囲碁漂流の記

オチのある話


待てと言えば待つ碁に長き夜なりけり


木犀や雨の閑居の碁三昧

 

 (作者不詳、川柳二句)

 

 

 【古典落語の演題からの巻】

 

■日本列島は狭小とはいえ、東と西とでは、何もかもが異なっている。

東西ほぼ同じぐらい住んだのだが、「会話の仕立て方」からして、まるで違う。

東日本は、テーマや本題が主役であり、報告基調が多い。

西日本は、まずオチを考え、それに沿って話を「おもろく」展開する。

ノンフィクションとフィクションの間にあって、濃淡の差が歴然と存在する。

 

■さて、一人で演じる総合芸術と言えば、落語。

その構成は「マクラ→本題→オチ(サゲ)」である。

起承転結や序破急があり、まずは構成・骨格がしっかり押さえてある。

この辺は、随筆・エッセイ・ブログの世界と同様であろう。

 

■今回取り上げるのは、古典落語の演題の一つ「笠碁(かさご)」。

元は上方落語であったが、東京に移植された。

囲碁をテーマにした人情噺である。

 

あらすじは、こんな風である。

 

ヘボ碁打ちが二人。

(マクラとなる)「碁敵は憎さも憎し懐かしし」の言葉通り、

あれこれ漫談をしながら碁を打っている。

 

一人の男がいつものように相手の家にやってきた。

さっき根岸の友人宅で負けたのだが、

敗因は「『待った』をした」と指弾されたためだ。

今度は、なじみの二人で勝負というわけ。

 

「今日は一つ『待ったなし』で一番」

「それはよろしゅうございます。さ、おいでくださいまし」 

「では、一つ、ここへ」

「こりゃあ、まずいねえ。この石、どけてください」

「『待った』ですか?」

「そうじゃございませんが、どけてもらいませんか」

「だめです」

「そう言うけれど、以前おカネをお貸ししましたね。一度も貸すのを『待った』って言いましたか」

「それはお世話になりました。ですが、期日までに返したじゃありませんか」

「返さなきゃあ、詐欺ですよ」

おかしな雰囲気が漂っていく。

お互いに「ヘボだ」「ザルだ」となじりあう。

ついに「帰れ~」となった。

 

「何でえ。何度ここに大掃除に来たと思っていやがるんでえ。ソバ一杯も出しやがらねえで。しみったれ野郎」

「何言ってやんでえ。もう来るな」

「来るもんけえ」

喧嘩別れである。

 

数日経ち、雨の午後、片方はヒマを持て余している。

「よく降るねえ。こんな時、あいつが来てくれたらねえ。『待った』なんて言うんじゃなかった」

後悔するが、呼びに行くのも気が悪い。

でも、他の相手じゃ駄目だ。

そろそろ来そうだからと、

店先に碁盤を置いて、喧嘩別れした相手を待っている。

 

相手の男も、家でごろごろしている。

女房にうとまれ、やむを得ず「古笠」をかぶってやってくる。

「おや、来やがった。あれ、向こうを向いて歩いてやがる。おっそろしく汚ねえ笠かぶってやがる。こっちを見やがれ、こっちを。碁盤が目に入るというのに。おい、茶と羊羹出しとくれ。あ、向こう行きやがった。素直に来ればいいのに。来やがった。けつまづきやがった。何だい」

碁敵もやってきたはいいが、入りづらい。

待っていた男は「やい!ヘボ!」と呼びかける。

「ヘボって何でえ。こっちが『待ったをするな』と言うのに、待ったを掛けやがって。ヘボはどっちだ」

「言いやがったな。じゃあ、どっちがヘボか。勝負だ」

「こっちだって勝負だ」

「ようし、やろうじぇねえか。待ったなして言ったのは、お前さんじゃねえか。うん、碁盤が濡れているよ。恐ろしく雨が漏るなあ」

 

よく見るとーー「お前さん、笠、かぶりっぱなしだ」


■滑稽話の間抜けオチである。 

待った碁、おしゃべり碁の三文喜劇。

棋力は?といえば、よく見積もっても「一桁の級位」であろう。

とは言え、趣味こそが損得抜きにヒトを夢中にさせるもの。

「日残リテ昏ルルニ未ダ遠シ」

人生の愉しみとなれば、これはこれでいいのだ。

 


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