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欧州司法裁判所AGがGoogleを巡るEUデータ保護指令(95/46/EC)等の解釈につきスペイン裁判所に意見書(その1)

2013-07-14 19:42:26 | 個人情報保護法制


Last Updated:Feburary 16,2021
 

 筆者の手元に米国のローファーム・サイト(Inside Privacy)や英国のローファーム・サイト(Out-Law)から興味深いブログが複数届いた。 (筆者注1)
6月25日、欧州司法裁判所(Court of Justice of the European Union:CJEU)のNiilo Jääskinen法務官(Advocate General:AG)が、スペイン裁判所から出されていたスペイン住民のGoogle(検索エンジン・プロバイダー)の検索削除権に関する一連の照会に対し先決裁定意見書(opinion) (筆者注2)を提出したというものである。

 CJEUにおけるこの種の意見書は初めてであり、その法的意義もさることながら、特に、(1)「データ主体による削除請求権(right to be forgotten)」
(筆者注3)問題は2012年1月25日に公表された欧州委員会の「電子化社会の進展に対応した個人情報処理とこれら情報の自由な移動に関する規則(最終案)( Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on the protection of individuals with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data (“General Data Protection Regulation”(以下、「データ保護一般規則(案)」という)」との関係、また(2)その実現に向けて検討すべき技術面の課題や限界に関するENISA(European Network and Information Security Agency)の3つの勧奨事項報告書に関する問題を正確に取り上げるべき時期にあると思う。

 なお、筆者は2012年3月26日ブログ「EUのENISAがEU情報保護指令に代替する規則草案等支持を前提に2つの勧奨研究成果公表とフォーラムを開催」において欧州委員会の保護一般規則(案)の立法化問題とENISAの勧奨報告書の内容につき解説した。今回は、さらにENISAのその後の問題提起内容につき一部重複を覚悟で改めてフォローする意義を考えた。

 この問題につき、欧米の関係メディアの今回の先行裁定にかかる解説記事(ブログを含む)を読む限り、これらの点を網羅しているものは皆無であった。その意味で改めて本ブログをまとめることとした。

 また、法務官意見書の内容と極めて関連するFacebook等SNSプロバイダーのEU内の本拠地と適用保護法問題に関する2013年4月22日のドイツ: シュレスビッヒ・ホルシュタイン行政裁判所(OVG)判決の意義を併せて解説する。

 さらに、CJEUの裁判制度の特殊性や法務官の先行裁定の意義等についても適宜補足説明する。

 今回は,
3回に分けて掲載する。

1.本先決裁定に係る照会事項のこれまでの裁判経緯

(1)裁定上の論点
①EUデータ保護指令(95/46/EC)の下における領域の範囲と国内適用問題
②検索エンジン・プロバイダーはデータ管理者(data controllers)であるか。
③欧州委員会が提案する「データ主体による削除請求権(right to be forgotten)」が、欧州連合基本権憲章(Charter of Fundamental Rights of the European Union )第8条(Article 8:Protection of personal data)やEUデータ保護指令(95/46/EC)等にいう「データ主体による削除請求権(right to be forgotten)」としてEUの一般保護原則として適用されうるか。

(2)本裁判手続きのこれまでの経緯

 1998年前半に新聞記事の報道記事に取り上げられたスペイン人の個人のデータ削除要求問題が引き金となった。

 2010年に彼(A氏)はグーグル・スペインに対し、グーグルユーザーが検索エンジンを用いて新聞記事に関し自分の名前を入力してもリンクできないようにするよう申し入れた。彼が接触した新聞社は、関連データの消去を拒否した。このため、A氏はスペインのデータ保護機関(Agencia Española de Protección de Datos: AEPD)に苦情を申し入れた。

  AEPDは調査・検討した結果、Googleに対し検索エンジンのインデックスを撤回させるべく必要な手段をとること、また、今後同データへのアクセスを不可能にするよう命じる決定を行った。

