歌人の記念館に勤め、仕事として短歌関連図書を読むうち、短歌そのものへの理解は進んでいませんが、短歌界という特異な分野があることは理解されてきました。
歌人といわれる人々は現代社会にどれほどいるのでしょうか。これを考える時、どんな人を歌人というかが、まずもって難しいです。学者というのは一般に大学に勤めているという肩書でいわれます。では歌人とは、どんな別の肩書があればいいのか、短歌を作っていて自ら歌人だということはたやすくとも、世の中の人々はたやすく認めてくれません。わずかに職業歌人がいるかもしれませんが、職業としての歌人はほとんどいないような気がします。歌人といわれる人たちの多くは、何か給与をもらえる職業をもったうえで、業余に短歌を詠んできました。どんな仕事かといえば、大学等の教員、出版社、新聞社などの勤務です。パトロンでもいない限りは短歌を詠むだけで生きていくことは難しいのです。
ところが、わずかですが短歌を詠むだけで生活している歌人もいた(いる)。たとえば若山牧水です。牧水は数か月会社勤務をしたのみで、短歌を詠んで生活しました。具体的収入はといえば、自分が作った短歌結社(結社という不思議な集団については後で書きます)「創作」の会費。新聞雑誌の短歌欄の選歌料。講演料。半折・色紙などの頒布代金などです。出版した歌集や文芸総合誌などは、収入になるより赤字のことが多かったようで、生活費をつぎ込んだり赤字を踏み倒したりして補てんしています。現在では歌人といわれる人の仕事は、カルチャースクールの先生が多いようです。
それだけで生活するのは難しいというのが、同じ文芸といっても小説家との違いです。もっとも小説書くだけで生活できている人は、ほんのわずかかもしれませんが。だから、短歌を作る人はたくさんいても、歌人といわれる人は本当に少ないのです。
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