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 欧州委員会が「EU域内緊急セキュリティ強化行動戦略目標」等を採択(第1回目―その2)

2010-12-14 10:22:03 | サイバー犯罪と立法

行動2: 犯罪の浸入から経済を守る。
 犯罪ネットワークは、合法的な経済におけるそれらの利益を投資するために腐食に依存し、かつ公的機関への信頼と経済体制への信頼を腐食させる。 腐食と戦うために政治的意思を維持することは重要なキーである。 したがって、EU全体としての行動と最も良い取組みを共有することが必要であり、欧州委員会は2011年中に「加盟国の反腐食の努力」をいかにモニターして、どう支援するかにつき具体案を提出する予定である。

 政府や規制監督により免許を与えたり、承認、調達契約または補助金を与える原因となりうる政策は、犯罪のネットワークによる腐食から経済を保護するために開発されるべきである('行政的アプローチ'という)。 欧州委員会は、2011年に最善の実践を開発するために国家間の接点のネットワークを設立して、かつ実際的な問題につきパイロット計画を支援することによって、実務的な後援を加盟国に提供する予定である。

 模倣品(counterfeit goods)は、組織化された犯罪グループのために大きな利益を生み出し、EUの単一市場の取引パターンを歪め、欧州産業をひそかに害するとともに、欧州市民の健康や安全衛生を危険な状態に導く。
 したがって、委員会は模造品と著作権侵害に対する今回の行動計画の文脈においてより効果的な知的所有権の行使を伸ばすべく、あらゆる適切なイニシアティブを取るであろう。一方で、インターネットによる模造品の違法販売と戦うため、加盟国の税関当局や欧州委員会は必要な法律を制定し、国家間の接触ポイントや最善の実務の交換制度を確立すべきである。

行動3: 犯罪活動から得られた資産の押収
 加盟国が犯罪ネットワークの金銭的誘因と戦うために、加盟国が犯罪活動から得られた資産の捕獲(seize)、凍結(freeze)、管理および押収できるようにし、また犯罪者の手に戻らないことを確実にしなければならない。

 このために、委員会は、2011年に押収でのEUの法的な枠組み (筆者注9)を強化するために「法案」を提案する予定である。とりわけより多くの第三者の押収(confiscation) (筆者注10)と拡張的な押収(confiscation) (筆者注11)を許容して、加盟国の間の非有罪の場合の基礎となる押収命令 (筆者注12)の相互承認を容易にする予定である。

 加盟国は2014年までに必要な資源、権限や教育機能ならびに関連情報の交換機能を備えた「犯罪資産回収局(Asset Recovery Offices)」 (筆者注13)を設置しなければならない。 欧州委員会は2013年までに共通的な指標を開発する予定であり、加盟国はこれらの回終局の実効性を評価するべきである。 さらに加盟国は2014年までに例えば、犯罪物がそれらが結局押収される前に、凍結資産がそれらの価値を失わないようことを保証するために資産管理局を創設することなど必要な制度上の整備を行うべきである。 平行して、欧州委員会は、2013年に犯人グループが押収された資産を再び獲得するのをいかに防ぐかに関する最も良い実践ガイダンスを提供する予定である。

第2目標: テロおよび急進主義やシンパ勧誘活動(recruitment)を阻止する
 テロの脅威は絶えず重大な課題のままであり、かつ増加している。 (筆者注14) テロ組織は、2008年のムンバイ攻撃(筆者15)で示されるように、適合して、革新されており、2009年クリスマスのアムステルダムからデトロイトまでの飛行に対する試みられた攻撃は、最近いくつかの加盟国に影響しながら発見された陰謀を起こしている。 もう1つの脅威は、組織化されたテロリストと過激派プロパガンダに基づいて彼らの過激思想を開発し、インターネットで訓練資料を見つけたかもしれないいわゆる'一匹おおかみから来る。テロと戦うための我々の努力は、予防活動 (筆者注15)を含む一貫性を持ったヨーロッパの取組みとともに脅威に有利な立場を保つために発展する必要がある。(筆者注16) さらにEUは、社会機能と経済 (筆者注17)に不可欠な輸送サービス、エネルギー発生および搬送を含む重要インフラを指定して、それらの資産を保護する計画を適所に置き続けるべきである。

 加盟国は、欧州委員会の全面的な支援ならびにEU テロ対策調整役により補強されたかたちでこの目的を実現する上で協調し、かつ効果的な努力で果たす上で第一義的役割を担う。

行動1: 地域共同体に急進主義者(radicalization)やシンパ勧誘を防ぐのに権限を与える。
 テロ行為につながる急進主義は、レベルが最も影響を受けやすい共同体社会で最も影響されやすい個人を最も緊密に包み込むことが最も効率的な方法である。 それは地方公共団体、市民社会、および脆弱性のある共同体社会の主要なグループとの厳密な協力を必要とする。 急進主義者やシンパ勧誘活動がそのコアであり、また全国レベルの課題として残る。

