画廊主の独り言

銀座京橋に在る金井画廊の画廊主によるブログです。

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絵について1

2016-01-15 00:38:41 | 日記
絵。約30年に亘り「絵」というものに携わっている私ですが、その不思議な魅力に驚かされ心を奪われつつも、その魅力を伝え続けていくことは至難の業であると感じています。

「絵」は「糸」へんに「会う」と書きます。糸を手繰り寄せるごとく、心を寄せる人と出会うもの。それが「絵」であるという、この文字を一体誰が考えたのでしょうか。本当に不思議です。画廊を経営していて、ああこういうことなんだなと実感したことは何度もありました。

私の画廊では企画展を年間約20回ほど開催していますが、扱う作品の数は年間1,000点近くになります。私にとってそのどれもが娘だと思う気持ちで大切に扱うことを心がけております。が、過去に扱っていた作品を全て覚えている(記録はしていますが)わけではありません。

或る日展覧会の準備をしていると、ひょっこり訪ねてきたお客様が、「2,3年前の春頃ここでこの辺に展示されていたこういう作品が未だに頭から離れないのですが、売れてもうないでしょうが、もしまだ残っていたら見せていただけませんか」とおっしゃいました。あああの作品かと思い出すのも一苦労なのにその作品をすぐに取り出してお見せすることなど想像もつかないことです。が、不思議なことにすぐ目のつくところにあるではありませんか。その作品を観て彼は「そうそうこの絵です。また会えました。」と感激され、購入されました。私は絵が売れることを「嫁ぐ」といつも呼んでおりますが、本当に大切に思っていただける佳き方のところへ嫁ぐこのような場面がこれまで何度もありました。

個展では毎度のように、一番の傑作と思う作品が会期の最後の方や終了後に売れたりします。そのお客様の100%が佳い絵を見抜く確かな眼と豊かな絵心の持ち主であることに驚かされます。ああやはりこの絵はこの方のところへ嫁ぐ運命にあったのだと。

16年前の開廊の折、ある老舗の画廊の社長に御挨拶に伺った時、「金井さん、佳い絵を扱い続けなさい。佳い絵は時間がかかるかもしれないが必ず佳い方に売れるよ。」と言われましたが、今本当にそれを実感しています。

また或る日私が最も尊敬していた画家のひとりが他界され、新作がもういただけないことにうなだれていたところ、先生と昔から交流を続けていた方から先生の作品が手元にあるので金井さんどうぞ扱ってください、と画廊に6点程持ち込まれました。箱から出してやはり佳い絵だなあと繁々と観ていましたところ、その時は展覧会など開催していませんので誰も来店するはずもないのに、ひとりふたり3人とお客様が入ってこられる。それも3人ともその先生の作品を私の画廊で購入されている方です。「えっ、どうして先生の作品がここにあるの」「えっ、どうして皆さんがいらっしゃったの」と狐に包まれた空気をはっきり覚えています。

この時、絵には不思議なパワーがある、絵は生きている、息をしていると感じました。その魅力を心底から感じる人と出会い、繋がるのです。

中島みゆきの名曲「糸」に「逢うべき糸に出逢えることを人は仕合わせとよびます。」とあります。佳い絵と絵をじっくり味わう人とが互いに出会い、紡ぐ。この仕合わせを作り続けることが私の使命であると思っています。
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