 Googleはこの問題につき司法裁判所の判決前手続き「先行判決(preliminary ruling)」を求めるべく、スペインの裁判所にこの決定に対する控訴を行った。

(3)AGの意見書内容(EU保護指令における適用地問題と該当国の国内保護法適用問題)(なお、この解説部分(3)と(4)は“Inside Privacy”の解説ブログから引用した。その理由はIT専門的な視点から意見書内容を解説していると考えたことによる)

 AGは、Googleの検索エンジンがスペイン人のユーザーの眼が個人の評判を狙ったとしても、そのことはスペインの保護法の適用の引き金とならないと断言した。

 特に、EU保護指令第4条第1項(筆者注4)の解釈につき、指令適用の地域を完全に調和させるべく「紛争の重要性から見た中心地(centre of gravity of the dispute)」という新たな判断基準を追加する必要はないと論じた。 

  むしろ、関連する質問事項であるスペイン国内において、Googleが第4条第1項にいう「データ管理者の設置地における活動の文脈においてデータ処理を行っていたか」という問題であろうと指摘した。

 この問題に関し、AGはGoogleの主張点すなわちGoogleの検索エンジンにかかる個人データの処理はスペインで行っておらず、同社の広告機能の商業代表部門としての活動のみであるという意見に好意的な立場を示した。

 しかしながら、AGは指令適用地域につき次のような見解を示した。

 ビジネスモデルの観点から見てインターネット・プロバイダーをどのように判断するか。通常、キーワード広告(keyword〔……〕 advertising)にもとづき決せられる。このキ-ワード広告〔….〕につき責任を負う企業は、インターネット検索エンジンにリンクさせる。〔and〕検索では全国ベースの広告市場の存在を必要とする。

 本事件において、Googleスペインはスペインの広告市場に参照する橋として活動しており、AGの見解はその十分な結びつきを提供した。その結果、AGは法廷は個人的な処理がコントローラーの文脈の中で次のように行われたことを明示すべきことを提案した。

「PRや販売広告スペース目的で、EU加盟国にその国の国民に向けた活動に適合する事務所や子会社を設置する目的で検索エンジンの提供を保証しているか。」

 重要な点は、AGはEU以外の国で参加しうるであろう技術的なデータ処理運用に含まれる設置が必要であるとは考えていないことである。また、AGは会社グループの場合、別の法人格(単一のデータ管理者概念)ではなく1つの機構として扱われるべきであるという見方を支持し、また経済的に見た運営者は1つの機構として扱われるべきであり、個人データの処理に関する個人的な活動に基づき分断すべきでないと考えていることである。 

(4) AGの意見書内容(ISESPはデータ管理者(コントローラー)であるか?)

 この問題に関し、AGはGoogleが個人データの処理しているか否かという問題に関しては比較的ぞんざいに対処している。特に、姓名、映像(images)、住所、電話番号、記述文等のコピー、索引付け、キャッシュメモリーに格納(caching)、ソースウェブページの表示(display of source web pages)は「処理(processing)」を構成すると述べているのみである。これら個人データの特性はインターネット検索サービス・プロバイダーにとって未知のままである、またはソース・ウェブページの中の個人データはある意味で無作為であるという事実はこの結論を変えないであろう。

 さらに、検索条件としての所与の姓や名を通じて行う自然人の間接的認証(indirect identification)は、「検索結果〔….〕はインターネット・ユーザーに対し同一名の個人間の区別において限定的なリンクを明らかにする。 

 ISESPが個人データのプロバイダーであるかどうかに関し、AGはEU保護指令の解釈は「バランスが取れかつ合理的な結果を実現すること」ならびに「実質的にスマートフォン、タブレットやノートPCを持つ人々に対するインターネット環境を踏まえ」行うことを提案する。 