 いくつかの加盟国がこの領域に具体的な施策の流れを発生させている。そして、EUの特定の都市はローカルな地域密着型の取り組みと防止政策を開発した。 これらの率先的な活動はしばしば成功し、また欧州委員会はそのような成功体験.19の共有を容易にするのを支援し続けるであろう。 (筆者注18)

 まず第一に、2011年までに地域の委員会と協力して、欧州委員会はテロリストの成功談に挑戦すべく、急進派への認識と対話技術を高めるために経験、知識および良き実践例を蓄え、オンライン・フォーラムやEU全体会議によって支援されたEU 急進主義への認識強化ネットワークの創設を促進するであろう。 このネットワークは、政策立案者、法施行機関、セキュリティ担当官、検察官、地方公共団体、研究者、当該分野の専門家および犠牲者グループを含む市民社会団体から成るであろう。加盟国は、テロリストの成功談の代替手段を提供する公開討論において、確実な役割モデルとオピニオンリーダが積極的なメッセージを声にして出すよう奨励しながら、物理的またはバーチャルコミュニティ空間を創造するようネットワークを利用してアイデアを一般化すべきである。

 また、欧州委員会は市民社会団体がインターネット上での暴力的な過激派プロパガンダを曝露させ、その本来の意味を翻訳させ、それらに挑戦する仕事を支援するであろう。

 第二に、委員会は、2012年中に加盟国がうまくいっている行動の例を提示する機会を持っている急進派(radicalization)と新人募集の防止での閣僚会議が過激派イデオロギーを打ち返すのを構成するであろう。

 三番目に、欧州委員会はこれらへのイニシアチブと議論の観点から、どのように新人募集の阻止や離脱ならびにリハビリテーションを可能にするかにつき急進主義の源にさかのぼって加盟国の努力を支持するために行動と経験のハンドブックを策定する予定である。

行動2: 基金と武器等のテロリストのアクセス手段を断ち切り、かつそれらの相互作用を続けること。
 欧州委員会は、2011年中にテロや関連する活動を阻止するため資産の凍結に関するEU運用条約第75条の下での行政的手段の枠組みについて考え出すことを検討する予定である。 EUの行動計画は、2008年は爆薬物、また2009年は化学、生物学、放射性や原子力物質(CBRN)へのアクセスを阻止する計画につき優先的に実行するために必要な立法上および非法的措置を通して行うことが必要である。 これは2010年に委員会によって提案された一般的な爆薬を作るのに使用される原料となる化学物質に制限する規則案の採用を含む。 また、それは、加盟国がCBRN物質に関する事故の危険を国家計画を考慮に入れることを確実にするため欧州CBRN法施行専門部隊(European network of specialised CBRN law enforcement units)」の設立を意味し、また、その他の手段としてCBRNの物質に関係づけられた事故に関する欧州察機構の「早期警告システム(Early Warning System)」の法施行体制を確立することである。

 これらの行動は加盟国との綿密な調整を必要として、適切である場合は官民協力により実施すべきである。 爆発物と大量破壊兵器(生物、化学または核)につながる物質にアクセスする手段を得るテロ組織や国家の活動家の危険性を最小とすべく、EUは二重用途輸出管理規制制度とその実施をEU境界および国際的に強化すべきである。

 アメリカ合衆国とのTerrorist Financing Tracking Programme協定の署名に続いて、EUがおひざ元に保持された金融メッセージングデータを抜粋して、分析するよう欧州委員会は2011年に政策を立てるであろう。

行動3: 輸送体制の保護
 欧州委員会は、脅威やリスクについて継続的評価に基づき航空・海事のセキュリティのためにEU体制をさらに発展させるであろう。 それは欧州の地球観測の先導役であるガリレオ(Galileo)や全地球的環境・安全モニタリング (Global Monitoring for Environment and Security:GMES) (筆者注19)などのEU計画を利用することによってセキュリティ研究のテクニックと技術で進歩させるであろう。 それは、可能な限り高いレベルのセキュリティや旅行の安全性、コスト管理、プライバシーの保護の間のより良いバランスを求める大衆に保証すべく働くであろう。すなわち、それは貨物運用のモニタリングを含む検査と法執行体制について継続的な強化を強調するであろう。 国際協力は本質的なものであり、セキュリティの世界的な標準の改善を助け、一方で支資源の効率的な使用を確実にし、またセキュリティチェックの不要な二重化を制限する。

