SARS-CoV-2のRNAは、培養したヒト細胞のゲノムに組み込むことができ、患者由来の組織でも発現
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逆転写されたSARS-CoV-2のRNAは、培養したヒト細胞のゲノムに組み込むことができ、患者由来の組織でも発現することができる Liguo Zhang et al
論文紹介
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33958444/
Proc Natl Acad Sci U S A. 2021 May 25;118(21):e2105968118. doi: 10.1073/pnas.2105968118.
Reverse-transcribed SARS-CoV-2 RNA can integrate into the genome of cultured human cells and can be expressed in patient-derived tissues
逆転写されたSARS-CoV-2のRNAは、培養したヒト細胞のゲノムに組み込むことができ、患者由来の組織でも発現することができる
Liguo Zhang 1 , Alexsia Richards 1 , M Inmaculada Barrasa 1 , Stephen H Hughes 2 , Richard A Young 1 3 , Rudolf Jaenisch 4 3
Affiliations
• 1 Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA 02142.
• 2 HIV Dynamics and Replication Program, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, Frederick, MD 21702.
• 3 Department of Biology, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA 02142.
• 4 Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge, MA 02142; jaenisch@wi.mit.edu.
• PMID: 33958444 DOI: 10.1073/pnas.2105968118
要旨
COVID-19から回復した患者において、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のRNAの検出が長期化し、PCR陽性反応が再発することが広く報告されているが、これらの患者の中には感染性ウイルスを排出していない者もいるようだ。我々は、SARS-CoV-2のRNAが逆転写されて培養中のヒト細胞のDNAに統合され、統合された配列の転写が、患者に見られるPCR陽性反応の一部を説明する可能性を検討した。この仮説を裏付けるように、SARS-CoV-2の配列のDNAコピーが、感染したヒト細胞のゲノムに組み込まれることがわかった。
このことから、LINE1レトロトランスポゾンを介して、標的を起点とした逆転写とレトロポジションが行われていると考えられた。また、一部の患者由来の組織では、ウイルス配列の大部分が統合されたDNAコピーから転写され、ウイルスと宿主のキメラ転写物を生成していることを示唆する証拠が見つかった。このように、ウイルス配列の統合と転写が、感染後や臨床回復後の患者におけるPCRによるウイルスRNAの検出に寄与していると考えられる。今回検出されたのは、宿主細胞のDNAに統合されたウイルスゲノムの主に3'末端に由来するサブゲノム配列のみであるため、統合されたサブゲノム配列から感染性ウイルスが生成されることはない。
Keywords: LINE1; SARS-CoV-2; chimeric RNAs; genomic integration; reverse transcription.
Copyright © 2021 the Author(s). Published by PNAS.