 AGの意見書はこれらの状況はカバーされていない。とはいうものの、AGは以下の2つに状況を分けて区別した。

(A)AGの見方では、ISESPは第三者のウェブページ上の個人データのコントロールを機能情報位置の提供道具を提供するに過ぎない。

 むしろ、その役目は電気通信事業者やその他の放送事業者(これら事業者の場合、主たる管理者は情報プロバーダーである)と類似の機能である。インターネット検索エンジン・サービスは、統計的事実以上の他の意味で個人データの存在に気づいていないし、事実上情報管理者の責務を果たしてもいない。また、ISESPは原則としてキャッシュメモリーのコンテンツを制御しない。 

(B)これと対照的に、ISESPはキーワードを関連するURLアドレスにリンクさせる検索エンジンにインデックス中に含まれる個人データのコントローラーではある。また、もし、彼らがウェブページのロボット検索排除プログラム(exclusion codes on a web page) (筆者注5)を遵守しないまたはウェブサイトから受けた要求にも係らずキャッシュのウェブページを更新しないときは、キャッシュメモリーのコンテンツのコントローラーでもある。 

 これらのケースでは、ISESPは保護指令において次の事項を含むコントローラーに課されるすべての義務を守らなければならない。

・「データ処理に係る法的根拠の要求要件」:AGの見解によるとISESPは原則として指令第7条(f)号に従い合法的利益基準に依存することが出来る。 (筆者注6)

・「保護指令第6条にいうデータの品質保持原則」:AGは、検索用語に対応したデータが表示されるかまたはリンクされたウェブページが表示されれば十分であると考える(筆者注7) 

(5) AGの意見書内容(現行保護指令上「忘れられるべき権利」は認められるか?)

 AGはデータ主体による自身のデータにつき「削除権」や「ブロック権」、さらに「第三者提供の反対権」、「忘れられるべき権利」という一般的な疑問点につき論議したが、いずれも否定的に答えた。 

 AGは、特にデータ主体には、自身の情報につきデータ主体の主観的好みに基づいて第三者のウェブページにおいて合法的に公表された情報のインデックスを阻止すべくISESPに向け強制する権利はないとした。

 欧州委員会がまとめた保護一般規則(案)と比較して、現行保護指令にはそのような権利は備わっていないとした。 

 欧州連合基本権憲章(Charter of Fundamental Rights of the European Union)第8条 (筆者注8)や欧州人権条約(European Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms:ECHR)に基づいたとしても同権利は保証されない。それとは反対に個人情報の保護と私生活の権利は絶対的なものではなく、表現の自由、情報の自由やビジネスの自由など他の基本的権利とバランスをとる必要がある。

  AGの意見は、忘れられるべき一般的権利はとりわけ結果的に見て、非公開のパーティでの非難されるべき公開されたコンテンツに関する重要な権利を犠牲にするであろうというものである。 

(Inside Privacyブログの結論部分)

・AGの意見書はEUの保護指令の重要な解釈上の観念や原則につき検索エンジンにみの適用を十分に越える斬新的な方法を含む。

・AG自身が意見書で「インターネットと関連してデータ保護の専門家にとり保護指令第4条の解釈はかなりの困難であったことは驚きに当らない。法廷がこれらの点につき判決でいくらかでも光を当てることを期待する」と認めていることが注目される。

2.「データ主体による削除請求権」に関する2012年12月EU委員会による「データ保護一般規則(案)」

(1)規則案の提案の背景、検討経緯
2012年1月25日、欧州委員会は個人情報保護に関するEUデータ保護一般規則(最終案)( Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL:on the protection of individuals with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data (General Data Protection Regulation))を公表した。

 同提案書は全文で119頁である。主な改正事項は、EU加盟国内の規制のあり方につき、(1)これまでの位置づけを「指令」から「規則」へ格上げ、(2) 従来の18年前に策定した「指令(Directive)」から「規則(Regulation) 」に格上げ (個別国に立法を待たずに運用、解釈等の一元化が可能となる)、(3) 個人データ保護の権利の強化(自己情報コントロール権の強化など)、(4) EU域内でのデータ保護ルールの一元化(EU域内企業にとってメリット)、(4) グローバル環境でのデータ保護ルールの詳細化(第三国へのデータ移転ルールの詳細化など)等である。
 