 ここに陸上交通のセキュリティのより広くかつ複雑な部門ならびに特に乗客輸送(筆者注20)の安全対策のより活発なヨーロッパの取組み範囲および正当化事由がある。欧州委員会は、関連するインフラストラクチャを含む、(a) ローカルおよび地方の鉄道、および(b) 高速鉄道をカバーするために都市交通セキュリティに対する既存の仕事を広げるつもりでいる。これまで、EUレベル活動は服従的な関心やヨーロッパが連帯してアプローチを必要とする「国際海事機関(International Maritime Organisation:IMO)」「国際民間航空機関(International Civil Aviation Organisation:ICAO)」に相当する国際機関の不在を反映して情報と最も良い習慣を交換することに制限されてきた。
 欧州委員会は、更なる行動に向けた第一歩として、輸送と法施行にかかる専門家を入れた委員会が議長となり、これまでの航空や海上運送にかかるセキュリティの経験を考慮に入れた「陸上交通セキュリティ常務委員会」および公的および個人的な利害関係者の意見交換を行う「フォーラム」の設立を探るのが役に立つと考えている。

 第三国からの輸送をモニターしている航空貨物のための手続に磨きをかけ、強化する現在進行中の仕事は最近時の出来事の見地から加速された。

 輸送安全保障問題は、2011年中に発行されるであろう「EU運輸安全政策(Transport Security Policy)」に関する欧州委員会の伝達(コミュニケーション)で詳細に記載される予定である。

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(筆者注9) 「マネーローンダリング、手段の発見、追跡、凍結、押収および没収ならびに犯罪収益に関するEU枠組み決定(2001/500/JHA)(2001年6 月26日)。なお、決定の原本参照。

(筆者注10) 「第三者押収」には捜査を受けたり有罪となった人から第三者に移送された資産の押収を含む。

(筆者注11) 「拡張された資産押収権限」とは、犯罪容疑にかかる資産と特定の犯罪行為の間に関係を証明する必要が全くないように犯罪捜査手続の範囲を直接超えて資産を押収する権限をいう。

(筆者注12) 刑事裁判において所有者の前科にかかわらず非有罪手続は刑事裁判所で資産の凍結および押収を許容する。

(筆者注13) 欧州連合理事会決定(Decision2007/845/JHA)、各加盟国が自国領土内に少なくとも1つの犯罪資産回復局を設置することを必要と定める。同決定の正式名は”Council Decision 2007/845/JHA of 6 December 2007 concerning cooperation between Asset Recovery Offices of the Member States in the field of tracing and identification of proceeds from, or other property related to, crime”である。

(筆者注14)最新調査結果については、欧州警察機構の「2010年テロ状況および傾向に関する調査報告(2010 Terrorism Situation and Trend (TE-SAT 2010) Report)」を参照。

(筆者注15) 「ムンバイテロ攻撃」は、2008年11月26日夜から11月29日朝にかけて、インドのムンバイで外国人向けのホテルや鉄道駅など複数の場所が、イスラム過激派と見られる勢力に銃撃、爆破され多数の人質がとられまた殺害されたテロ事件である。(Wikipediaから引用)

(筆者注16) 2005年11月30日に欧州理事会で採択された「EUのテロ対策戦略(Doc.14469/4/05)」は、「阻止(prevent)」、「保護(protect)」、「追跡(persue)」、「対応(respond)」の4つの取組みを設定した。なお、さらに詳細は「EU テロ対策政策:主要な成果および今後の挑戦課題(The EU Counter-Terrorism Policy: main achievements and future challenges' - COM(2010) 386)」を参照。

(筆者注16-2)EUのテロ対策戦略の専用サイトがあり、最近時の具体的取組みをフォローするうえで参照すべきである。また、EUの行政、立法機関である「欧州連合理事会」、「欧州委員会」、「欧州議会」はそれぞれテロ対策専門サイトを用意している。
その内容を比較すると基本的な項目は共通するものの、個別テーマの内容となると理事会や委員会が最新動向をフォローしている点は言わずもがなである。

(訳者注17) EUの重要インフラの定義指令(COUNCIL DIRECTIVE 2008/114/EC of 8 December 2008 on the identification and designation of European critical infrastructures and the assessment of the need to improve their protection)は、テロの脅威によりその範囲は広がっている。

(訳者注18) EUにおける急進主義やシンパ勧誘と戦う戦略(the EU strategy for combating radicalisation and recruitment to terrorism (CS/2008/15175) )の一部として、欧州委員会はその調査を支援しまた加盟国における急進主義や勧誘活動の研究のため「欧州急進主義専門家ネットワーク(the European Network of Experts on Radicalisation)」:英国ロンドンに本部(the change insitute)」を設置した。例えば地域社会社会の政策、対話や刑務所内での急進派対策等加盟国主導型のプロジェクトであり、同プロジェクトは約5百万ユーロ(約5億5千万円)をテロ被害者の協力化ネットワークに提供している。

(筆者注19) “GMES”は”Global Monitoring for Environment and Security:GMES”をいう。

(筆者注20) 欧州理事会の「2004年3月25日テロと戦うための宣言(Declarration on Combating Terrorism)」参照。


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