頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』阿部謹也

2011-02-11 | books

「ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界」阿部謹也 ちくま書店 1988年(原著平凡社1974年)

笛を吹く男についていった、130人の子供たちが消えたという伝説。作り話ではなく、1284年6月26日に実際にあった出来事だという。様々な説を紹介しながら、その当時のヨーロッパの状況を踏まえ、論証してゆく。

学者さんが書く本はこうあって欲しいと思う。やれ景気がどうとか、速読がどうとか、こうすれが人生が変わるとか、啓蒙しようとする気満々の本よりもずっといい。

そんなに分厚い本じゃないのに、すごい読みごたえだった。






ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)
阿部 謹也
筑摩書房
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『ツナグ』辻村深月

2011-02-10 | books

「ツナグ」辻村深月 新潮社 2010年(初出 yom yom vol.12~16)

自分が会いたい死者に、一生に一度だけ会える。ただし死者がも会いたいと望んだときだけ。死者と生者を繋ぐのが使者(ツナグ) 連作短編集の形をとりながら、会いたいと思う者のなぜ、と使者になった者のなぜを描く。

いやいやいや。初めて読む辻村深月は大きな収穫だった。面白いし、グッときた。

・「アイドルの心得」 最初に登場する死者水城サヲリは亡くなった飯島愛のことだろう。飯島愛に会いたいと望む女性の「なぜ」、うまいうまい。そう来たか。次の

・「長男の心得」は、母親に会いたいという工務店社長。かなり横柄で感じが悪い。しかしそんな彼も…うーん。なるほど。嫌な人物の描き方もうまいわけだよ。

・「親友の心得」 親友が自転車で転倒して死んでしまう。彼女をわざと…なのか。後悔と思い出が交錯し、会った死者から告げられた言葉は… これは問題作(という表現があっているかな?)だと思う。年頃の女の子の心の機微が痛いし、ミステリーとしての読みどころもある。これがベストだと言う人が多いと想像する。

・「待ち人の心得」 もてない男が、ばったり街で出会った若い女性と付き合うことになる。なんとも純粋な子だ。ところが突然彼女の行方が分からなくなる。その真相と彼女の謎。私はこれがベストだった。グッときたんですわよ。

・「使者の心得」 なんとここで、使者がなぜ使者になったのか、その経緯が使者の目線で描かれる。連作短編がまさに「ツナガッタ」 死者に会えるという超常現象にも妙に納得してしまった。

暖かいんだか寒いんだかよく分からない最近、心だけは温まった。

では、また。




ツナグ
辻村 深月
新潮社
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読めない

2011-02-07 | books

10年以上前に読もうとした「罪と罰」

何が面白いのかさっぱり分からず、投げ捨てた。

それからだいぶ経って、新訳の「カラマーゾフの兄弟」を面白く読んだので、いつかリベンジしてやろうと思っていたドストエフスキー。

ちょうど重厚な物語を読みたいタイミングだったので、工藤精一郎訳新潮文庫版を読み始めた。

なんだか面白いような気分になっていたのに、上巻の途中から読むパワーが急激に衰えてしまい、結局上巻でリタイヤしてしまった。

私ももういい歳なので、ドストエフスキーが読めないなんて言いづらい。でも読めない。なんでだろう。

仕方ないので、野木丈司「まったく新しいボクシングの教科書」、「妖怪・妖精譚 小泉八雲コレクション」、鈴木大拙「禅とは何か」、辻村深月「ツナグ」、テッド・チャン「あなたの人生の物語」などをペラペラ捲っている。

どっしりした食事じゃなくて、試食をちょりちょりとしているだけだから、自分の栄養にはならないんだろうな、と思いつつ、

では、また。







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映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」

2011-02-03 | film, drama and TV

小説は読んだ。こんなに面白い小説を読めて自分はなんて幸せなんだと思った。映画はあまり期待しないで観た。原作がよくて、映像化されるとがっかりすることがあまりにも多いから。原作を上回ったと言える映像作品だとすぐ思い浮かぶのは「羊たちの沈黙」や「ブレードランナー」

本作は映画ミレニアムや小説の世界を忠実に映像化している。小説の内容はこちら

登場人物がイメージしていたのと違うが、そのズレがむしろ面白い。リスベットはもっと華奢で、日本でリメイクするなら中島美嘉を連想していた。しかしずっとボーイッシュで筋肉質だった。ミカエルはジャーナリストというより肉体労働者(?)のようだった。しかし、観ているうちに慣れる。

色々とおぞましいシーンがあるのだが、文章で読むのとは違って、なかなかスゴイ。ちょっと小学生には見せられないよなー。

ストーリーもいい意味でけっこうややこしい。DVDなら途中で止めてもう一度見たりすることができるから、原作を読んでいなくても十分ついていけるだろう。でも、原作の方がオススメではあるんですが。

では、また。




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映画「ジャガーノート」

2011-02-01 | film, drama and TV

TSUTAYAの発掘良品という、100人の映画通が選ぶキャンペーンで店頭で見かけて借りた。

英国を出発し米国へと向かう大型客船ブリタニック号。爆弾を仕掛けたという電話が。要求は50万ポンド。夜明けには爆発するという。風が強く1200名の乗客をボートで逃がしても助かりそうにない。爆弾処理の専門家が飛行機で現場に向かう。爆弾をとめることは出来るのか…

いやいや。よかった。1974年の作品だけれど、古臭いとは思わない。むしろ最近の作品にある余計なものが全てそぎ落とされていて、シンプルでいい。音楽などバックに流れていない。緊迫感はストーリーや台詞、演技で感じさせるべきであって、余計な音楽で感じさせるのは、映画やドラマの本来に楽しませ方じゃないんだなと、思わせてくれた。

CGなんていらないいらない。

カプリコン1などまだ観ていなくて、この発掘良品に選ばれている作品をまた観ようと思った。





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20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン
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