 以上述べた、EU規則案策定に至る経緯やわが国の法制との比較等主な問題点は、2012年4月に(社)電子情報技術産業協会・情報政策委員会「EUデータ保護指令改定に関する調査・分析報告書」のサマリー部分がほぼ網羅しており、加盟国政府や議会資料と比較しても遜色ないと思えることから、あえて本ブログではその説明は省略する。(同報告書は全91頁で、「付録2:EUデータ保護規則案 条文和訳集(仮訳)」が添付されており、貴重な参考資料といえる。本ブログでも、適宜参照した)。また、JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が平成23年度に開催した「個人情報の安心安全な管理に向けた社会制度・基盤の研究会」用に全文を仮訳している。ただし、訳語自体の正確さで見ると疑問が生じる。例えば3.4.4.4. 第4節- データ保護職員 3.4.4.4. Section 4 – Data protection officerの例で見てみる。これは「データ保護担当役員」または「データ保護オフィサー」(前述の「情報政策委員会」の訳文)とすべきであろう。

(2)欧州議会「産業・調査・エネルギー委員会(Industry, Research and Energy Committee :ITRE)」の保護規則案の支持意見取りまとめリリースの要旨
 2013年2月20日、欧州委員会はITRE(意見書の作成者はショーン・ケリー(Seán Kelly )議員(アイルランド選出)が規則案を支持する意見書をまとめた旨報じた。同時に欧州委員会は目下「市民の自由、司法および域内問題委員会(Civil Liberties ,Justice and Home Affairs Committee)」においてそれまで出された修正意見を統合後、同委員会の意見書案 (筆者注9)を本年4月に公表すると発表した。

 実際にどうなったかにつき、筆者なりに調べたので、以下のとおり補足する。

①2013年1月16日、「法案修正意見集約報告(DRAFT REPORT on the proposal for a regulation of the European Parliament and of the Council on the protection of individual with regard to the processing of personal data and on the free movement of such data (General Data Protection Regulation))」(全218頁)が第一読会に提案された。
 続いて、3月上旬に次のとおり全10回に分けて各委員からの修正案が取りまとめ役であるドイツ選出で「緑グループ/欧州自由連盟(Greens/European Free Alliance)」会派に属しているジャン・フィリップ・アルブレヒト(Jan Philipp ALBRECHT) (筆者注10)により提出されている。

② 2013年3月4日 「AMENDMENTS (1) 351 – 601」(全173頁)

③ 2013年3月4日 「AMENDMENTS (2)602 – 885」(全155頁)

④ 2013年3月4日 「 AMENDEMENTS (3)886 – 1188」(全163頁) 

⑤ 2013年3月4日 「AMENDMENTS (4)1189 – 1492」(全154頁) 

⑥ 2013年3月6日 「AMENDMENTS (5)1493 – 1828」(163頁)

⑦2013年3月6日「AMENDMENTS (6) 1829 – 2090」(全134頁)

⑧2013年3月6日 「AMENDMENTS (7)2091 – 2350」(全129頁) 

⑨2013年3月6日 「AAMENDMENTS (8) 2351 – 2617」(全147頁) 

⑩2013年3月6日 「AMENDMENTS (9)2951 – 3133」(全175頁)

⑪2013年3月8日 「AMENDMENTS (10)2951 – 3133」(全111頁) 

(3)英国政府や議会の資料内容
 EU規則案の検討内容の要約資料として英国議会下院公式ライブラリー注釈(Commons Library Standard Note)である「EU情報保護法規制に関する新たな枠組み(The Draft EU data protection framework)」の内容と注釈文原文(注釈からリンクのみ)を紹介する。

・EUの情報保護法の基本法は1995年データ保護指令(95/46/EC)であり、同指令に基づき英国は「1998年情報保護法(Data Protection Act 1998:ch29)」により適用した。1995年以来、技術進歩とグローバル化がデータ収集、アクセス、使用面において、従来の個人情報規制のあり方の道筋を大きく変えた。

