「太郎、聞いてくれ、今練習してる曲な、本当は15分くらいの曲なんだけれども最初から最後まで通して全部演奏できたのだ。すごく遅くやったから40分くらいかかってしまったのだけれども」
「ふ~ん、そうなの」
「これは画期的なことなのだ。前やったことある曲なんだけれどもな、どうしてもうまく出来ない箇所が何カ所もあってな、それを修正して新しい方法でやってみたのだ」
「ふ~ん」
「これはもしかしたら歴史に残るくらいの良いものになるかもしれんぞ。なにしろ今までの既存の演奏にはない解釈がたくさん入ってるからな」
「ふ~ん」
「お前は”ふ~ん”しか言うことがないのか」
「だって、その演奏聴いてないから何とも言えんよ」
「よし、それでは俺がお前のために演奏してやるから聴け」
「別に聴かせて、なんて頼んでないけど・・・」
「とにかく聴け。聴いてくれたら、ラーメンまたはとんかつ定食のどっちか好きなほうをおごってやる」
「しかたないから聴いてやるか」
「そしたら耳のあなひらいてよく聴けよ」
♪ ♪ ♪ ♪
40分経過
「どうだった?俺の演奏?」
「すやすや・・・・すやすや・・・・」
「おい、起きろ、俺の演奏はもう終わったのだぞ」
「・・・・・うん、まあいいんじゃないの・・・・・・」
「お前、寝てただろ」
「いいや、ええと、あの、その・・・・・・」
「もう、ラーメンもとんかつ定食も無しだ」
「お前、約束を破るのかよ」
「そしたら、もう一回だけ演奏してやるからちゃんと最後まで聴けよ。そしたらラーメンまたはとんかつ定食だけじゃなくて。ラーメンもとんかつ定食もどっちもおごってやる」
「うひょ~~~~、早く演奏してくれ~~~、最後まで起きてるから」
♪ ♪ ♪ ♪
15分経過
「どうだった?俺の演奏?」
「なんだかずいぶん早く終わったみたいだったけど・・・・」
「ちょっと都合により省略した」
「なんだか、詳しいことはわからんけど、曲の良さが伝わって来るような演奏だったと思う」
「うひょひょひょひょ~~~~~そうだろ!」
「良いなあ。お前は、そんなことで喜べて」
「よし、調子が出てきたからもう1回聴け」
「もう。いいよ。俺だって忙しいんだもん」
「ラーメン、とんかつ定食に、うな重もおごってやる」
「うわ~~~~~~~~~!うな重かよぉぉぉぉぉぉぉ!!!聴く、聴く寝ないで聴く~~~」
「そうだ。うな重だぞ」
「俺、うなぎなんてここ5年半くらいずっと食ったことないから嬉しいなあ・・・なんか嬉し過ぎて涙が出てきた」
「よし、それでは今から演奏するからな最後まで眠るなよ」
♪ ♪ ♪ ♪
1時間10分経過
「どうだった?俺の演奏?」
「とにかく寝ないように必死だった・・・・なんだかずいぶん長い曲になったみたいだったけど・・・・・・・」
「都合によりちょっと演奏の方法を変えたのだ」
「演奏の方法を変えるだけで40分の曲が1時間10分になるのか、変わったやりかただなあ・・・・・」
「まあ良いのだ。ラーメン、とんかつ、うな重をおごるからな。一日では食べきれないだろうからな。何回かにわけたほうが良いな。とにかく聴いてくれてありがとな」
「ひゃっほう~~~~~~~~」