画廊主の独り言

銀座京橋に在る金井画廊の画廊主によるブログです。

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生命の光

2016-04-17 22:44:31 | 日記
昨日より大原立司展が始まりました。

大原画伯はスペイン・バルセロナに移住して約45年、カタルニアの大地や地中海に浮かぶイビサ、フォルメンテーラ島のまばゆい光に魅せられ、力強い筆致と豊かな色彩で数々の名作を創り続けてきました。今回で9回目を数える個展ですが、まさに円熟の大原ワールドを見せてくれています。

地中海の青、石壁の白、ブーゲンビリアの赤...。その発色の良さと透明感に誰もが心を奪われます。画家本人は「40年以上も住み続け、光のまばゆさを追い求めていると自然にこんな色が出てくるのでしょう。」と言っています。

しかしスペインという情熱の国に永年住み続けていても、画家の持っている資質や考え方、絵の具の重ね方や筆致、ヴァルール(色価)の発揮の仕方など、様々な要因で色彩感に大きな違いが生まれるものです。

彼は専門の美術学校を出ていません(日大・商学部卒)。もともと絵が好きで幼少のころから絵は描いていたそうですが、スペインに渡ってから版画家のロサ・タルエジャ女史の下で本格的に絵画制作に取り組むようになりました。当時スペインにはフランスやイタリアにあるような芸術のアカデミックな教育環境はなく、独力で自らの芸術世界を切り開いていかなけばなりませんでした。

しかし災い転じて福となす。その自由な環境が行動派の彼にとってカタルニアの大地から自然の大いなる恵みを吸収する絶好の舞台になりました。

日本では感じることのできない、まばゆくからっとした光の魅力に取りつかれ、人物を描く上でも極端な光と影の効果を肌の表情に取り入れたり、道や樹木の肌には虫が蠢いているかのような線を描く、そんな独特の表現方法にたどり着きました。

そしてここ数年は地中海のどこまでも青く透き通った海の表情に魅せられ、青の魅力をあますところなく伝え続けています。

彼は雨や曇りの日、夜には絵筆を執りません。スペインの大自然で感じ取った生きた光を描きだすには、陽光の下で一番肝心な自分らしい色彩をキャンバスにぶつける必要があるのでしょう。

10年ほど前、ある末期のガンを患った女性が、彼が描いた浜木綿の咲く海岸風景を購入されました。「この絵を観ていると元気になれる気がする。残された時間を病室でこの絵とともに過ごしたい。」

大原画伯の光はまさしく生命の光。そうです。絵の持つ不思議な力は全身全霊で表現した生きた光、生命の光から湧き出でてくるのだと私は確信しています。ここに絵を描くということの本当の意味があるのかもしれません。
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