ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

カード社会

2008年03月14日 | 通信-社会・生活

 近所にスーパーが4店あり、そのうちの3店へは週に1回、残りの1店には月に1回程度買い物に行っている。金曜日の職場の近くにもスーパーが2店あり、そのうちの1店には週に1回、残りの1店には月に1回程度買い物に行っている。
 それら6店舗はそれぞれ違う会社である。しかし、どのスーパーへ行っても、レジで清算する時カードの有無を訊かれる。「○○カードはお持ちですか?」と。この○○にはそれぞれのカードの名前が入る。私はどのカードも持っていない。カードで財布が太るのが嫌(お金で太ったことは無いのにさ)だからだ。出すのも面倒だし。

 私の財布には既に、常時5枚のカードが入っている。銀行のキャッシュカードとクレジットカード、市役所の市民カード、図書館の貸し出しカード、そして電気店のポイントカードである。私は2つの銀行に口座を持っているが、1つの口座はもう10年ばかり利用していない。常時携帯するカードを減らすためである。
 もうしばらくしたら、常時携帯のカードは4枚に減る。電気店のカードを処分することにした。電気店では大きな買い物をすることが多いということからポイントカードを作ったのだが、カードを作って約10年、その間、テレビ、冷蔵庫、ビデオデッキ、オーディオ、洗濯機などなどを買っているが、1度もポイントを利用していない。ポイントがいくら溜まっているのか、いつ消滅するのか、ポイントで何ができるのかずっと不明だったので、使いようがなかったのである。無駄なことをしてきたのである。

 話はちょっと逸れるが、実家を出て今のアパートに越してから14年になる。住所変更を知らせていなかったので、その電気店とクレジットカード会社と出身大学からの私宛の手紙はずっと実家へ届いていた。で、先週、クレジットカード会社と出身大学へはインターネットで、そのHPから住所変更を行った。15分で手続きは終了した。
 電気店もそうしようとそのHPを覗いたが、そういったページが無い。で、メールで問い合わせる。翌日になって返事があった。「店まで来てください」だった。
 そのメールにはついでに、ポイント数を知るにはどうしたらいいかということも訊いていた。これもまた、「店まで来てください」だった。面倒なカードなのである。というわけで、その電気店のカードは処分しようと思ったのである。

  そういうことで、近いうちに私の財布からカードが1枚減る予定だが、7月にはまた、1枚増えることになりそうだ。増えるのは、タスポというカードである。自動販売機で煙草を買う際には、そのカードが無ければ買えなくなるというのだ。
 まったく何でもかんでもカードカードと面倒な社会となってしまった。できれば、1枚のカードで銀行も図書館も電気店やスーパーの買い物も、そして、煙草の自動販売機も使えるようにしてもらえないだろうか。お金を入れるための私の財布だが、お金では太らない財布である。それを、カードで太らせたんでは可哀想だ。財布も私も。
          

 記:2008.3.14 島乃ガジ丸


発明023 ハンナギヒンナギ

2008年03月14日 | 博士の発明

 土曜日の昼間、天気も良いし、風も心地良いし、散歩がてらに先週行きそびれたシバイサー博士の研究所を訪ねた。
 ゴリコとガジポの遊び相手を一通りやって、まだ明るいのだが、時間に関係なく酒を飲んでいる博士の、その酒の相手をする。博士にとってはほとんど関心の無い事項とは思ったのだが、このところ噂の、マナの結婚話をちょっとした。

