません、こんな自分は。
またワタシはパテ埋め作業を頑丈にしながらとりあえず生きていくしかないんだな、
と、ここ最近は励んでいます。

人は自分より懐の深い人間を目の前にすると、
ただ自分を嘆くしか出来ない。オヨヨ。