・さらに、EU加盟国は1995年指令について異なる国内法立法を適用したことから、結果においてその具体的な法施行に当り法適用の分岐性が生じた。このため、欧州委員会はオンライン・プライバシー権の強化とEUのデジタル経済の増強を目的として1995年指令の包括的改正案を提案した。
 この新規則案の下では、EUの事業者等は1つの情報保護法に対処し、また1つの情報保護機関(企業活動のメインの部署がある国の保護機関)に釈明責任を負うのみでよいことになる。

・本規則案は、規則案と従来の指令の法的効力に関し、95/46/ECは廃止、また2005/58/EC指令(筆者注11)との関係規定の解釈、修正案からなる。

・規則案のうち、例えば(1)第7条にいう個人的なデータの処理について明示的な(explicitly)同意を要するとはいかなる定義をいうのか、(2)データ主体の公的なオンライン上のデータの削除を含む第17条にいう「削除請求権(right to be forgotten)」)の明確な定義等いくつかの問題点が論議を呼ぶことが判明した。

・欧州委員会の新規則に伴う事業者等の情報管理の財務面からみた効率性向上についてのインパクト・アセスメント(規則案第33条 データ保護への影響評価:Article 33 Data protection impact assessment)推定によると、毎年23億ユーロ(約2,921億円)と見込んでいる。しかし、英国政府はこの査定結果とは意見を異にし、規則案実施時に課されるであろう経済的負担は、欧州委員会が見積もった純利益額よりもはるかに重いものであると信じる旨明示した。

・欧州委員会は、欧州連合理事会(Council)と欧州議会(Parliament)への規則案成立に向けた審議を進めている。前述した問題点等が解決されれば、規則案は2014年に採択され、その2年後の2016年に施行される予定である。


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(筆者注1) 例えば、米国ローファーム・ブログ“Inside Privacy”「Advocate General Submits Opinion in Google Spain Case」”、英国ローファーム“Out Law”記事「Google not always a 'data controller' of data processed by search engines, says legal advisor」、 米国CNET記事「EU court lawyer backs Google in 'right to be forgotten' case」、EUobserver記事「EU court: No 'right to be forgotten' in data rules」等があげられる。

(筆者注2)  CJEU法務官の意見書について、リリース文の注記内容をここで仮訳し補足する。
(注)法務官の意見書: 法務官の意見は欧州司法裁判所(Court of Justice)に対し法的拘束力を持たない。法務官の裁定は、完全に独立性をもって責任を負う事件の法的解決において司法裁判所に建議を行うことがその任務である。
 司法裁判所の裁判官は、本事件につき現在、彼らの審理を始めており、後日、法的判断を与えることになろう。

NOTE: The Advocate General’s Opinion is not binding on the Court of Justice. It is the role of the Advocates General to propose to the Court, in complete independence, a legal solution to the cases for which they are responsible. The Judges of the Court are now beginning their deliberations in this case. Judgment will be given at a later date.

 司法裁判所の先行判決(preliminary ruling)の意義について同裁判所の解説箇所を引用、仮訳する。

注:CJEU先行判決の法的な参照性の意義は、加盟国の裁判所(courts およびtribunals)におけるEU法の解釈および有効性に関して司法裁判所(court of justice)に質問を任せるのにそれらの前に持ち込まれた論争に対し行うことが認められる。 司法裁判所はこの論点自体については決定を行わない。 司法裁判所の決定に応じてケースを判断する際、加盟国の裁判所に支配力を持つ(司法裁判所決定は、他の国家の裁判所における同様の問題につき法的拘束力を持つ)。

 裁判所法廷は法廷の審理事件として持ち込まれたケースに関する意見を提示することである8人の法務官から法的アドバイスを受ける。 それらの内容は公開的でありかつ公平なものでなくてはならない。
 各裁判官と法務官は任期6年で任命され、この任期は更新が可能である。 EU加盟国の政府は、彼らが裁判官や法務官につきだれを任命するかにつき同意権を持つ。

