Civilian Watchdog in Japan-IT security and privacy law-

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イタリアDPAであるGaranteが大手食品・食料品配送会社Deliveroo Italyに対し計250万ユーロ(約3億2500万円)で制裁金と改善命令

2021-08-04 10:45:49 | 個人情報保護法制

 イタリアのDPAである”Garante(Garante per la protezione dei dati personali )” は、約8,000人のライダーの個人データを違法に取り扱ったとして、食品・食料品のデリバリー会社Deliveroo Italy(以下、Delliverooという。本部は英国) (注)200万ユーロと50万ユーロの罰金を支払うよう命じた。同時にGarante の命令に準拠するために、Delliverooは、一定の期間内に、当局によって指示された要件に適応することによって、労働者のデータの処理を変更する必要がある旨命ぜられた。

 デジタル・プラットフォームによる食品および食料品の配送活動を行う同社の英国本社に対しても行った調査から、ヨーロッパおよび加盟国のプライバシー法、労働者保護法、およびデジタルプラットフォームで働く人々を保護する最近の法律の多数かつ重大な違反があることが明らかとなった。 

 一方、わが国では、ウーバーテクノロジー社のフードデリバリーサービスが有名であるが、当初から、労働基準法の労働者ではない、すなわち労災保険法の適用がないとされた。労災保険を利用できれば,治療費は労災保険から全額支給されるし、ケガで仕事を休まなければならなくなっても、休業期間中,約8割の給料が補償される。

 その他の問題指摘を受けて、2019年10月に「ウーバーイーツユニオン」が設立されたのは周知の事実である。同ユニオンの主張・要求は「事故やケガの補償」「運営の透明性」「適切な報酬」の三本柱である、

 特に2番目の「運営の透明性」がEU加盟国ではプライバシー侵害として大問題となり、本ブログでもこれまで取り上げてきたとおりである。

 この2番目の柱に関し、同ユニオンは「配達員は、ウーバーイーツのアプリ経由で配達の依頼を受けていますが、アカウントを一方的に停止されたり、仕事を振られなくなるようなことがあります。私たちは会社に対して、アカウントの一方的な停止をやめ、配達員の評価や、アカウントの停止手続などについて説明責任を果たした運営の透明性を求めます。」と説明しているが、EU加盟国のように保護機関による保護法違反による制裁金措置は期待していないようである。

 その背景には、わが国の情報保護委員会の法執行機能の低さがあることはいうまでもない。

  本論に戻る。ライダー保護に関するGaranteの制裁や改善命令については、筆者は7月19日の本ブログ「イタリアの情報保護庁(Garante)はギグエコノミーのパフォーマンス管理アルゴリズムの使用をめぐりフード・デリバリー・ライダー管理会社Foodinhoに罰金260万ユーロを科す」で詳しく解説したとおりである。

 Garanteだけでなく、EU加盟国のDPAや欧州議会がライダー保護問題に極めて注目していることから、あえて再度Deliveroo Italy問題を取り上げた次第である。

1.Garanteの事実関係と親会社の具体的問題点の解説

 プライバシー当局の行動は、イタリアの食品配達プラットフォームの労働者のデータを保護し続けている。共通する最大の問題は、親会社のアルゴリズムの透過的な使用の欠如とワーカー(ライダー)・データの過剰な収集である。

 これらのDeliveroo Italyの違法行為は、とりわけ、注文の割り当てと勤務シフトの予約の両方で、ライダーの管理に使用されるアルゴリズムの透明性の欠如に関係していた。

 2020年末にシフト予約システムを今後使用しないことを宣言した同社は、注文割り当てシステムの機能に関する正確な情報をライダーに提供し、完全に可能な人間の介入を得る権利を保護するため、システムの機能を評価し、必要に応じて大幅に修正するなどの措置を特定する必要がある。

 いずれの場合も、同社は定期的にアルゴリズムの結果の正確さを検証して、歪曲または差別的な影響のリスクを最小限に抑える責任があった。

 今回のGaranteのチェックにより、Deliverooは、デバイスの継続的なジオロケーション(ユーザーの地理的位置を取得するための技術および機能)を通じて、ライダーの作業パフォーマンスについても必要以上に綿密なチェックを実行していることが明らかになった。

 これは、注文を割り当てるために必要なものをはるかに超えていた(たとえば、位置の12秒ごとの検出、保管6か月間のすべての通過点等)-そして、カスタマーケアとのコミュニケーションを含む注文の実行中に収集された大量の個人データを保存することによって。実際、システムは、推定時間(レストランからの食品からの引き出しや顧客への配達など)または事前に決定された時間(たとえば、彼がピックアップを受け入れた場所からのライダーの実際の移動時間)に関する数分の偏差に関連するデータを収集していた。

 労働者の遠隔操作も導出できる装置の使用のために、設置前に特定のニーズ(職場での安全性、会社の資産の保護)の存在、そしていずれにせよ労働組合協定の規定または労働検査官の承認を必要とする労働者法に違反するものであった。

2.Garanteの改善命令の内容

 Gatante は、今回明らかとなった違反を修正するためにDeliverooに60日、アルゴリズムへの介入のプログラム修正を完了するためにさらに90日を猶予期間を与えた。

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(注) DeliverooはイギリスのDeliveroo社が運営するフード・デリバリー・サービス。Deliveroo社はイギリスのロンドンに本拠地を構えるベンチャー企業で、2013年に創業。現在はイギリスの他、フランス、オランダ、ドイツ、ベルギーといった欧州各国でも事業を展開している。シンガポールにも早い段階から進出しており、現在ではGrab Food、そしてドイツ発祥のfoodpandaと並んでメジャーなフード・デリバリー・サービスとなっている。

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