ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

知識と感性の飽食

2004年12月10日 | 通信-社会・生活

 先週土曜日、職場の、社員たちだけによる忘年会があった。場所は泉崎。近くにパレット久茂地がある。パレット久茂地には映画館がある。シネマパレットでは確か、「笑いの大学」をやっていたはずだ。ついでだ。忘年会の前に映画を観ようと思った。
 出掛ける前に(ウチナーンチュの多くは用意周到では無い。たいていギリギリになってあれこれ準備する。)新聞の映画の欄を見る。目的の「笑いの大学」は無かった。予定変更し、那覇私立中央図書館行くことにした。図書館には5時に着いた。忘年会は8時からなので、調べ物をする時間は2時間半ほどある。机の上に資料を3冊並べ、しばし、没頭する。いくつかある調べ物のうち、一つがやっと終わるかどうかという時に突然、館内に音楽が流れ、閉館間近を告げるアナウンスがあった。土曜日の閉館時間は6時とのこと。しょうがなく図書館を出る。
 季節外れの台風が台湾付近にあるせいで、外は強い風。そんな中をトボトボ歩く。行き先はパレット久茂地。図書館にポスターがあった。パレット久茂地のリウボウホールで、沖縄県公文書館が主催する「記録で辿る那覇の今・昔」という催し物をやっていると書かれてあった。
 図書館からパレット久茂地までは徒歩約30分。途中から雨も降る。用意していた折り畳み傘を差すが、強風に煽られ、何度も傘を逆に折り畳まれしながら30分後、到着。
 「記録で辿る那覇の今・昔」の「記録」は文献や絵、写真だけでは無く、映像もあった。ホールの前に貼り出されていたプログラムを見ると、映像は朝から十数種類を上映していたようだ。それらはいずれも、図書館で私が調べたいと思っていた内容のようであった。その他、文献も写真も私が興味を持っているもので溢れていた。が、短い時間では、十分の鑑賞はできなかった。
 出掛ける前に新聞さえ見なければ、5時にパレットへ着いて、興味深い映像を少なくとも5種類は観ることができたはずだ、図書館で得るよりもはるかに多くの情報を得ることができたはずだ・・・などと、じつは、オジサンは後悔していない。友人が面白いと勧めてくれた「笑いの大学」を観ることができなかったことについても、ちっとも後悔していない。
 知識を得る、感性を高めるということに貪欲になることは良いことかもしれないが、自分にとって必要の無い物まで食べてはいまいか。隣の人が持っているから私も持つ。今流行りだから私も観る、聴く、買うなどということになってはいまいか。ありとあらゆる情報が溢れる中で、それらの情報に翻弄されて、自分の心が望むものを忘れてはいまいか。などということを、畑仕事をやるようになってから考え、現代は知識と感性の飽食でもある、と思うようになった。
 「ナイルウッピドゥナイル」というウチナーグチがある。成るだけしか成らないといった意。化学肥料を用い、農薬を撒いたりして生産高を上げる方法もあるが、それはたぶん、大地に無理を強いていることになる。知識も感性も無理して増やしたり、鍛えたりしなくて良かろう。自身の心に無理を強いることは無かろう。知識を得る機会も感性を鍛える機会もあればあったでいいや、とのんびり構えてもいいではないか、と片手間農夫は思うのであった。
 ちなみに、土曜日の午後、もし、直接パレットへ向かっていれば、雨に濡れることも無く、傘を壊されることも無かったのだ。・・・ということについては、農夫は後悔している。

 記:2004.12.10 ガジ丸