(筆者注3) “right to be forgotten”とは、個人の事業者や機関に対し自己の情報を削除するよう要求することの出来る権利をいう。「忘れられる権利」と訳されることが多いが、データ主体がもつコントロールの1つである「データ主体の削除要求権」という訳語が適切と考える。本ブログはあえてこの訳語で統一する。

(筆者注4) EU指令6/28(29)第4条第1項の原文を以下、引用する。

Article 4 :加盟国の国内法の適用ルール(National law applicable) 

1. Each Member State shall apply the national provisions it adopts pursuant to this Directive to the processing of personal data where: 

(a) the processing is carried out in the context of the activities of an establishment of the controller on the territory of the Member State; when the same controller is established on the territory of several Member States, he must take the necessary measures to ensure that each of these establishments complies with the obligations laid down by the national law applicable; 

(b) the controller is not established on theMemberState's territory, but in a place where its national law applies by virtue of international public law; 

(c) the controller is not established on Community territory and, for purposes of processing personal data makes use of equipment, automated or otherwise, situated on the territory of the saidMemberState, unless such equipment is used only for purposes of transit through the territory of the Community. 

(筆者注5) 検索エンジンのロボットは、Webページに記述されているリンクを辿ってサイトを巡回し、情報収集、インデキシングをおこなう。Webサーバの管理者やWebサイトの運営者は、自分たちが管理・運営するWebページをWeb検索エンジンに登録されたくない場合などに、ロボットを排除することができる。(Cyber Librarian「ロボット排除」から一部引用) 

(筆者注6) 保護指令第7条(f)号の訳文を引用しておく。(ECOMプライバシー問題検討WG訳から引用)

第7条加盟国は、個人データが以下の条件を満たす場合にのみ、処理されることを確保するものとする。

(略)

 (f)管理者、データ開示の対象となる第三者、又はその他の当事者の合法的な利益のために、処理が必要である場合。但し、第1条1項に従って保護が要求されるデータ対象者の利益、基本的人権及び自由が上記利益に優先する場合はこの限りではない。

(筆者注7) ECOMプライバシー問題検討WG訳から引用する。

第6条

1.加盟国は、個人データが以下の条件を満たすことを確保するものとする。

(a)公正かつ適法に処理されること。

(b)特定、明確、及び合法的な目的のために収集され、このような目的に反した方法で、処理されることのないこと。歴史、統計、又は科学的目的のための、データの処理は、加盟国が適切な保護条項を規定している限り、目的に反しているとは見なされないものとする。

(c)適切、妥当であること。そのデータが収集された目的、及び/又は、それが処理される目的に関して、過度でないこと。

(d)正確であること。必要な場合には、最新の情報を維持すること。データが収集された目的、又はそれが処理される目的に関して不正確又は不完全なデータが消去又は修正されることを確保するために、全ての合理的な手段が取られなければならない。

(e)データが収集された目的、又はそれが処理される目的のために必要なだけの期間、データの対象者の特定が可能な形式で保存すること。加盟国は、歴史、統計、又は科学的利用を目的として、個人データを長期間保存するために、適切な保護条項を規定するものとする。 

2.管理者は、第1項の遵守を確保するものとする。 

(筆者注8) 欧州連合基本権憲章の第8条の原文を挙げる。

Article 8

Protection of personal data

1. Everyone has the right to the protection of personal data concerning him or her.

2. Such data must be processed fairly for specified purposes and on the basis of the consent of the

person concerned or some other legitimate basis laid down by law. Everyone has the right of access to data which has been collected concerning him or her, and the right to have it rectified.


