新しいリコーダー奏法

吉嶺史晴によるリコーダー奏法解説ブログです。上達してゆくための全般的な考えかた・生き方のヒントについても書いています。

有限のチカラを垂直方向に働かせるのか、それとも水平方向に働かせるのか

2019年01月30日 | 全般的な事柄
有限のチカラを垂直方向に働かせるのか、それとも水平方向に働かせるのか、という選択は演奏に大きな違いを作るのではないでしょうか。

拍を重たくするという形でエネルギーを使うのか、それとも水平方向に進ませる、という形のエネルギーとして使うのか、という在り方。

このふたつの違いは大きいです。

いろいろな演奏を聴いてみると、傾向としては水平方向ではなく、全体として拍が重たくなってしまうことが多いように見えます。

得策ではないように見えます。
なぜならば、このような在り方では曲のなかで特定の拍を重たく演奏することが困難になるからです。
別の言い方ならば、音楽は推進力が備わっているのが通常の状態であり、そのためにはある程度の「軽さ」が必要だからということも出来るでしょう。

拍の「重さ」「軽さ」ということは必ずしもテンポとは比例しません。

遅いテンポの曲では重たくなりがちなのは自明のことですが、遅いテンポの曲であればあるほど軽く、速いテンポの曲であればあるほど重く演奏する、という考えかたもあります。(振り子の原理)

いずれにしても奏者の持っているエネルギーは有限なので、それをどのような方向に使うのか、ということはなるべく意識してみたいところです。

歌う付点にするのか、それとも跳ねる付点にするのか

2019年01月29日 | 全般的な事柄
歌う付点にするのか、それとも跳ねる付点にするのか、という切り口は演奏における様々な要素のひとつとして興味深いものです。

付点8分音符に連なる16分音符。
これをどのように演奏するのか、という判断、これは演奏全体のキャラクターを決めるのに大きな影響を持つことがあるでしょう。

このような事柄についてはあえて練習の際に最後まで決めておかない、というのも考えかたとしては有り得ます。

つまり練習の際にはどちらにもゆけるような方向で練習しておき、本番ではその時のインスピレーションにまかせるという在り方です。

追伸:
でも、なかなかうまくゆかないことも多いでしょう。
「その時のインスピレーション」などと言ってしまうと、言葉ではカッコ良い感じですが、実際は緊張しすぎてしまって、思わぬ方向に行ってしまうことだってあるわけです。(またはその逆もあるかも。あまりにも緊張感のない舞台はこびでダラケタ演奏になってしまうとか。。。)

追伸の追伸:
練習の際に「決めておきたいこと」と「あえて決めておかないこと」の区別をしておく、というのはひとつの考えかたです。

ここでは付点をどのように演奏するのか、ということについて書きましたが、たとえば息継ぎの場所について、など様々な事柄について応用できるでしょう。

ある程度、熟達してきたら本番の舞台で奏者である自分自身がなるべく自由で居られるような練習の進め方ということを考えてみる、こんなことも演奏にアプローチするためのひとつのヒントになるのではないでしょうか。

経験の少ない人と一緒に二重奏する場合の注意事項

2019年01月13日 | 全般的な事柄
経験の少ない人と一緒に二重奏する場合の注意事項を書いてみます。

■鳴りを弱くした状態で音を出す
■相手のテンポが速くなったり遅くなったりしたらそれに追従する
■相手のピッチが高くなったり低くなったりしたらそれにも追従する

上記のような点に注意をしながら演奏すると、とりあえず経験の少ない人はよりストレスの少ない状態で演奏することが出来るでしょう。

特に「鳴り」についてですが、経験の少ない人の場合には楽器をたっぷり鳴らす技術が備わっていません。

熟達している側の人がいつもと同じような吹き方をしてしまうと音色が全く溶け合わなくなってしまうので、この場合には熟達している側の人が、そうでない側の人に合わせるようにします。

テンポについてもピッチについても演奏経験が少ない人の場合には予期せぬタイミングで予期せぬ変化が起きてしまうので、この場合もなるべく合わせるようにします。

結果としてそのような二重奏は鳴りが弱く、テンポもピッチも不安定なものになりますが、上達の過程ではこのような状態も認めることにしてみます。

特に初見の練習の際にはこのような状況が顕著になります。
それでも良いので、とにかくその楽器で音を出す、という経験を積み重ねてゆくことが上達の道ということになります。

このような方法は熟達した人にとってもいくつかの点において練習になります。

たとえば曲のなかに出てくる比較的、長い音を伸ばす場所(曲の終わりなど)で、経験の少ない人の出す音はピッチが不安定です。不規則に高くなったり低くなったりします。

このような際にそれに瞬間的に反応して自分自身のピッチを相手に合わせるのは、良い練習になります。
言葉で書くのは簡単ですが、実際にはある程度、高度な技術と言えます。

あるいはまた曲のなかに出てくる16分音符のパッセージなどでは、経験の少ない奏者の場合、そこでいきなりテンポが落ちたりします。音楽的には望ましいことではないかもしれませんが、上達の過程ではこのような状況も受け入れることが有効だと言えます。

その場合には熟達している側の人はそれまでのテンポ感をまったく打ち消して、気配を殺すようにします。

経験の少ない人がなるべくストレスの少ない状態で居られるように工夫するのは、経験豊富な奏者にとっても良い練習になります。

補足:
「鳴り」の点について言うならば、本当に熟達した奏者であるならば1500人ほど入るような規模のホールでモダンの楽器を使って客席の一番後ろまで音が届くような演奏も出来てしかるべき、という考えかたもあります。

