ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

大地の力

2012年01月06日 | 通信-環境・自然

 高校生の頃、「高校を卒業したら農業をやってみたい」と私が言ったら、大反対した父であるが、仕事を定年退職してからは家の屋上にプランターを置いて植物を育てたり、姪の庭を借りて野菜を作ったりしていた。父も農業が嫌いでは無いのである。父の父親、つまり私の祖父は小作農でとても貧乏したらしく、父の姉たちは奉公に出され、祖母も苦労し、それで、「百姓で飯が食えると思ってるのか!」ということであった。

 12月、10日間の農業講習を受けた。どこぞの農家でアルバイトした時に、農夫として役に立つよう基礎的な知識を身につけようと思ってのこと。アルバイトでさらに技術を身につけ、知識を増やし、ゆくゆくは私の目指す自給自足芋生活が成り立つようにとも思ってのこと。ではあるが、たったの10日間だ、結果的には、どうすれば農夫として役に立つような知識や技術が身につくかという情報を得ただけといったものであった。
 10日間で4人の講師がそれぞれの得意分野を講義した。中学か高校で習う生物(光合成の仕組みとか)、農業経営と経済学、農地と作物の管理などといったもの。最初の3人の講師は県の農業試験場の職員などで、概ねどうすれば農業で飯が食っていけるかということに重点の置かれた内容であった。ハウスという金のかかる施設が必要であるとか、農薬と化学肥料を用いなければ安定した生産ができないとかいったもの。
 貧乏なので、ハウスという金のかかる施設を建てようなどとは毛頭思っていない。自然に優しい生き方をしたいので農薬も使いたくない。「農業で食っていくには設備投資に金がかかるのか、農薬も必要なのか、農薬は嫌だな、農業諦めようかな」と思った。

 4人目の講師は役人では無く、農夫。無農薬有機農業を実践している人。「農業諦めようかな」と、私の目指す自給自足芋生活に暗雲が垂れ込めていた中、「農薬も化学肥料も土地を疲弊させるだけ、それらを使うのは愚の骨頂」と仰る。「植物が健康であれば病害虫に強くなります、農薬を使わずとも植物は育ちます」と仰る。「植物が健康であるためには土を健康にすれば良いのです」と仰る。「雑草は土中の養分を吸い取った栄養の塊です、それを刈り取って外へ捨てるのは土中の養分を外へ捨てているようなもの、畑の雑草は腐葉土などにして畑へ返しなさい、土が元気になります」と仰る。
 雲間から一条の光が差したような気がした。植物も人間と同じだと思った。免疫力の強い人は病気になりにくい。免疫力の強い野菜を育てれば良いのだ。免疫力の強い野菜はまた、食べた人の免疫力をも強くするに違いない、一石二鳥だ。私は、免疫力の強い野菜作りを目指せば良いのだ。そのためにはどうすればいいかを勉強すれば良いのだ。

  土を健康に保つ、または、より健康にする、それらのための方策を考える。今解っている方策の一つは、無農薬有機農業を実践している農夫が仰ったように化学肥料は使わず、畑にある雑草や作物の不要物、枯れ葉などを腐葉土にして畑に還元するということ。どうやって腐葉土にするかを調べ、実践する。それを今年の目標とした。
 大地には元々植物を育てる力があるのだ。私はそれの手伝いをすればいいのだ。大地の力を十分に使って作物が育ち、私がそれを食べる。それで私は生きて行ける。つまり、大地には人間を育てる力もあるということだ。大地の上に生きていて良かった、のだ。
          

 記:2012.1.6 島乃ガジ丸