(筆者注9) ここで欧州議会の委員会における法案に対する修正意見、過程の表示・見方につき補足しておく。

〔規則等法案に対する修正内容の表示の見方〕
議会による修正では、規則案(drafts acts)に対する修正箇所は「太字のイタリック体(bold italics)」で強調される。「普通のイタリック体(italics)」による強調個所は、例えば文言上の明白な誤りや脱落があり修正を必要とするであろう規則案の部分に関する指示個所で、規則案の最終版で修正される個所である。この種類の提案された修正部分は欧州委員会等関係部との同意を前提とする。
 

 法案の修正は行われなかったが、議会が修正したがっていた既存の法案における条項は「太字(bold)」で強調される。 議会が審議過程で指摘した削除事項はすべて[...]で示される。
なお、修正事由(justification)について、各修正個所に表記されている。

(筆者注10) アルブレヒト議員の最近の議会での活動はEUの公式サイトで確認できる。最近時のものでは7月3日の議会でのディベートは、欧州委員会の規則制定の役割の重要性も含め極めて興味深い内容であり、公式動画も確認できるが、その「動画メッセージ」の内容を仮訳する。
 なお、筆者が従来から主張しているとおり、議会事務局の最も重要な機能はディベート内容につき常に選挙民がチェックできるITシステムの構築である。20以上の国々の異なる原語翻訳システムをフルに機能させている議会事務局の努力に敬意を表す。

「緑グループ/欧州自由連盟を代表して意見を述べる。親愛なる欧州理事会議長(president)、欧州連合理事会、同胞議員、聴衆および本日ここに来ているおそらくそうであろう米国NSAや英国情報機関(British intelligence )の各位に訴えたい。
 我々の政府や欧州大陸の国々は、米国の大規模な量の通信内容の諜報監視や基本的権利や保護原則の侵害はまったくけしからんと説明してきた。 むこうにいるそれらの人々に関しては、この欧州議会は法の支配を回復するという望みと基本的権利の敬意を運びこんだ。 今日のデジタル化・グローバル化している世界では、それらの人権価値の保護が強く情報技術にリンクされるため、プライバシーとデータ保護への権利が不可欠である。 世界中、特にヨーロッパ、米国およびラテンアメリカの主要な市民社会グループは、欧州議会が個人情報の保護を強化し、拘束力がある高い規格に同意するために他の国に圧力を加えるよう呼びかけてきた。 今、行動すべきときである。

 私はマンフレード・ウェーバー議員(Manfred Weber)意見に同意する。我々は、強固なEU一般データ保護規則とEU保護指令の交渉を加速する必要がある。そして、米国という私たちのパートナー国に対しこれらの保護規格に同意することを要求する必要がある。 我々は、米国による基本的権利の大規模な侵害を停止させるとともに特に我々自身の加盟国の情報当局による侵害をも直ちに停止させるのを確実化する必要がある。緑グループのメンバーとして別の会派グループがスキャンダラスな情報活動に関する調査要求に同意したことは歓迎するが、しかしながら別会派が米国が市民や機関等に対するスパイ活動を止めることの保証なしに太平洋を挟んだ貿易合意交渉を認める点については、不適切でありまた無責任であると思う。
 まず、最初に基準となる厳格な規定が必要であり、次に我々EUは協力しあわなければならない。

(筆者注11) 「COMMISSION DIRECTIVE 2005/58/EC of 21 September 2005」は、反応性物質として「殺虫剤「ビフェナゼート(bifeazate)」はヒドラジン骨格を有する殺虫剤、ハダニやサビダニに対し速効的な効果を示す)とmilbemectin(殺虫剤 ミルベメクチン)。6 員環マクロライド骨格を有する殺虫剤。本剤は、ダニ、昆虫及び線虫の神経-筋接合部位の塩素イオンチャンネルに作用し、殺虫活性を示す。韓国、ニュージーランド、ブラジル等で農薬登録されている。日本では、1990 年11 月に茶を対象に初めて登録されており、原体ベースで年間3.7 トン(平成15 農薬年度)生産されている)を含む理事会指令(Council Directive91/414/EEC)を修正したもの。

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