『子供たちにとっての本当の教科書とは何か』 ★学習探偵団の挑戦★

生きているとは学んでいること、環覚と学体力を育てることの大切さ、「今様寺子屋」を実践、フォアグラ受験塾の弊害

夢へのワープ  ⑥

2015年05月16日 | 学ぶ

進学先を問わず
(今週の本の写真は、立体授業のテキスト作成の際、よく利用しているおもしろいものばかりです。参考にされたらいかがでしょうか。)

 中二で登校拒否をし、方向を見失い町のゲームセンターで遊んでいたM君が、団での二年の勉強の後今年京都大学理学部へ合格した話を紹介しています。先週まで京大受験のための数学・英語の勉強法(指導法)等を一部紹介しました。今後理科・社会・国語の学習についてもお話ししますが、このまま続けると誤解を受け、団の本質が伝わらなくなりそうなので、少し説明を加えます。

 このM君を含め、今までOB教室を経て団から国公立難関大学に合格した諸君(32名中16名)の進学中学をまず、左記に紹介します(平成27年現在)。
 左端の数字は団開設よりの入団期、黄色枠は国立大進学者(白枠は公立大)です。OB教室32名中16名です。表は合格報告を受けた分のみ、また私立大学進学は、今回の数に入れておりません。
 ★印は医歯薬学部、合格大学の水色は京都大学合格者、ピンクは大阪大学合格者です。 
 真ん中数字は左から入団学年、小学校時在籍年数、中学入学後OB教室在籍年数です。3とあれば中学進学後3年間OB教室で過ごしてくれたことになります。小学校3年で入団し、OB教室3年在籍であれば、在籍合計が7年ということになります。
 備考1の*印は、在籍校とOB教室のみで大学合格を果たした諸君です。また、備考2は小学6年時のI社模擬テストの4科目合計点の平均偏差値を、中高一貫校の目標偏差値で日能研の偏差値に比定(2012年版使用)したものです(詳細はブログ「学体力は偏差値を超克する」等をご覧ください)。
 ご覧のように、ほとんどすべての諸君が当時の偏差値では50以下、さらに39以下に比定される諸君が混じっています。一人が神戸大、残り二人が札幌医大と奈良県立医大です。また京都大学へ進んだ子も最高が54、後の諸君は50以下です
 また、彼らはすべて大手受験塾のトップランクのこのような選抜試験で選りすぐられた諸君ではなく、「おじ兄ちゃん!」が、たった一人で指導している、無試験入塾の町の小さな個人塾出身者です。その彼らが18歳前後になると、偏差値70を超える超難関校の子どもたちに引けを取らない大学進学を果たしてくれました。
 つまり、一流校進学や高い偏差値だけが大学進学を左右し、将来を規定するのではありません。子どもたちの能力や学力は可能性にあふれています。フォアグラ受験指導ではなく、人格の涵養も含めた指導が隠れた才能を開花させます

 彼らの姿です。救急医療の現場で患者の生命を救うべく日夜奔走します(上宮学園)。医学部(保健学科)に行って院を卒業、就職後、医師の現実を目の当たりにし、自ら再度学士入学で医師を目指します(清風学園)。また、大学院に行きたかったものの、一人っ子で家庭の事情が許さず就職し、新しい薬品の研究に没頭します(西大和学園)。あるいは阪大の院で哲学の研究に我を忘れます(奈良学園)。ゲームセンターで毎日遊んでいた子が、自らの能力に目覚め、おもしろい勉強に埋没してゆく…(NHK学園・M君)。等々すべてOB教室生の姿です
 彼らの中学進学先と進学大学をご覧ください。現状の姿と夢をイメージしてください。
 説明をしたように、高偏差値や超難関中学進学は関係ありません。それ以外に、もっと子どもたちの能力の開発や成長にとって、大切なものは何か? 指導しておくべきことは何か? 
 ブログアップを始めたのは、それらをぜひ伝えておきたい、わかっていただきたい、という気持ちからでした。

 
可能性と夢は「つぶす」ものではなく、「育てる」もの
 お父さん、お母さん、そして先生方、どうか子育ての原点とグラウンドを見直してください
 小さいころからの偏った受験指導で、自然環境をはじめとする自らの周囲に対する興味や関心を持てないまま、それゆえ学習対象や学習内容の現実が見えないまま、参考書や教科書で受験特化の知識だけを身につけるフォアグラ授業を受け続ける子どもたちの現実を何とかしなければなりません。たいせつなことは「環覚」の養成です

 合格や受験は無視できない試練ではあるけれども、現状のような巷の学習指導だけでは「勉強」や「学習」が、すべて「受験勉強」の域を出なくなってしまう、大学に入れば、ほとんどの子にとって、それ以上追究する意味のない対象に成り果ててしまう、問題はその現実です
 室内で教科書や参考書を開き問題を解く、というのは「学習」や「勉強」のほんの一部であって、それ以上では決してありません。Field work Study。学習探偵団のサブネームです。 

 本来ぼくたちが一生をかけて追究すべきものは、どんな意味においても環境や社会の問題発見であり、研究解決であり、それらの社会還元であるはずです。「学体力」の定着です。若者の成長が、「人の迷惑顧みず、他人の生死には我関せず、ことさら欲望と金の亡者になること」ではないはずです。
 抽象的な学習・成績の上下や合否の判定「のみ」に十年近い時を埋没させる子どもたちが、超難関校に進学したものの、進学後、消耗と喪失感でやる気が失せたり、欲求不満を様々に解消させて、半数は大学浪人。それが受験体制と超難関エリート校が目標の、現在の多くの子どもたちの現実の姿ではないでしょうか。

 その「受験勉強の苦闘」の間に、夢や目標は胡散霧消する。本来なら追求すべき「将来の夢」がおろそかになり、難関大学合格以外に目標が見えず、そのために、またまた予備校頼みで、フォアグラ受験生活を「満喫!」する。こんな生活では、一生を左右する「学体力」の養成など、到底望むべくもありません
 大学は卒業しても、学習や勉強や研究に潜んでいるおもしろさには一切目が届かず、考えることや読書さえ避けて通る。そんな傾向はないでしょうか。日本の大学評価のレベルの低さは、もちろん他にも多くの原因や理由があるでしょうが、ぼくは、程よい(!)「過保護」とこのような受験体制・学習習慣が大きな原因のひとつではないかと感じています。

 つまり「将来の目標や自立・生きていく目的」を日々の考えに加えるべき時に、難関中学、難関大学合格しか見えない、考えられない状態が延々と続いている状態です。それは、それぞれの子どもたちが持っている大きな可能性をつぶし続ける方向ではないのか。
 団のOB諸君は、当初決して高い偏差値(ではないでしょう?)ではないのに、受験を乗り越え、それぞれ志を持ち、前を向いて進んでくれます。それは「消耗戦」で可能性や夢をつぶし続ける方向ではなく、「学ぶことの大切さと意味」、「究めることのおもしろさ」や「できることの自信」と「視野の広さ」を身につけて育ってくれているからではないか。そう考えています。  

 高い偏差値や超難関校への目標が、子どもたちの夢や可能性を育てるのではありません。勉強に限らず、一つ一つの問題にきちんと立ち向かい、自信と誇りを身につけ、自らの存在意義とやる気、モチベーションを高めていくことが小学校高学年から、大学進学までの第一義ではないでしょうか
 拙文からそのヒントをくみ取っていただけるか、いささか心もとないのですが、もし少しでもお役に立てれば、といつも念じながらアップしています。来週は理科・社会の学習に進みます。


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