学校を辞めます 

51歳、ある教員の選択

「在日」を考える(ビデオアクト上映会にて)

2011年01月28日 09時18分20秒 | 映像
 昨日都内でビデオアクト上映会があり、私の作品も上映してくださるということもあり参加した。
 ビデオアクトというのは、プロ、アマ問わず、自主制作を志す映像作家を応援するボランティアグループである。
 私は、ここで私の処女作である「日本軍がたどった南京への道をゆく」を10年前に上映していただき、以来幾度となくお世話になっている。私にとっては、「苗床」のような場所であり、今の私があるのもビデオアクトのお蔭である。
 さて上映会のほうは、私を含め3人の作家の作品が上映された。「近くて遠い学校」(るんみ)、「ぼくらの学校なくなるの?~立ち退き問題に揺れる朝鮮学校~」(近藤剛、後藤由耶)、そして私の作品「絶対に、この闘いに勝ちたい」「ウリハッキョ(私たちの学校)が好きです」である。
 私の作品は、レイバーネットというインターネットサイトに投稿した報道記事だったので時間をかけて作ったものではなく、少々恥ずかしかったが、でも見てもらってよかったと思っている。
 この上映会は、わたしに不思議なインパクトを与えた。はじめ声をかけられた時、菅政権が「高校無償化」にストップをかけ、朝鮮高校生が1年近くも待たされ続け、下手をすると今の高校3年生は無償化からはずれてしまうという緊急事態からとてもタイムリーな企画だと思った。その証拠に昨日の上映会も盛況であった。しかし、上映後のトークで「在日」って何?という議論を聞いているうちに、私はなぜカメラをかついで集会に行ったのだろう?という自問自答が始まったのである。そのときは居てもたってもいられなかったからではあったが、冷静に考えてみるとどうなのか?
 私は5年前に東京都の公立小学校の教員を51歳で自主退職した。私の場合、そんなに「在日」の子どもと関わりをもったわけではない。トータルでも担任した「在日」の子は5人である。人数は少なかったが、その子達に「何もできなかった」という情けない気分が100%である。申し訳なかったという言葉に置き換えてもいい。だから教員を退職をして、映像活動は活発にやるようにはなったが、この問題から「距離」を置いていたのである。諦めがあったといってもいい。それをこの上映会は、呼び覚ます役割を果たしたのである。
 100%「在日」の子どもたちに何もできなかったという感慨は、怒りでもある。
 渋谷区で教員をしていた時、小1の私の担任していたクラスには2人の韓国人がいた。一人はいわゆる「在日」韓国人で通称名で通学していた。本人はそのころ自分が韓国人だという自覚はなかったと思う。もう一人は親の仕事の関係で数年という長期ではあるが来日してきた子で、もちろん韓国名である。そのお互いが同胞であるということを知らずにクラスにいたのだ。私は在日の子に「本名で通えるようにしてみませんか?」と働きかけたが、母親は「自分の経験からまだできない」という返事だった。私は、他の方法で隣国朝鮮を学ぶことを工夫した。例えば英語の時間(当時は国際理解の時間と言った)でハングルや韓国の遊びを学んだりした。そのような中でクラスの親から匿名の手紙が学校長に届いた。「湯本先生は、クラスの子全員を立たせ、韓国の子に『日本は昔韓国に悪いことをした』と謝らせた」というのだ。完全なデマである。私は、卒業式、入学式の「君が代」斉唱で起立していなかったこともあり、親から幾度となくクレームがつけられていた。その「抗議」の一環であった。(その一連の「抗議」を背景に、私は昇給カットまでされ1時は担任をはずされたのである。)
 もう一つは荒川区に転勤した時のことだ。私は希望して通勤時間片道90分の荒川区に転勤した。理由は在日朝鮮人の子ども達と関わりたかったからだ。しかし荒川区転勤1年目で異動命令が出された(2004年11月)。理由は、私が新聞に英語教育に対しての問題提起を投稿したことだ。その投稿した背景には、都内で最も在日外国人の比率が高い荒川区に必要なことは、英語教育ではなく民族教育、国際連帯の教育であるという思いがあった。しかし教育委員会は、そのような素朴な発案をもつぶしにかかってきたのだ。在日朝鮮人に対する教育を公立学校ですすめていくことに、ここまで弾圧、迫害をするのか?私はその時涙の代わりに震えがとまらなかったことを思い出した。
 「在日」のことを忘れてはいけない。それは自分を忘れることだ。そのことが上映会後の素直な気持ちとなった。
 具体的に何をどうしたいといことはない。ただ言えることはあなたにとっての「在日」とは?と聞かれたら。「それは、日本人の課題です」と答えたい。在日の子どもが安心して本名で学校に通うえることと教員が自分の意志で自分の信じることを発言し実践できることとは、イクォールなのである。
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4 コメント

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Unknown (どてら)
2011-01-28 23:36:25
朝鮮学校無償に断固反対する
拉致家族会・拉致被害者のことを思うと当たり前だと思う。
拉致被害について (湯本雅典)
2011-01-29 14:09:14
どてらさんコメントありがとうございます。
まずはじめにコメントは本名でお願いします。
私も本名でブログを発信しています。
「拉致被害」の実態について、悲惨な事件です。でも私たちはそのどこまで知り、何を「自分」の問題として感じているでしょう。
僕は、「在日」の問題は自分の経験から照らし合わせて学校のありかたの問題だと思っています。どてらさんに聞きたいです。「在日」差別をご存じですか?本名を名乗れない子どもたち、親たちのことをどう思いますか。朝鮮学校に通う動機の一つに「朝鮮民族」として生きている自分を殺したくない。だから本名で生きていきたい。朝鮮語を学びたい。という切実な気持ちがあるのです。
「拉致」事件を起こした朝鮮民主主義人民共和国政府の責任は極めて重いと思います。しかし、今、朝鮮学校に通う子どもたちに「拉致」事件の責任を負わすのですか?話がまったく違うし、最も見なければいけない、日本人にとっての「在日」問題が抜け落ちています。
コメントについて (湯本雅典)
2011-01-29 14:37:24
すみません。先ほどのコメントで言い忘れました。本ブログへのコメントは、本名ですべての方にお願いしています。よろしくお願いします。
すみません (かわ)
2011-02-22 23:30:20
コメントを送信した後、
本ブログへのコメントは本名で、
ということが書いてあることに気づきました。

本名でコメントを書くのはちょっと気が引けるので、残念ながら、もうお邪魔することはできません。
コメント送信、申し訳ありませんでした(私のコメントは無視してください)。

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