ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

イチャンダイチゴ

2006年01月27日 | 通信-社会・生活

 ウチナーンチュに、「イチャンダイチゴがあるから持って行きなさい」と言われても、「痛んだイチゴを持って行きなさいって、何考えているの、あの人」などと怒ってはいけない。イチャンダは「痛んだ」の舌足らずな言い方では無い。イチャンダはウチナーグチ(沖縄口)で「只(無料)」を意味する言葉。「只のイチゴ」ということになる。
 先週木曜日に、近所のスーパーでイチゴを1パック買った。これは只では無く、390円した。すぐに冷蔵庫の野菜室に入れて、そして、忘れた。

 今週火曜日(24日)、テレビのニュース番組を観ていたら、思わず「オイ、オイ」と突っ込みたくなるような場面に遭遇した。それはアメリカ産牛肉の輸入再禁止に関連してのニュースであったが、アメリカの農政関係の高官らしい人が出ていて、「BSEに感染するよりも交通事故に会う確率が高い」なんてことを彼は言ったのである。政府高官にしては何ともまあ、大雑把なことを言う人だろうと私は思ったのだが、案の定、これは問題発言と見なされ、翌朝のワイドショーで取り上げられた。
 沖縄での交通事故による死者は、年間だいたい80人ほどと聞いている。「あなたたち、1年間で約80人が交通事故で死んでいるんでしょう。だったら、1年間に1人くらいBSEに感染したって大したこと無いじゃない。その程度の犠牲で、アメリカの牛肉生産農家は助かるんですよ。」なんて、アメリカの政府高官も思っているわけでは無いだろうが、そういう風に聞こえた。「禁止部位が混ざっていたのはちょっとしたミスじゃないか」という気分が彼にはあったのだろう。「そのくらい許せよ」なのであろう。
 車は危険である。危険だから、管理者(国)は法によって多くの規制をし、ミスが起きないようにする。そして、ミスを犯したものがいれば、それを許したりはしない。
 原子力発電所は、万が一事故が起こった場合は非常に危険である。だから、二重にも三重にも、あるいはそれ以上に安全対策を講じている。BSEに関しても、それは非常に危険であると日本国が認識し、それに対し入念な安全対策を講じるのはすごく当然のことだと思う。国民の安全を守るのは国の責務である。今回、日本国は正しい。

 今週水曜日の朝、冷蔵庫の野菜室にイチゴを発見した。買ってから1週間が過ぎたイチゴは、その表面の3割方をシロカビに覆われていた。その10日ほど前、傷みかけたターンムリンガクと賞味期限を2ヶ月以上過ぎた高野豆腐を食って、それでも下痢をしなかった私は、私の胃腸に自信を持っていたので、カビに覆われたイチゴも水洗いでカビを落として、食った。歯触りが普通のイチゴと違ってネトっとした、イチゴを茹でたらこんな感触かなと思うようなものがあり、それは香りも無く、美味くも無かったのだが、構わず食った。そして、6個目か7個目を口に入れた時、その1粒はまったくカビの味がした。すぐに吐き出した。カビは表面だけで無く、中まで染み込んでいたようである。
 口の中にカビの味がして嫌な気分。残ったイチゴの中には罪の無いイチゴもあったであろうが、全部捨てた。イチャンダ(只)では無かったイチゴであったが、イタンダイチゴに変身してしまっては、BSEの疑いのある牛肉と同じ処分となる。イチゴを忘れるというミスを犯した私は、390円の損と嫌な気分という罰を受けた。当然の報いだ。

 記:2006.1.27 ガジ丸