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『赤頭巾ちゃん気をつけて』庄司薫

2013-09-26 | books
誤解していた。何度も。

作者は女性だと思っていた。女性の書いた甘ったるい子供向けライトのベルだと思っていた。ピアニストの中村紘子さんのエッセイを読んだときだったか、彼女は庄司薫の奥さんだと知って驚いた。するとあの赤頭巾の本は男性が書いたのか…しかもライトノベルでもなかった。日比谷高校3年生の「薫」が「ぼく」という言葉を使いながら描く、1969年とか知性とか恋愛とか。

読み始めたら似てるなと思った。村上春樹の文体に。解説を読むと、村上春樹が影響を受けたとあった。おっと逆ではないか。芥川賞をとったときには、賛否両論だったそうだ。確かに1969年当時だったら、軽すぎるという批判があって当然だと思う。

作者は日比谷高校出身だけれど、1937年生まれだから1969年当時は32歳。32歳が18歳の気持ちを表現したということになる。何と言ったらいいか。軽い衝撃を読みながら何度も受けた。

軽い文体なのに、中身は濃い。

ぼくはそのちょっとかがみこむようにしている彼女の白衣の胸元から、彼女の眩しいような白い裸の胸とむき出しの乳房を、それこそほぼ完全に見ることができた(そしてもちろんもう吸いつけられたみたいに見てしまった、言うまでもないけれど)。

この新しい敵っていうのは、おまえたちみたいにはっきりとマークできるような見事な相手じゃない。なんともつかまえどころがないような得体の知れないような何か、時代の流れそのものみたいな何かなんだ。 

小説だけじゃないよ。絵だってなんだってみんなそうなんだ。とにかく売りこむためには、そして時代のお気に入りになるためには、ドギツく汚くでもなんでもいいから、つまり刺激の絶対値さえ大きければなんでもいいんだ。 

何を食べどんなかっこうしてても、たとえそういうことがぼくのデリカシーや「人間的品性」なんかを損うとしても、もしそんなことでダメになるようなデリカシーや品性なら、そんなものはもともとどうでもいいようなものなのじゃあるまいか。そして、でも……そうだ。ぼくは思わず端をとめた。そうだ。でもそうやって、どうでもいいと棄てていって、いったい何が残るだろうか? 

非常に質の高いエッセイ+私小説+哲学書だった。こういう大学生くらいまでに読んでおきたかったなという本で、読んでなかったものがポロポロあるので、少しずつ拾ってる最中。

四部作だそう。もちろん、残りも読みます。

では、また。

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