このように考えてゆくと、「鳴り」という点ひとつとってみても、熟達した奏者が求められる幅のひろさが実感できるかもしれません。

ある局面では徹底的に「鳴りを殺すこと」、また別の局面においてはその反対。

補足2:
この記事とは逆の内容になりますが、初心者が経験者と一緒に演奏する際にはここに書かれたことと反対のこと、つまり楽器の鳴りを最大限、活かすことを意識するということになります。

それぞれの拍をどの程度まで「重たく」あるいは「軽く」演奏するか

2019年01月12日 | 上達の道筋
それぞれの拍をどの程度まで「重たく」あるいは「軽く」演奏するか、ということは上達の過程において不可欠な問題です。

初心者、中級者はとにかく音符を音にするだけで大部分のエネルギーを使ってしまい、このようなことまで気を配ることが難しいものですが、ある程度の段階になったらこのようなことを考えてみるのは良いことでしょう。

経験上、何も考えないで演奏すると重たくなり勝ちです。

テンポを多少、速くしても重たい状態はそのまま残ります。

それぞれの拍を軽く演奏することが出来るようになると多少、遅いテンポでも音楽が前進してゆく感じは失われません。

全ての拍をなるべく重たくして演奏するようにしてみると相対的に軽い拍がどこにもない状態になるので、そこでは重たい拍、軽い拍という区別をつけることはあまり意味をなさなくなるかもしれません。

全ての拍をなるべく軽くして演奏するようにしてみると、というのは言葉では簡単ですが、実際には技術的な事柄も含めて実現するのが非常に難しいというのが実感です。

これらのことは一体、何を意味しているのか、というようなことを考えてみるのは実際、楽器で音を出してみる練習とならんで頭の体操になるかもしれません。

身体的な違和感

2019年01月08日 | 練習の方法
身体的な違和感を感じたらすぐ練習をやめること。
これは鉄則です。

練習時間には限りがあるのでとにかく練習できる時には練習しておこう、と考えるのは自然なことです。

しかし、少しでも身体に違和感がある場合は身体が「今、ここがおかしいよ」「練習し過ぎると先々、大変だよ」という信号を発しているということですので、とにかくすぐに練習をやめなくてはいけません。

問題は違和感を感じることが出来ない場合です。
この場合、いつまでも練習を続けてしまい、結果として故障につながります。

こちらは深刻な問題につながりかねませんので要注意です。

楽器を演奏するということはやはり自分の身体の状態と向き合いながら暮らしてゆくことになりますので常日ごろから自分自身をよく感じておくことが欠かせません。

注意事項としては以下のようなものがあります。

■あまりにも同じパターンを繰り返し練習し過ぎないこと

これは「反復練習の重要性」ということと反しているように見えますが、身体的な負担という側面から言うと理にかなっています。物理的な練習曲などのあるひとつのパターンなどを繰り返し練習するのは筋肉や運動神経を鍛えるためには良い方法ですが、やり過ぎるとまず間違いなく身体を痛めます。

一時的な故障であればまだ良いですが、ほんの一回の不適切な練習がその後、重大な悪影響となって残る場合がありますから気をつけたいところです。

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身体にかかる負担を少しでも軽くする方法

大型の楽器(バスリコーダー)などでは右手に「指かけ」があったり、あるいは首から楽器をさげるためのストラップ(ひも)を使ったり、あるいはまた床から楽器を支えるための棒を使ったりします。

このような工夫をより小型の楽器でも応用できる場合があります。
テナーはもとより、アルトやソプラノでも「指かけ」を使うという方法があります。
プラスチック製で可動式のものであれば木製の楽器に取り付けることも出来ます。
(ただし、楓や黄楊など比較的柔らかい材で作ってある楽器の場合、表面に傷がつく場合もあるのでこの点は要注意です)

A=415Hzの楽器の場合には装飾的な意味あいのみならず音色に輪郭をもたせるためにあえて重量のある人工象牙を楽器につける場合がありますが、こういうもののない楽器を使うというのも、ひとつの方法です。

経験上、ソプラノ、アルト、テナー、バスのなかで最も奏者に負担が大きいのはテナーリコーダーです。指穴の間隔の広さ、そして楽器の重量を床や奏者の首に分散させることが難しいという点などがその理由です。

見た目が大きいですが、バスリコーダーは意外にも負担が少ない楽器なのでテナー担当の人が身体をやすめるために一時的にやってみる楽器としてバスリコーダーは良いかもしれません

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補足:
練習した後、身体のどこかに違和感がでてしまう場合、それが一時的な練習のし過ぎなのか、それとも長年の間違った方法(姿勢、楽器の持ち方など)によるものなのか見極める必要があります。

一時的なものであれば休めばすぐに元通りになりますが、長年の間違った方法に由来するものは休んでも表面的にしか改善されないでしょう。この場合には奏法自体の根本的な改善が必要になります。

私の見て来たなかではリコーダー演奏の際、左手薬指が伸びきってしまい無駄な力が入っている人を多くみて来ました。

この場合、外から見えているのは左手の薬指だけというように見えますが、実際には腕、肩、そして背骨まで力が入ってしまっている場合が多いようです。

楽器演奏の場合、どうしても楽器に接触している身体の部分には注意がゆきますが、そうでない箇所はおざなりになってしまう場合がありますから要注意です。