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「夢の技術」課題山積み もんじゅ、14年5カ月ぶり運転再開

 日本原子力研究開発機構は6日、1995年12月のナトリウム漏れ事故以来、停止していた高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市、28万キロワット)の運転を14年5カ月ぶりに再開した。8日に核分裂の連鎖反応が持続する臨界に達する見込み。炉内で消費量以上の燃料を生み出す高速増殖炉は夢の技術とされるが、実現には多くの課題が残されている。
5月7日8時16分配信 フジサンケイ ビジネスアイ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100506-00000008-fsi-bus_all


ナトリウム漏れ事故から14年ぶりに高速増殖炉「もんじゅ」が運転再開した。
事故など技術面、それに情報隠し等の組織運営に問題があり、14年以上停止していたもんじゅ。これだけ長期間停止していた原子炉を再び稼働するのが適切なのか疑問が残る。

もんじゅは1970年に建設開始。当時、世界中で原子力発電所の計画・建設が急速に進み、ウラン燃料の価格高騰、枯渇が懸念されていた。

日本原子力産業協会 世界で運転中、建設中、計画中の原子力発電所数
http://www.jaif.or.jp/ja/nuclear_world/overseas/f0103.html

もんじゅは発電に使った以上の燃料を生み出す「夢の高速増殖炉」と期待された。
性能試験などを経て、1994年4月に初臨界、1995年8月に初発電。だが、そのわずか4ヶ月後の1995年12月にナトリウム漏れ事故を起こし、停止したままになっていた。

14年以上の停止はよく報道されているが、それ以前に初臨界からたった1年8ヶ月しか運転していないもんじゅ。本当に大丈夫なのか?どうしても不安が残る。

日本原子力開発機構の「もんじゅとは?」のページには最初にこのように書いてある。

「もんじゅ」は、発電できる高速増殖炉としては我が国唯一の原子炉で、運転しながら、消費した以上の燃料を生み出すことができます。
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/mext-monju/yakuwari/abt_mnj_01.htm

発電に使った燃料以上の燃料を作り出す。これがもんじゅの売りなのだろう。これは別に魔法というわけではない。もんじゅはプルトニウム約20%と普段使われないウラン238を燃料にする。燃焼時にウラン238はプルトニウムに変わる。

高速増殖炉とは
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/mext-monju/yakuwari/abt_fbr_01.htm

ウラン238は核分裂しにくく、通常の原子炉での発電にはあまり寄与しない。ウラン238は天然ウラン中に99%以上含まれているので、これが利用できるとウラン資源の大幅な節約になる。核燃料サイクルではプルトニウムだけを燃料と考え、ウラン238から変化した分プルトニウムが増えると消費した以上の燃料を生み出すということになる。

だが、増えたプルトニウムはどうするのだろう?

核拡散防止で余剰プルトニウムは持たないことになっている。普通の原発からでる使用済み核燃料にはプルトニウムが約1%含まれている。

■原子力発電所で使われる燃料の発電による変化

http://www.kepco.co.jp/plu/5.html

日本では使用済み核燃料中のプルトニウムは資源として扱われ、廃棄物とは見なされない。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すには再処理工場が必要だが、これも日本ではまだ稼働していない。(六ヶ所村再処理工場が2010年に稼働予定)
現在は国外で再処理してもらっているが、プルトニウムは消費されることなく在庫が積み重なっている状態。このため、普通の原発でプルトニウムを使うプルサーマル計画を推進している。

もんじゅのうたい文句の「使った以上の燃料を生む」というのは、プルトニウムを増やす。ということ。しかし、プルトニウムを使う予定がなければただの廃棄物になる。
しかも、使用済みMOX燃料の再処理工場はなく、高レベル廃棄物の処理方法も決まっていない。

世界的には高速増殖炉ではなく、ただの高速炉(プルトニウムを増やさず、消費するためのもの)の計画が増えているようだ。安全保障の問題から、プルトニウムを減らすことに重点が置かれるようになってきた。

原子力委員会の資料の中で、

もんじゅが運転再開した後は、研究開発用に年間数百キログラムのプルトニウム需要が見込まれる。

と、書かれている。

2010年過ぎまでのプルトニウムの利用と回収(PDF)
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/siryo/houkoku2/p53.pdf


もんじゅの再開の本当の理由は、高速増殖炉でプルトニウムを増やすのではなく、プルトニウムを消費することにあるような気がする。

今回のもんじゅの再開にはどうにも不可解な点が多い。行き当たりばったりのエネルギー、原子力開発のつけが回ってきているよう。使用済み核燃料の処理、核不拡散防止など国際問題も絡んでより複雑になっている。
本当は何が問題なのか。日本のエネルギー戦略はどうするのか。核廃棄物はどうするのか。正確な情報と冷静な議論が必要。


関連リンク
高速増殖原型炉 もんじゅ
http://www.jaea.go.jp/04/monju/
原子力機構 「もんじゅ」が開く明るい未来
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/mext-monju/index.html
資源エネルギー庁 核燃料サイクルの仕組み
http://www.enecho.meti.go.jp/genshi-az/cycle/structure/why.html


2010/5/8 更新 
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