みどりの船

絵本と絵本まわりのこと、日々の雑感を少し。

トムテ

2005-12-21 | クリスマス絵本

 
 ヴィクトール=リードベリ詩/ハラルド=ウィーベリ絵 
    山内清子訳  偕成社(品切れ)
                                                                           
北欧では、納屋や古い家の床下などに小人(トムテ)が住んでいて、
その家の家畜や人を守ってくれるという。
この絵本はそのトムテのつぶやきが、詩という形で表現されています。
あとがきによれば、スウェーデンの詩人・リードベリが
1882年に発表したこの詩は、今日でも広く
スウェーデンの人に愛されていて、
大晦日の夜に、ラジオで朗読されているのだそうです。

流れるような趣のある詩に、美しいウィーベリの絵が
ぴったりよりそっていて、静かな雪国の静寂さが
伝わってくるようです。

クリスマス・イブの日、トムテを大事に思う家人は、
トムテのためにおかゆをうつわによそって、
納屋や馬やや仕事場に出しておきます。
そうしないと、トムテがいたずらをするかもしれませんから。
スウェーデンで「トムテ」と言われているこの小人、
ノルウェーやデンマークへいくと「ニッセ」と言われるのですね。

ウィーベリの描くトムテは、白いひげを足先までのばし、
赤いボンボンつきの帽子をかぶった、鉤鼻のずんぐりした
おじいさん風。
そのトムテが農場の夜番をしながらつぶやきます。

 「わしにはまだ、どうもよくわからん」

トムテは昔から、ここのこどもたちのお父さんがこどもたっだときも、
おじいさんがこどもだったときも、
ひいおじいさんがこどもだったときも、
ずっとずっとこどもたちを見守ってきたのです。
でもトムテには不思議に思える難問がひとつ。

 ひとはどこからくるのだろう。
 こどもがおやになり、またそのこどもがおやになる。 
 にぎやかにたのしくくらし、としおいて、 やがていってしまう。 
 だが、どこへいくのだろう。

かすかに聞こえてくる滝の響きを聞きながら

「どこへながれていくのだろう。みなもとはどこだろう。」と考えるのです。

答えは出ず・・・。静かに静かに雪景色の夜はふけていきます。

不思議な余韻のある絵本です。
最初手にとった15年前より、今のほうが、格段にこの絵本を
味わえるようになったことがちょっとうれしい。
なのにこの絵本、今は品切れなのですね。残念!

トムテといえば、お人形のふりをしたトムテの息子が、
おもちゃやに売られてしまう、ベスコフの
「おもちゃやへいったトムテ」も楽しい読み物です。

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