 「そういえばマナは、最近女らしくなったなあ。」と言う。
 「女らしく、男らしくなんて、最近流行らないみたいですよ。」
 「うーん、そうかぁ。はんなりとかひんなりとか、女の武器としてあった方が良かろうと思うんだがな。おっぱいが大きいとか、美人だとかいうのも武器になるが、はんなりひんなりもそれに劣らない武器になると思うがな。」
 「そうですね、私もそう思います。見た目の作りが少々不細工でも、所作の良い女は容姿もきれいに見えますからね。ところで博士、最近、何か発明はないですか?」
 「発明か、最近寒かったから、なかなか良いアイデアが浮かばないな。あっ、そういえば、はんなりひんなりといえばだ、昔、ハンナギヒンナギという機械を作ったぞ。」
 「ほう、ハンナギヒンナギですか。いったいどういう機械ですか?」
 「そうだなあ、まだ残っているかなあ。」と博士は立ち上がって、倉庫の方へ向かう。それを私は引き止めた。つまらない発明だったら、取りに行くだけ無駄だからだ。
 「博士、実物は後でいいです。話を伺ってからにしましょう。」

 博士は「あーそう。」と肯いて、座りなおした。少し気に障ったのか、ギロっと私を一瞥して、泡盛を一口飲んで、それからハンナギヒンナギの説明を始めた。
 「ハンナギヒンナギは、面倒なことになった時に、何もかもくしゃくしゃ丸めてポイっと捨てる機械だ。名前の説明は要らないな?」
 ウチナーグチの解る私に説明は要らないが、知らない人のために、ハンナギは「放り投げる」という意味。ヒンナギはそれから発生した言葉で、同じ意味。
 「その機械の前で悩みを打ち明ける。するとその機械がその悩みを吸い取って、それを文章にして、紙にプリントして、その紙をくしゃくしゃ丸めて、ポイっと捨てるわけだ。もう悩みたくない!って時に有効で、どんな悩みも一発解消となる。」
 「でも、それは、悩みを忘れただけで、悩みそのものが解決されたってわけじゃないですよね?」と、私は博士を傷付けないように遠慮がちに訊いた。
 「ふむふむ、もっともな質問だ。だがな、三十六計逃げるに如かずって言うだろ、何事もだな、もっとも有効な解決法はそのものから逃げるってことだ。悩みなんか悩んでいるだけ無駄っていう哲学的意味も含んでいる。カッ、カッ、カッ。」と博士は、発明品を説明する時はたいていそうであるように、今回も大いに得意げである。

 ここで博士は一息ついた。酒を一口飲み、鰹節を一齧りして、さらにもう一口酒を飲んでから、ハンナギヒンナギの話を続けた。
 「これにはまた、もう一つ機能がある。ハンナギカレンダーなるものを作ってくれる。例えば、仕事が辛くて、仕事から逃げたいとか、女房が煩くて、女房から逃げたいと悩んでいる人間がだ、そのハンナギカレンダーの日付を赤く塗ってしまえば、その日は仕事や女房から解放される。この世に責任を持たなくて良いというカレンダーだ。」
  「ほう、それはいいですね。そういう人は多いですからね。毎日赤く塗ってしまえば、毎日が自由の身ってことですよね。うん、それは面白いですよ。」
 「そういうことだ。それで全ての悩みから開放されるわけだ。ただしだな、あまり頻繁に赤い日を作ってしまうと、カレンダーが真っ白になる場合がある。」
 「真っ白って、どういう意味ですか?」
 「その日が来ないってことだ。つまり、この世に用無しとなるわけだ。悩みが無いってことは、すなわちそういうことだっていう哲学的意味も含んでいる。どうだい、カッ、カッ、カッ。」と、博士はさらにふんぞり返って、椅子から転げ落ちそうになった。

 博士の言う通り、ハンナギヒンナギは確かに哲学的であったが、悩みを捨てる代わりに死んでしまうんじゃあ、欲深い人間達の需要があるとはとても思えない。ハンナギヒンナギが倉庫に眠ったままであったことの理由が私には理解できた。倉庫までわざわざ取りに行かせなくて良かったと私は思いつつ、研究所を離れたのであった。
 あっ、そうそう、博士はハンナギヒンナギのコマーシャルソングも作っていて、その時歌ってくれた。『ハンナギ節』という題。これはなかなか良かった。
     

 記:ゑんちゅ小僧 2008.3.7 →音楽(ハンナギ節)